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6.勇者の力

ライナとルミナを急襲してきた奈落の星徒(ギルデッド・スターズ)の一人、リリス・アーディア。


彼女の圧倒的な力の前に防戦一方を強いられていた。


「今の力が限界なら、つまんないから壊すよ?」


ライナはリリスに剣を向けていた。


「正直、お前達の事をナメてたよ。俺の世界の魔王にも引けを取らない実力だ」


「リリスはがっかりだなぁ〜。魔王様が警戒しろっておっしゃるから、どれほどかと思ったけど、期待外れもいいとこ。これだったら、まだ各王国の騎士団長達の方が楽しめるよ」


リリスはつまらないといった表情を浮かべ、ライナを見た。


「そうか、そうか。それは悪かったな。じゃあもう少し本気でやってやるよ」


ライナはリリスとの距離を一瞬で詰め、剣を振り上げた。


ドレスが切れ、リリスは後ろに飛び退いた。


「へぇ〜、いいじゃん。これならリリスも、もう少し本気でやっても大丈夫だよねぇ?」


リリスがニヤリと笑うと、リリスの手に竪琴が現れた。


「そいつがさっきの攻撃やら拘束していた魔術の正体か?」


「そうだよ。呪歌の竪琴(ルーン=ミゼリア)。リリスの大事な魔神器♪」


「魔神器?」


「とんでもない力を秘めた武器よ。普通なら2、3回も使えば使い手の生命力を使い切って絶命する代物なのに、あいつらは平気な顔で使いこなしている」


ルミナがライナの隣に来て説明をした。


「それだけあいつらの魔力量が桁違いって訳か」


「えぇ」


「じゃあ第2ラウンド始めよっか!!」


リリスの魔力が上がっていくのを感じたライナは剣をさらに力強く握りしめた。


音殺の鎮魂歌(ディス・レクイエム)!!」


ライナは全身に悪寒が走り、ルミナの腕を引っ張り後ろに飛び退いた。


バリバリ・・・キイィィィン。


ライナ達がいた場所にヒビが入り空間が裂けた。


「危ねぇ・・・」


ライナは迂回してリリスの横に飛び込んだ。


「(クソっ!!ここまで手こずるとは思わなかった。力を隠している場合じゃねぇな)うおおおおおお」


ライナの体が光り輝き始めた。


ライナの変化にリリスは危険を感じ更に魔力を高めた。


「防げるなら、防いでみろ!!天穿・ノヴァブレイカー!!」


ライナの剣に魔力が凝縮されていき、青白い光が渦巻く。


一閃・・・リリスは青白い魔力斬撃に飲み込まれた。


「はははは・・・。マジか」


ライナの眼前にはボロボロになりながらも立っているリリスがいた。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・やってくれたわね。今のはさすがのリリスも驚いちゃったかな」


竪琴を構えて一歩前に出るリリス。


「もう一発・・・っ!!」


ライナは技の反動で体がガクガク震えた。


「リリスをこんなにボロボロにしてくれたんだから覚悟できてるよねぇ?」


リリスがじわじわライナに近づいてくる。


「(動け!!)天穿・・・」


「ディス・・・」


ライナ、リリスが同時に技を放とうとした時、2人の間に何者かが乱入した。


ライナの前には氷の壁が現れ、リリスは腕を何者かに掴まれ止められた。


「そこまでです。リリス」


「セレナ・・・どうして」


リリスはセレナを睨んだ。


「勝手な行動をした貴方を連れ戻しに来たに決まっているでしょう。間一髪でしたね」


(ここにきて新手か・・・まずいな。もう一段階あげるか・・・)


ライナがセレナを睨んだ瞬間、セレナは微笑み、頭を下げた。


「お初にお目にかかります、異世界の勇者様。私はギルデッド・スターズの一人、セレナ・ヴェイグど申し上げます」


「ライナ・ヴァルグレアスだ」


「ライナ様、ご提案があるのですが、本日はここまでにいたしませんか?このまま見逃してくれるのなら、我々は何もせず撤退させていただきます」


「セレナ、何勝手な事を・・・」


リリスがセレナの腕を掴む。


「黙りなさい。今の状態の貴方に拒否権があるとでも?」


セレナの威圧感に萎縮するリリス。


「本当に引いてくれるのか?」


ライナの質問にセレナは無言でニコッとする。それを見たライナは剣を鞘に納めた。


「賢明なご判断です。さすがは勇者様、引き時を分かっていらっしゃる」


「早く帰ってくれないか?これ以上警戒し続けるのはしんどいんでね」


「そうですね。では・・・」


そう言いセレナはライナに背を向けた。


「待ちなさい!!逃さない・・・リリスだけでもトドメを」


ルミナがリリスに向かって魔力弾を放とうとした瞬間、セレナがルミナを睨む。それと同時にライナがルミナの杖を鞘で弾き上げた。


「行け!!」


ライナの言葉にセレナは何も言わずゲートを開いた。


「お前はリリスが確実に壊す!!今度会う時を楽しみにしててねぇ」


それだけ言い残し、リリスとセレナはゲートをくぐり消えていった。


見届けた後、ライナは怒りながらルミナの胸ぐらを掴んだ。


「どういうつもりだ!?相手が大人しく引いてくれたから良かったものの、あのまま戦闘が続行されていたら・・・」


「セレナって奴には勝てなくても、少なくともリリスには勝てていた!!」


「違うな、良くて引き分けだ。2:8で俺が負けてた」


ライナはルミナを離して背を向けた。ライナが言った事にルミナは驚きを隠せなかった。


「そもそも、何をもって、リリスに勝てると思ったんだ?」


「だって、あれだけの大技を受けたし、ボロボロだったじゃない」


「確かに俺の技を受けた。ボロボロにもなっていた。でもボロボロになっただけだ。倒れた訳じゃない。俺はあいつが立ち上がれなくなる位の技を放ったつもりだった」


「でも・・・」


「それに俺もだけどあいつも全力じゃなかった。あいつは一度でも詠唱を唱えたか?」


ルミナはライナの指摘にハッとした。


「俺みたいに【無詠唱】でできる可能性もあるけど、少なくともあいつの魔力量は全く減ってなかった。魔神器ってやつの力だけで戦っていた。それであの状況で俺が勝てていたと思うか?」


「それは・・・」


「ルミナ。勇者ならどんな逆境をも跳ね除けて最後には勝つと思っているなら、その考えは改めてくれ。それは物語の中だけの話だ。勇者って言っても人間だ、限界がある。勝てなかった相手だっている。どうしようもない事だって沢山あった。その度に俺は現実に打ちのめされ、自分の無力さを嘆いた。勇者は万能じゃない」


ルミナはライナの話を黙って聞いていた。


「引けない戦いならば、俺だって命を賭ける。でも今回はそうじゃなかった。だから俺は敵の提案を受け入れた。分かるか?」


「分からない、敵を倒せるチャンスがあったのにそれをみすみす逃すなんて」


ルミナは俯きながら答えた。


「だから、良くて引き分けだって・・・」


「勝てた!!ライナが本気でやれば勝てた。絶対に・・・」


「俺の事をそこまで信頼してくれているのは素直に嬉しいよ。ありがとう。でも戦況を見極める事も大事な事だ。ルミナはもう少し冷静に状況を判断できるようになる必要があるな」


ライナはルミナの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


「あわわわ、やめてよ」


ルミナはライナの手をどかした。


「その為には・・・」


ライナは転移魔法でセリフィアに戻ってきた。


「セリフィア、何で?」


「ここで一旦別行動しよう」


「え?」

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