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31.カイルVSヴァルド2

瓦礫と炎に包まれた叡智の都の外縁。


ヴァルドの漆黒の魔剣が、閃光のような速度で振り下ろされた。


カイルは確かに見た。


自分が胸を貫かれ、命を散らす未来を。


「・・・っ!」


目を瞑った瞬間、刃が頬をかすめて火花を散らす。


熱い痛みと共に血が流れるが、致命傷ではない。


(今の・・・俺は確かに死んでいた・・・はずだ・・・!なぜ?)


「ほう・・・避けたか。偶然にしては少々出来すぎだな」


カイルは震える胸を押さえ、理解できないまま立ち尽くす。


ヴァルドの剣圧に押されながらも、カイルは魔術を組み上げる。


指先に雷を纏わせ、風で速度を加速させて撃ち放つ。


「ライトニング・ゲイル!」


雷槍は確かに外れる未来が視えた。


だが、現実には稲妻がヴァルドの鎧を直撃し、爆光が迸る。


「っ・・・当たった・・・!? いや、今更あの程度の攻撃が当たるはずが・・・!」


爆煙の中からヴァルドが姿を現す。鎧が焦げ、皮膚に赤黒い痕が走る。


「どうなってる!?なぜ小僧の攻撃が俺に当たった?あの程度避けるのは造作もないはず」


ヴァルドは自分の身に何が起こってるか分からず少し狼狽えていた。


カイルは唇を噛み、鼓動を早める。


(未来を“視ている”んじゃない・・・。今俺は“違う未来を引き寄せている”・・・?)


「ふざけるなあああああ!!」


ヴァルドが踏み込み、魔剣から黒炎が奔る。


未来が見える全身を焼かれて絶命する自分の姿。


「ッ!!」


次の瞬間、炎は頬を掠めるだけで、カイルの身体を焼くことはなかった。


その違和感に、ついにカイルは確信する。


「・・・そうか。これはただの予知じゃない。俺は・・・未来を“書き換えてる”んだ・・・!」


「なぜだ!!なぜ避けれる!?」


ヴァルドはなりふり構わず魔剣を振り黒炎を連続で放つ。


カイルはその全てを避ける。


ヴァルドの殺気が膨れ上がる。


「俺の最大奥義をくらえ!!これで終わりだ!!絶技・滅界裂閃(ネクシス・ディバイド)


漆黒の魔剣が奔流のような速度で振り抜かれ、避けられぬ死の未来が迫る。


カイルは深く息を吸い、心を静めた。


「・・・俺は、死なない未来を選ぶ」


魔力が迸り、視界に無数の未来が広がる。


カイルはその中から、ただひとつ、勝利の線を掴み取った。


「《リライト・フェイト》勝つ未来を、俺が選ぶ!」


漆黒の斬撃は空を裂き、カイルの身体を捉えることはない。


逆に、カイルが放った五属性複合魔術が未来をねじ曲げ、確実に命中する。


「燃え盛る炎は終焉を告げ、奔流の水は世界を呑み、轟雷は天を裂き、暴風は全てを切り裂き、大地は崩壊を迎える。五大の理よ、我が意志に従い、今ここに世界の断罪を紡げ。《エレメンタル・カタストロフ》!」


火炎が天を焼き、水槍が地を貫き、雷光が走り、風刃が嵐となり、大地の柱が爆ぜる。


五属性が一つに混ざり合い、嵐の渦となってヴァルドを呑み込む。


「・・・ッッ!!」


轟音と共に大地が抉れ、漆黒の騎士は爆炎に消えた。


土煙の中、膝をつくカイル。全身は血に塗れ、意識も朦朧としている。


その前で、ヴァルドが傷だらけの体を支え、ゆっくりと笑った。


「・・・未来を・・・書き換えるだと・・・?ハハッ・・・そんなのありかよ・・・。この力・・・魔王様にとっても・・・脅威となろう・・・。この事を報さねば、今日のところは引いてやる・・・」


ヴァルドはその場を立ち去ろうとするが体が思ったように動けずにいた。


逃すまいと、カイルは荒い呼吸を整えながら、よろめきつつも一歩、また一歩と歩みを進める。杖を支えにするのもやっとの姿で。


「逃すか・・・」


「来るなッ!!」


ヴァルドが最後の悪あがきに魔剣を振り上げ、一撃を放たんとしたその瞬間・・・。


カイルは渾身の力で踏み込み、剣筋の隙を突いてヴァルドの懐へ。


「なっ……!」


その手は魔剣を掴み取り、逆にヴァルドの胸へと突き刺した。


黒炎が逆流し、ヴァルドの身体を内側から焼き崩す。


「ぐぉぉぉぉぉっ・・・!馬鹿な・・・俺が・・・この俺が・・・!だが・・・魔王軍に・・・栄光あれぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」


断末魔とともに、ヴァルドの肉体は闇の粒子となって消滅していった。


魔剣もまた、主と共に虚無へと溶けていく。


カイルは剣を手放し、膝から崩れ落ちる。


その瞬間、全身を襲う激痛。


まるで全ての筋肉と神経が裂けたかのような、限界を超えた反動。


「・・・っ、これは・・・!」


カイルは悟る。


あの時、ヴァルドの大技を「避けられた未来」を引き寄せた。


だが、それは現実には存在しない速度を肉体に強制させることで成立した奇跡。


その代償として身体はもう、立つことすら困難。


さらに、未来を改変する《リライト・フェイト》を使った事によって予言魔術の気配が完全に体の中から消えているのをカイルは感じており、しばらくは発動できないと察した。


「・・・やっぱり、甘くはないな・・・」


荒い呼吸を吐きながら、カイルは倒れ伏す。


だが、口元には確かな笑みがあった。


師エリオスの意思を受け継ぎ、未来を繋いだ確信と共に。


中央通り


轟音と揺れが止んだとき、そこには荒れ果てた都市の一角が広がっていた。


崩れ落ちた石畳、焦げた建物、散乱する瓦礫。


その中心に、ルミナとフェリアは地面に横たわっていた。


息も絶え絶えで、身体中は傷だらけ。魔力も尽き、立ち上がる力すら残っていない。


フェリアの魔法剣は刃こぼれし、折れかけている。


ルミナの杖はひび割れ、今にも砕けそうだ。


二人の視界は霞み、呼吸は浅く、ただ必死に意識だけを繋ぎとめていた。


その二人を、無言で見下ろす影があった。


巨大な影。災害級の亀型魔獣ガルロス=タートラ。


フェリアが何度も切り落とし、核に到達せんと果敢に挑んだ。だが結果はこれだ。


鈍く赤黒い瞳が、まるで人を嘲笑うかのように二人を見据えていた。


そしてその隣には・・・。


漆黒の衣を纏う女、混沌の使徒のイルシア。


冷たい微笑みを浮かべることもなく、ただ無表情で二人を見下ろしている。


その手には、まだ微かに古代魔術の残光が揺れていた。


瓦礫の上に立つ二人の姿は、まさに「絶望の具現」。


ルミナとフェリアはそれを見上げながら、震える指先をわずかに動かす。


だが身体は言うことを聞かない。


イルシアがゆっくりと手を掲げた。


その指先から、冷たく黒い光が形を成していく。


「終わりよ。あなた達はここまで」


無慈悲な声と共に、二人に迫る闇。

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