27.未来を超えろ
エリオスとの最終試練。予言魔術に翻弄される三人だが、猛攻を続け突破口を探す。
砂塵の中、三人の連携が師の防御をわずかに揺らした。
その手応えにルミナ達は一瞬、勝機を感じる。
だが・・・。
「よくやった。だが、それもまた・・・予測のうちだ」
エリオスの光環が、低く不気味に唸るように回転を始めた。
先ほどまでの淡い輝きとは違う。輪郭が幾重にも重なり、まるで無数の未来を同時に描き出しているかのよう。
「未来を見るだけが、予言魔術と思うな」
その声が響くと同時に、ルミナの放った風弾が急に乱流を生み出し、軌道を逸れる。
カイルの雷光は地に吸い込まれるように散り、フェリアの剣筋は無意識に一拍遅れてしまう。
「え・・・!?」
「俺の動きが・・・遅れた・・・?」
「まさか、未来に・・・誘導されてるの・・・!」
三人の背筋に冷たい戦慄が走る。
エリオスは一歩踏み込み、杖を軽く振る。
その動きに合わせて未来が収束し、三人の立ち位置は次々と追い詰められていった。
避けても避けても、逃げ場が狭まる。
気づけば三人は、互いの動きを潰し合うように立たされている。
「これが“未来の檻”だ」
エリオスの瞳が鋭く光る。
「お前達は今、私の描いた未来の中で踊らされているに過ぎん」
圧倒的な差。
読まれるだけでなく、“操られる”未来。
ルミナは必死に杖を握り直す。
「・・・こんなの、勝てるわけない・・・!でも!!」
汗が頬を伝い、胸が焼けるように痛む。
「だからこそ・・・打ち破らなきゃ!」
カイルが叫ぶ。
「未来を操作するなら、俺達は未来を壊す!」
フェリアが剣を構え直し、仲間に向かって笑みを浮かべた。
「なら賭けてみよう。私達自身の“可能性”に!」
三人は互いに目を合わせる。
未来に操られた足取りを強引にねじ曲げ、意図せず導かれた動きすら利用するように。
予言魔術という絶望的な檻の中で、それでも“突破口”を模索する三人の瞳は、決して折れてはいなかった。
光環が渦巻き、無数の未来を操る檻の中。
エリオスの瞳は一切の揺らぎなく、三人の動きを読み切っていた。
「未来は決して覆せぬ・・・お前達ではな」
その言葉は、もはや事実として響く。
だが、ルミナは杖を胸に抱きしめ、目を閉じた。
“決め手に欠ける”と言われ続けた自分。
ならば、全てを混ぜ合わせ、暴発すれすれの力で突破すればいい。
「風よ、雷よ、炎よ・・・全てをここに!」
ルミナの魔力が溢れ出し、暴走するように空間を震わせる。
通常なら詠唱の軌道を正しく定めるところを、あえて乱し、意図的に不安定に組み上げた。
未来を読む予言でもこの不規則な奔流までは正確に捉えられない。
エリオスの瞳が一瞬だけ細められる。
「ほう、己の暴発すら利用するか。」
同時にカイルが動いた。
「俺はまだ直線的すぎる・・・なら曲げればいい!」
雷の魔術が放たれた瞬間、大地に刻んでいた符が反応する。
複雑に折れ曲がる稲光が、未来予知すら追いつけない変則軌道を描いた。
「知識を“形”にするんだ・・・未来を逸脱するために!」
未来の檻にひびが走る。
そこへ、フェリアが飛び込む。
フェリアは仲間に合わせるのではなく、わざと独自のリズムで。
「私は剣士!自分の感覚を超える!」
魔法武器に頼らず、己の筋力と速さを極限まで解放する。
舞うような剣技、その速さは予言魔術の映し出す未来よりも速く
「やあああああああっ!!」
残像すら未来に映る前に、フェリアの刃が走る。
エリオスの周囲を覆っていた未来の光環が激しく揺らぐ。
読み切れない広範囲魔術、予測を外れる軌道魔術、そして予言を追い越す剣速。
ルミナが叫ぶ。
「今よ!」
三人の力が一点に収束し、光と雷と刃が重なる。
未来を縛る檻が砕け、ついにエリオスの防御を打ち破った。
轟音。
砂塵が舞い、訓練場の結界が悲鳴を上げる。
そして静寂。
エリオスは杖を下ろし、口元にわずかな笑みを浮かべていた。
「・・・見事だ。未来すら凌駕する“現在の力”を、確かに示したな。まあ、あと一歩届かなかったがな」
エリオスの体には埃がついているだけで傷は一つも負っていなかった。
三人は肩で息をしながら、それでも誇らしげに互いの姿を見やる。
「次は超えてみせます」
「予言魔術を超える未来を見せますよ」
「ボッコボコにするんで覚悟していてくださいよ。お師匠さん」
三人はエリオスに決意表明をした後、仰向けに倒れた。
「まだ”見えぬ未来”楽しみにしているぞ」
未来に踊らされるだけの存在から、未来を自ら掴み取る者へ。
修練の終わりと、次なる戦いへの始まりが、そこにあった。




