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23.叡智の都ミスティア

更なる力を求め叡智の都ミスティアを探していたルミナ。入り口を見つけたルミナだったが、ミスティアの洗礼を受けるのだった。


「これならどうかしら・・・」


ルミナは短刀を構え立っていた。


「魔術師だよね?」


魔術師らしからぬ武器にルミナを見守っている二人は驚きを隠せなかった。


(呼吸を整えろ。魔力を、身体強化に回す)


ライナに短期間だけだが叩き込まれた修練を思い出す。


全身に力が漲り、視界が鮮明になった。


「はっ!」

先頭の幻影が跳びかかる刹那、ルミナは低く身を沈め、短刀を逆手に握って斬り上げる。


黒い幻影の体が霧のように裂け、光を散らして消えた。


「速さで勝負する・・・!」


足捌きは軽く、走り込みで鍛えた脚力が遺憾なく発揮される。


二匹目の幻影の背に踏み込み、その勢いを利用して跳躍し、空中で刃を閃かせた。


斬撃は幻影の首を断ち切り、幻影は霧散する。


だが群れは止まらない。三匹、四匹と取り囲むように迫る。


ルミナは息を整え、胸を張って吠えた。


「魔術師だからって・・・後ろに隠れてるつもりはない!」


右手の短刀で突きを放ち、左手で鞘を構え、次の牙を弾き返す。


刃と鞘が連続して唸り、幾つもの幻影を切り払っていく。


ルミナを見張っている二人は言葉を失って見守った。


そこにいるのは、魔術に頼らずとも戦える“魔術師”否、ひとりの戦士だった。


最後の幻影が霧散したとき、ルミナは深く息を吐き、短刀を鞘に納めた。


結界の門は静かに揺らぎ、その奥に都市ミスティアへの道が開かれていく。


「・・・やっと終わった」


汗に濡れた頬に、微かな笑みが浮かんだ。


霧が晴れると、そこには壮麗な光景が広がっていた。


空に浮かぶ塔の数々、透明な結晶で形作られた橋、流れるような魔力の河。


まるで大地そのものが魔術で形を変えたような都市、それが《叡智の都ミスティア》だった。


門の前に現れたのは、ルミナの様子をうかがっていた二人の魔術師。


彼らの瞳は鋭く、入門者を試すようにルミナを見据える。


「先ほどから私の戦いを見ていたお二人ですね」


「あははは、バレてたか」


少女は苦笑いした。


「魔力を燃やすだけの子供かと思えば・・・鍛え方が違うようだな」


その言葉には、侮りと驚きが混じっていた。


ルミナは息を整え、震える手を押さえながらも真っ直ぐに告げる。


「私は・・・もっと強くなりたい。守りたいものを守れる力を、この都市で学ばせてください。」


魔術士たちは一瞬だけ視線を交わし、やがて頷いた。


「資格はある。だが、勘違いするなよ。ここに住まうのは世界屈指の魔術士達だ。お前の努力と才覚がなければ、この都市に潰されることになる。」


その言葉に、ルミナは小さく微笑む。


「・・・それでも、やります。私は逃げません。」


そうしてルミナは門をくぐる。


都市ミスティアの魔力の奔流が、彼女の小さな体を飲み込んでいった。


「それじゃあついて来い。師匠の所に案内する」


男はミスティアの雰囲気に圧倒されてるルミナを置いて歩き始めた。


「ごめんね。生真面目で仏頂面で怖いよね。でも悪い奴じゃないから。私はフェリア・ルーン。で、あいつはカイル・グレイヴ」


フェリアと名乗った少女は屈託のない笑顔でルミナを受け入れた。


「ルミナ・セレフです」


ルミナは頭を下げ挨拶した。


「うん、知ってるよ。ずっと見てたし。でも君すごいね‼︎最後、短刀で戦うなんて」


フェリアは興味津々な目でルミナを見てきた。


「魔術師だけど魔術だけに頼り切った戦い方はダメだってある人に言われて・・・」


「すごいね、その人。戦術は多いに越した事はないし、魔術師が近接武器を使ってくるなんて誰も思わないから、相手の意表をつくのにいいね」


「はい、その人に追いつきたくて私はここに来ました」


「ぼさっとするな。置いていくぞ」


「行こうか」


フェリアはルミナの手を取り引っ張った。


都市は空に向かって幾重にも積み重なり、最下層には白銀の石で築かれた広場や住居が整然と並ぶ。


その上空には、魔力によって浮遊する塔や橋が幾筋も走り、空を舞う光の書物や魔法陣が宙を漂っている。


昼でも夜でも都市は淡く光り輝き、星々が地上に降りてきたかのような幻想的な景観を作り出していた。


大通りには各国から集まった魔術士が行き交い、露店には魔法素材や魔導具が並ぶ。


市の中心に位置する《大図書院》には、数千年分の魔術書が眠り、塔の頂には《星導の水晶》と呼ばれる膨大な魔力源が浮かんでいる。


ミスティアの神殿の大広間。


天井は星空のように輝き、床には膨大な魔術式が刻まれていた。


その中央に立つのは、銀髪に深い紫の瞳を持つ大魔導士エリオス・ヴァルディア。


「ようこそ、私はエリオス・ヴァルディアだ。ルミナ。先ほどの戦いは見事であった。お前に必要なのは力ではなく、力を扱うための器だ。それを磨く場として、ここを選んだことは間違いではない。」


フェリアとカイルはエリオスを挟むように左右に立った。


「ルミナ、今日は疲れているであろうからゆっくり体を休めなさい。明日からこの二人と共に修練に励みたまえ。それぞれに足りない部分を補い合い、教え合い、更なる高みを目指せ。さすれば魔王の喉元にもその牙は届き得るだろう」


フェリアとカイルは「はっ‼︎」とだけ答えた。


ルミナは頭だけ下げた。


翌日、準備を整えたルミナは再び神殿を訪れた。


既にフェリアとカイルは到着しており待っていた。


「今日からよろしくね」


「はいよろしくお願いします、フェリアさん、カイルさん」


「フェリアでいいよ。喋り方も友達に接する感じでいいよ。その方が私も良いし」


「分かったわ。よろしくフェリア」


「さっさと行くぞ。時間が惜しい」


三人は強くなるための修練場に向かった。


それを見守るエリオス。


「頼んだよ、三人とも。私に残された時間はそう長くはない・・・」

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