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22.試練

ライナがドボル王国を発ったのと同時刻、ルミナはとある場所を目指していた。


(叡智の都ミスティア・・・。そこで更に魔術に磨きをかける)


「・・・私、まだ全然足りない。あなたの隣に立つには・・・もっと強くならないと」


ルミナが望むのは、更なる魔術の極致。


だが、ミスティアは巧妙に隠されており、大魔術師でも見つけるのは困難だと言われていた。


ルミナは、あると噂されている平原を進んでいた。


そこにあるはずの都市。しかし目に映るのはただの森と丘陵ばかり。


「本当に、都市なんてあるの?」


ルミナが不安げに辺りを見回す。


「いいえ。探すところから既に試されてるのね。都市一つも見つけられない魔術師に叡智を授かる資格は無いって事ね」


森を抜け丘陵を抜け平原を歩き続けるがそれっぽいものは何も見つからなかった。


陽が沈んできたのでルミナは川の近くに野営の準備を始めた。


「今日も見つからなかった・・・。もう周辺を何日も探しているのに痕跡一つ見つけられないなんて」


ルミナは一人で落ち込んでいた。


「こんなんじゃ、いつまで経ってもライナと並べない。無詠唱魔術はだいぶモノにしたけど、それでもまだ足りない・・・。はぁ」


ルミナは考える事を中断し、ライナに言われていた日課の【筋トレと走り込み】を始めた。


「魔術師だからって基礎体力をつけないのはダメだぞ。魔術師はどうしても後衛のイメージがあるけど1VS1になったらそんなもん関係ないからな。その時に体力がないとあっという間にバテて即お陀仏だ」


ライナの言葉が脳裏に蘇る。


(だからって筋トレと走り込みって・・・剣士のトレーニングしてるみたい。でもライナの言う事は当たってるし、実際歩き続けても体力がついてきてるから日に日に疲労しにくくなってきてる)


筋トレと走り込みが終わると焚き火の前に座り瞑想を始めた。


(魔力を身体中に張り巡らせるように循環して・・・)


ルミナの体が光る。それを一時間保った。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」


ルミナは全身から滝のように汗を流し寝転んだ。


「ダメだ。こんな汗だくで寝れないわ」


ルミナは最後の体力を振り絞り、服を脱ぎ川で水浴びをし汗を流した。


水浴び後、替えの服を着た後、先ほど着ていた服を川で洗い焚き火の前に干した。


「疲れた・・・もう寝よう」


ルミナは周りに魔物よけの結界を張り眠りについた。


翌朝、ルミナは再びミスティア探しに出た。


だが昨日までと一緒でただ周辺をぐるぐる回ってるだけだった。


「この辺にあるはずなのに何で・・・。私には資格が無いってこと」


ルミナは俯き諦めかけた時、昔図書館で読んだ文献の事をふと思い出した。


「『叡智の都は、目で探すものではない。己が魔力を都市と重ね呼吸を感じ取れ』」


これだと思ったルミナは深く息を吐き、魔力を一層繊細に整えた。


まるで空気の中に散る微かな粒子に意識を広げるように。


ザワッ。


一瞬、周りの風が揺れた。


普通の風ではない。魔力の流れそのものが、彼女の放つ微光に反応して蠢いたのだ。


「見つけた」


ルミナが静かに呟く。


彼女の瞳には、微かに揺らいでいる光景が映っていた。


歪む空間。揺らめく光の帳。


そこに隠されていたのは、巨大な結界に覆われた異界の門、叡智の都ミスティアの入口。


「ずっと目の前にあったのね」


ルミナが安堵した次の瞬間、その結界が反応するように形を変え、幻影の魔獣が姿を現した。


牙を剥いた狼の群れが霧の中から現れ、進入者を拒むように吠える。


「なるほど・・・場所を見つけただけじゃまだダメってことね」


ルミナは杖を取り出し、笑う。


そして一歩前に出て、結界の輝きを背に受ける。


「これは・・・私に課せられた試練。必ず突破してみせる!」


幻影の魔獣達はルミナを取り囲み一斉に襲いかかってきた。


「ウインド・ウォール!!」


ルミナは風の壁を作り幻影を吹き飛ばした。


しかし幻影はすぐに復活してきた。


「並の魔術は通用しないってことね」


ルミナは体勢を立て直し迎え撃つ。


そんな様子を影から見ている者達がいた。


「女の子一人であの数の幻影に勝てる?」


白銀の鎧を身に纏ったウェーブがかった金髪の少女がルミナを心配そうにみる。


「お前は手を出すな。黙って見てろ」


女性の横で、杖を持った茶髪で短髪の男が眉間に皺を寄せてルミナを見定めていた。


「えぇ〜。試練って最初の幻影達を吹き飛ばした時点で合格じゃない」


「仕方ないだろ。師匠の指示だ」


二人はじーっとルミナの動向を見ている。


ルミナは魔術を駆使し、次々幻影達を撃破していた。


だが幻影達は次から次へと湧いて出てくる。


「いや、これはいくら何でもやりすぎよ。助太刀するからね」


少女は剣を抜こうとした。


「・・・」


男も見ていられず杖を構えた。


その時、ルミナの魔力が何故か急に跳ね上がるのを感じた二人は動きを止めた。


「これでもダメ・・・。ならもう一段階上げる?いいえ、そもそもただこいつらを倒すだけの試練?もっと別の意味が・・・」


ルミナはぶつぶつと呟きながら幻影達の攻撃を避け、反撃をし続ける。


「意味なんてないよ。倒したら合格‼︎もうお師匠さんが変な指示出すから、あの子、変な思考に囚われ始めてるよ」


「だが、魔力が跳ね上がった。あの女全然本気じゃなかったって事だ」


二人はもうしばらくルミナの様子をうかがう事にした。


ルミナが杖を地面につけた。すると地面から複数のウォーター・バレットが放たれた。


それと同時にルミナの周りからも複数のウォーター・バレットが放たれる。


次々、撃ち抜かれて消滅する無数の幻影達。


「ウォーター・バレットって一度にあんなに撃てるもんだっけ?」


少女は隣の男に聞く。


「無理ではないが、それにしても数が多すぎる。あれじゃあすぐ魔力が枯渇する」


「でも、そうは見えないよね・・・」


ルミナの猛攻は止まるどころか、手数がどんどん増えていっている。


「ねぇ、これって師匠もムキになってない?」


少女が苦笑いして見た光景は、倒しても倒しても無限に湧いてくる幻影達をルミナが湧いた側から消滅させていってる光景だった。


ルミナは、突然攻撃の手を止めた。


「魔力切れか?」


「の割には息一つ上がってないけど」


少女の一言に男は全身がゾクっとしルミナを凝視した。


「あり得ない‼︎あれだけの魔術を撃ち続けて、ほとんど魔力が減ってない」


「いや〜それはないでしょう。まだ魔力探知使いこなせてないんでしょ?見間違いだって。あはははははは・・・。マジ?」


少女の問いに男は返答しなかった。


「ノアに教えてもらった魔力共鳴(マナ・レゾナンス)と二人で考えた、自然の動きに魔力を乗せて利用する自然律制御(エレメント・オーダー)を合わせて最適化+無詠唱魔術で更に高速化。それでも倒しきれない。これは魔術師の資質を見るための試練じゃない?・・・だったら」


ルミナは杖を消した。


「何をするつもりだ?」


幻影達はルミナに一斉に襲いかかったがルミナは軽々と避けすれ違い様に、幻影達は”斬り裂かれた”。


二人が驚愕していると・・・。


ルミナの手には短刀が握られていた。


「じゃあこっちはどうかな?」

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