1.世界を救ったはずの俺が、異世界に召喚された件
-魔王城-
「はああああああ!!」
勇者ライナと魔王バルザザードの戦いが今決着を迎えようとしていた。
「ば、馬鹿な我が矮小な人間如きに敗れるというのか・・・」
ライナによって斬られた傷を押さえながら後ろによろめくバルザザード。
「はあ、はあ、はあ・・・。これで終わりだ‼︎バルザザードオオォォ‼︎」
ライナはバルザザードの首を斬った。
「見事だと、褒めておこう・・・。だが我が滅びようと・・・」
「そんなありきたりなセリフはいらん」
ライナはバルザザードが言い終わる前に顔を真っ二つに斬った。
バルザザードの体は灰になって消滅した。
ライナは剣を床に突き刺し大の字に倒れた。
「終わった・・・。これで世界に平和が」
ライナは世界を救えた事に対し喜びを噛み締めていた。
ゴゴゴゴゴと主人を無くした城が崩壊を始めた。
「おっと、このまま城の下敷きになるのはごめんだ」
ライナは立ち上がり急いで城を脱出した。
無事脱出できたライナは持っていた戻りの石を使い、故郷アルセリア王国のフィル村に戻った。
フィル村に転移したライナは懐かしい自分の村を見て安心し、気を失った。
意識を取り戻したライナはベッドに入っていた。
起き上がり辺りを見渡してそこが自分の家だとすぐ認識できた。
ガチャ
扉が開いた先にはライナの母が立っていた。
「ライナ‼︎目が覚めたんだね。良かった。あんた2日も眠りっぱなしだったんだよ」
ライナの母は目に涙を溜めながらライナをぎゅっと抱きしめた。
「ただいま、母さん。全部終わったよ」
ライナも母をぎゅっと抱きしめ返した。
その日は村総出でライナの帰還を喜び宴が開かれた。
次の日、ライナはアルセリア王国王都を訪れ、魔王討伐の報告を王様に行った。
「勇者ライナ・ヴァルグレアス、此度の魔王バルザザード討伐の件誠に大義であった。」
「はっ‼︎」
ライナは片膝をつき頭を下げた。
「さっそく皆に魔王が滅んだ事を発表しようと思う。その際に貴殿も一緒に同行してくれ」
「承知いたしました」
王様は国民や兵士を集め魔王が滅んだ事を全員に伝えた。
みんなは歓喜の雄叫びを上げライナの名を叫び続けた。
夜、城で祝賀会が開かれ貴族、王族達がひっきりなしにライナの元を訪れ今までの冒険の話を聞いてきた。
ライナは話疲れバルコニーに行った。
(世界は平和になった、俺の役目も終わりだな)
夜空を見上げながらライナは物思いにふけった。
祝賀会は夜通し続き終わる頃には日が昇っていた。
ライナは王様に挨拶をし自分の村に戻るため街道を歩いていた。
街道はとても穏やかで改めて魔王との戦いが終わったのだと実感した。
(モンスター達は多少残ってるけど、害を成す奴は兵士達や冒険者達が徐々に減らしてくれるだろう。俺は村でのんびりさせてもらう事にしよう)
これからの事を考えながらライナは帰路に着いた。
そこからライナは家の仕事を手伝ったり、自衛できるようにするため村人達に剣の稽古をつけたり、旅で得た知識を惜しみなく教える日々に明け暮れていた。
そんな日々が1ヶ月ほど過ぎたある日、王宮に呼ばれたライナは再び王様の元を訪ねた。
「急に呼び出してすまぬな」
「いえ。それで私にどのようなご用でしょうか?」
「ふむ、実はな近くの洞窟で異常な魔力を感知したと王宮魔術師達が言っておってな、何人か現地に派遣したのだが全員消息不明になってしまったのだ。それで貴殿に洞窟の調査をお願いしたいと思って呼んだのだ」
「承知しました」
ライナは二つ返事でOKしたが内心ではとても面倒だと思っていた。
(せっかくのんびりライフを満喫してたのに、それに異常な魔力?)
ライナは魔力探知を始めた。
(う〜ん、確かにここら辺にしては高い魔力を感じるけど・・・全員消息不明になる程か?まぁちゃちゃっと異変を解決して村に帰るとするか)
「本当にすまぬ。報酬は期待していてくれてよい。それでは頼んだぞ勇者ライナ」
「はっ」
ライナは謁見の間を出て、洞窟に向かった。
洞窟に着いたライナは改めて魔力探知を行うが謁見の間で感じた魔力とさほど大差はなかった。
(特段注意する事は無さそうだけど、一応警戒はしとくか)
ライナは剣を抜き洞窟に入った。
道中下級モンスターに遭遇するなどの事はあったが問題なく最深部まで辿り着いたライナは周囲を探索した。
(確かに魔力は感じるのに誰もいないし、何もない・・・)
ライナは少し警戒レベルを上げ注意深く魔力探知をした。
突然、ライナの体に異常な魔力が流れ込んできた。
(こ、これは!!)
ライナは後ろに飛び除け、辺りを探った。
「そこか!!」
ライナは魔力の中心部を見つけそこを剣で突き刺した。
すると魔法陣が姿を現したと同時に消息を絶っていた王宮魔術師達がバタバタと倒れながら姿を現した。
ライナはすぐ魔術師達の安否を確認するが全員意識を失っているだけだった。
「全員無事で良かった、けど誰が魔法陣なんて・・・」
ライナは何とも言えない不安を感じた。
「考えても仕方ない。さっさと破壊するか、魔法陣は一部でも削ればその効果が消失するはずだったな」
と魔法陣に近づいた瞬間突如凄まじい光を放つ魔法陣。
「なっ!!」
ライナは光に包まれた。
目を開けるとライナは魔法陣の中心に立っており魔法陣を囲むようにローブを着た魔術師達が4人立っていた。
「は?」
ライナがいまいち状況を把握してない所に少女が近づいてきた。
「お待ちしておりました、勇者様。どうか我々の世界をお救いくださいませ」
「はああああああああああああ!!」
ライナは驚いて大声を上げた。