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第7話 芽生えるもの、それぞれの想いと影


第7話「芽生えるもの、それぞれの想いと影」



---


【ギルド本部・出撃前】


王都ギルド本部、地下の作戦会議室。

ユウの所属する臨時パーティ《暁の剣》には、新たな任務が言い渡された。


「今回の依頼は、地下聖堂の調査と“黒の福音”の動向把握。下手をすれば、聖都派の追撃部隊とも接触する可能性があるわ」


リゼがホログラフ式のマップを前に、淡々と説明する。


「……潜入任務ってことですか?」


「正確には、監視塔の封鎖解除後の掃討よ。任務としてはAランク相当」


「うぅ、いよいよ本格的になってきたね……」


ミリィが不安そうに手を握る。

その手のひらが少し震えていることに気づいたユウは、そっと自分の手で包んだ。


「大丈夫。俺たちでできるさ。……一緒にやってきたんだから」


「うんっ……!」


その一言に、ミリィの瞳が潤む。

それを見て、リアが顔をそらしながらぶつぶつと呟いた。


「……なんでそんな自然に手とか握れるわけ? 私だったら、緊張して死にそう……」


「なにか言ったか、リア?」


「な、なんでもないっ!」


リゼもちらりとユウを見るが、表情は無表情を装っていた。

だが、耳がわずかに赤いことにユウは気づいていた。


(……何かが、少しずつ変わってきてる。そんな気がする)



---


地下聖堂の入り口は、王都郊外の朽ちた教会の地下に存在していた。

内部はすでに人の気配を失い、魔力だけが空気に漂っている。


「《気配探知》発動。……奥に、いる」


ユウが呟くと、リゼが後ろから確認する。


「人数は?」


「四、いや五体。……全部、魔力が乱れてる」


「狂信者ね。洗脳型の神職か、魔術改造か……」


進軍中、ミリィがぽつりと口を開いた。


「ねぇ、ユウくん。前より……迷いがなくなってきた気がする」


「え?」


「最初の頃より、誰かの前を歩いてる“自信”みたいなの、出てきたよ。すごく……頼もしくて」


「……そうか? 自分じゃあまり……」


「そういうとこ、ズルいよね……」


リアの声が後ろから聞こえた。

その呟きはかすれていて、誰に向けたものか分からない。



---


突然、通路の奥から叫び声と共に爆発魔法が飛ぶ。


「敵襲ッ、《シールド・ブレス》!」


ミリィの聖盾が咄嗟に展開され、爆風がかき消える。


「くくっ……“供物”が来たぞ! 主の御許に捧げてくれよう!」


ボロボロの法衣をまとった狂信者たちが、一斉に襲いかかってくる。


「《影跳び》!」


ユウが瞬間移動のように敵陣へ飛び込み、1体の喉元へ短剣を突き立てる。


「《三連突き》、追撃!」


続けざまに3発の斬撃。敵の防御が間に合わず、倒れ込む。


「リア、後ろっ!」


「わ、わかってる! 《エアブレイド》!」


魔力の風刃が横薙ぎに走り、敵を切り裂く。

その隙に、リゼが前線へ飛び出す。


「こっちは任せなさい! 《斬閃・疾風》!」


リゼの剣が弧を描き、敵をまとめてなぎ倒す。

その動きには隙がなく、まるで舞うようだった。


「私も……っ、ユウくんを守りたいの!」


ミリィが《光槍》を展開し、空中から刺突魔法で援護。

ユウの背後にいた敵が吹き飛ぶ。


「ナイス、ミリィ!」


「えへへ……えへ……」


褒められたミリィの頬が緩み、耳まで赤くなる。

それを見たリアが嫉妬のような視線を送った。


「私だって、もっと頑張ってるんだから……!」


(あれ……なんか空気が重くなってきた……?)



---


突然、通路の奥が振動し、巨大なシルエットが現れる。


「来るぞ、あれは……神殿騎士!」


白銀の鎧を纏った敵は、狂信者とは違う冷たい殺意を持っていた。


「ユウ、あいつは私が引き受ける!」


リゼが剣を構え、突撃する。


「危ない、リゼさん!」


だが神殿騎士の大剣が、リゼの斬撃を弾き返す。

反撃の一撃が鎧の隙間を突き、リゼが膝をつく。


「リゼさん!!」


ユウが即座に《影跳び》で距離を詰め、背後から斬りかかる。


「今だ、《疾駆連突》!」


怒涛の連続攻撃。

神殿騎士の装甲が破れ、バランスを崩した瞬間――


「《光閃槍》、《ブレイドシュート》!」


ミリィとリアが同時に魔法を放ち、装甲の間を貫いた。


「ふぅ……なんとかなったか……」



---


戦闘後、リゼの肩に手を置いたユウが治癒ポーションを差し出す。


「無茶するなよ。頼りにはしてるけどさ」


「……そういうこと、軽く言わないで」


「え?」


「私は……っ。……なんでもない」


リゼは視線を逸らす。


その少し後ろ、ミリィがそっとつぶやいた。


「ねえ、ユウくん……」


「ん?」


「私、こうして一緒に戦えて、ほんとに嬉しい。前みたいに“外れ”とか言われなくて、ちゃんと見てもらえるって……」


「俺は、最初から外れだなんて思ってなかったけどな」


「……それ、ずるいよ」


リアもそっと近づき、呟く。


「私も……いつの間にか、ユウのこと見てた気がする。気づいたら、さ」


「え、えっと……」


「焦らなくていいわよ。……でも、いつかは答えてもらうから」


リゼの静かな言葉に、ユウは目を見張った。


(本当に……何かが、変わりはじめてる)




次回予告


第8話「追跡者クラウスともう一人の神職」

“黒の福音”の裏に、ユウと因縁深い神職クラウスの影が――

そして、新たな巫女少女との出会いが、運命を大きく揺るがす。

動き出す真実と、揺れ動く心。神の祝福と呪いが交差する――

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