第11話「迷宮都市の夜と、彼女たちの本音」
迷宮都市グラルド――
それは冒険者たちの拠点にして、数々の迷宮とクエストが眠る街。
ユウたちのパーティ《蒼閃ノ誓約》は、《静謐の庭》の攻略を果たした功績により、上級探索ランクへと昇格した。
街に戻った彼らは、久々の休息を取ることにした。
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「やっっっと風呂だ~~~~!」
ミリィが湯上がりのタオル姿で廊下を駆けてくる。
「……タオルだけって、あの子ほんと自由すぎ」
リゼがため息をつくが、同じく濡れた髪を絞っている。ローブの下にはタイトなインナー。
「それにしても、良い湯だったな。久々にまともなベッドだし」
リアはシルクのナイトドレス。腰まで伸びる黒髪が濡れて、背中に張りついている。
「……ユウ様も、お休みになられるのですか?」
エリナが和装用の寝間着に着替え、膝を揃えて座る。普段よりほんの少し大胆なスリットが目を引く。
ユウはというと、窓辺で地図を広げ、次のクエスト候補を検討していた。
「……おいおい、今夜くらい休めってば。あんた、鈍感すぎなんだから」
ミリィが、思い切ってユウの背中に抱きつく。
「うぉっ、ちょ、ミリィ……タオル一枚はまずいだろ!」
「別にいーじゃん、誰も見てないし~?」
ユウが顔を真っ赤にして慌てて目を逸らすと、リアが静かに口を開く。
「私も……少し話したいことがあるの」
「え、あ、うん……」
リアは一歩前に出ると、ユウの手を取り、自分の胸にそっと当てる。
「……鼓動、聞こえる?」
「な、何やってんだ……!」
「私、怖かったの。あなたがまたどこかに消えてしまいそうで」
そこに、リゼが腕を組んで立ち塞がった。
「ふぅん、なるほど。つまり、これは“順番待ち”ってやつ?」
「リゼ!? 君まで……」
「私だって、あなたのために戦ってきたんだから」
そして――最後に、エリナが一歩下がった場所から囁くように言った。
「……今夜だけは、巫女ではなく、ひとりの“女”として見ていただけませんか?」
4人の視線がユウを貫く。
彼の心臓は、もう騒音のように鳴っていた。
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灯りが落ちた部屋で、ひとりずつ――
ユウとヒロインたちの、短い“夜の語らい”が始まった。
リアは静かに隣に座り、手を重ねて眠る。
リゼは淡く笑い、眼鏡を外して肩に寄りかかる。
ミリィは悪戯っぽくキス寸前の距離で耳元に囁く。
エリナは、神官としてでなく、ただの少女として自らの想いを告げる。
「……本当は、最初から好きでした」
それぞれの“気持ち”が、静かに、でも確かに、ユウの中に積もっていく。
しかし彼は、ただ呆然と――
(これ、ゲームのイベントだよな……? 違うよな……)
完全に自覚のないまま、4人の本気の恋心を受け止めるのだった。
窓の外、迷宮都市グラルドの夜景が淡く揺れていた。
街の喧騒はすっかり収まり、聞こえるのは虫の声と、遠くで鳴る鐘の音だけ。
ユウは宿の自室で、ひとり思案していた。
――あの4人、どうしてあんなことを……。
手のひらに、彼女たちの温もりがまだ残っている気がしていた。
そんなとき、静かなノックの音が響く。
「……ユウ、起きてる?」
声の主はリアだった。
戸を開けると、彼女は細身のシルクナイトドレスのまま立っていた。
濡れたような黒髪が肩にかかり、いつもの冷静な印象とは異なる、どこか儚い雰囲気を纏っている。
「……少しだけ、話せるかな」
「……ああ。入って」
リアは無言で部屋に入り、ユウの隣に腰を下ろした。
距離は近い。ほんの数センチ先で、彼女の細い肩がかすかに震えている。
「……今日、すごく嬉しかったの。ユウと一緒に、あの迷宮を越えて」
「俺も。みんなとだから、あそこまで来られた」
「ふふ……みんな、ね」
リアが笑う。だが、その笑みに微かに滲む寂しさに、ユウは気づく。
「……怖かったんだ。私、昔、誰かと一緒に戦ったことなんてなかった。
ずっと一人で、感情を隠して、失うのが怖くて、仲間すら作らなかった」
「……リア」
「でも、あなたと出会って、少しずつ変わった。戦う意味も、笑う理由も……
それでも、私が今一番欲しいものは、戦果でも名誉でもないの」
リアはそっとユウの手を取り、自分の胸元に導いた。
そこには、早鐘のように跳ねる鼓動があった。
「……ユウ。今夜だけでいい。私を、女の子として見て」
ユウは答えられなかった。ただ、彼女の震える声と、真っ直ぐな瞳に吸い込まれていく。
そして次の瞬間――
リアが、自ら身体を重ねてきた。
「お願い……一人に、しないで」
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時間は、ゆっくりと、けれど確実に流れていく。
唇が重なり、呼吸が乱れ、互いの体温が確かめられていく。
ユウの指がそっと彼女の髪を梳いたとき、リアは声を殺して震えた。
けれど、それでも逃げなかった。むしろ、彼女から距離を詰めてきた。
「こんな私でも、触れていいの……?」
「リア……今の君は、すごく綺麗だ」
言葉は少なかったが、その夜の静寂の中で、ふたりはすべてを交わした。
衣擦れの音。息の混ざる熱。
カーテン越しに差し込む月明かりだけが、その“夜”をそっと見守っていた。
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明け方――
リアはシーツを胸元まで引き寄せながら、眠るユウの横顔を見つめていた。
「……夢じゃ、ないよね」
彼女の目に、涙の粒が浮かんでいた。
だがそれは、安堵と幸福の色をしたものだった。
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朝。
他のヒロインたちが目を覚ますと、リアはすでにいつもの無表情に戻っていた。
だが、よく見ればその頬はどこか上気し、視線がユウと交わるたびに、ほんのわずかに逸らされる。
ミリィが眉をひそめる。
「なんかリア、機嫌いい? なんか食べた?」
「……別に。寝起きが良かっただけよ」
誰にも気づかれないように、リアはそっと唇に指を当てる。
(ユウ……ありがとう)
彼女の中で、“戦いの意味”は確かに変わったのだった。
次回予告
「新たな神託の少女──真なる“最弱職”の真実とは」
謎の巫女を名乗る少女が迷宮都市に現れ、ユウに“神の声”を語る。
その言葉は、世界を揺るがす“職業”の真実に繋がっていく――!




