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Memory Reload  作者: 削氷菓
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第六話

 草原を歩いていると、遠くから金属音と掛け声が聞こえた。


「くっ……囲まれた……!」

「回復が追いつかない……っ!」

「なんでこんなに……っ!」


(戦闘か……?)


 視線を向けると、草むらの向こうに3人の冒険者がいた。


 剣士の男、軽装の女、ローブ姿の魔法使い――どう見ても、初心者パーティー。

 彼らは複数のルポルカニスに囲まれていた。


 状況は悪い。

 剣士の男が前衛を担っているが、すでに動きが鈍い。

 軽装の女はナイフで応戦しているものの、一対多の戦闘に苦戦している。

 魔法使いの女は回復役らしいが、詠唱の余裕がないほど追い詰められている。


(このままじゃ、まずいな)


 考えるより先に、体が動いていた。


 救援戦闘開始

「っ……!!」


 ルポルカニスが前衛の剣士に飛びかかる。


「間に合わない――!」


 その瞬間――俺はポーチの中からポーションを取り出し、素早く投げた。


「っ!?」


 ポーションが正確に飛び、剣士の男の頭上で割れる。

 青白い光が包み、彼の傷が癒えていく。


「な、なんだ!? 回復した……?」


 戸惑う彼をよそに、俺はルポルカニスの間をすり抜けるように駆けた。


 ――攻撃パターンが、見える。


 前足を振り上げるモーション、飛びかかる角度、牙をむくタイミング。

 すべてが"分かる"。


(避けられる……!)


 俺は一撃も受けることなく、ルポルカニスの群れの中を駆け抜けた。


「な、なんだアイツ……!?」


「動きが……おかしい!?」


 冒険者たちが驚きの声を上げる。


 だが、今はそれどころじゃない。


「っ……!」


 俺はさらにもう一つのポーションを軽装の女へ投げた。


「えっ……!? きゃっ!」


 頭上で割れたポーションの効果で、彼女の傷が一気に回復する。


「た、助かった……!?」


 彼女が驚く間もなく、俺は次のルポルカニスを避けながら、詠唱が間に合わない魔法使いの女へ近づいた。


「詠唱よりも、これを使え」


 ポーションを彼女に投げ渡す。


「えっ、あ……ありがとう!」


 彼女はポーションを飲み、息を整えた。


(これで、立て直せる)


 前衛の剣士が態勢を立て直し、再び剣を構える。


「……いける!」


 軽装の女がナイフを持ち直し、敵の間合いを図る。


「私も援護します!」


 魔法使いの女が詠唱を再開する。


 次の瞬間――


「《ファイアボルト》!!」


 炎の魔法が放たれ、ルポルカニスを直撃する。

 ひるんだ隙に、剣士の男がとどめを刺す。


「やった……!」


 最後の1匹も、軽装の女のナイフが急所を捉え、光の粒子となって消滅した。


「……なんとか、倒せたな」


 剣を鞘に納める俺を見て、3人は明らかに驚いていた。


「お、お前……今の動き、なんだよ……?」


 剣士の男が息を整えながら、困惑した表情で俺を見る。


「俺たちと同じ初心者だろ? でも、動きが違いすぎる……」


「回復もすごかった! こんなポーションの使い方、初めて見た……!」


 軽装の女が目を輝かせる。


「……まあ、慣れてるだけだ」


 適当に答える。


(追及されても困るしな)


 と、魔法使いの女がにっこり笑う。


「あなた、すごく頼りになります! もしよかったら、一緒に冒険しませんか?」


「え?」


「ほら、私たち、まだ慣れてなくて……こういう戦い方、学びたいんです!」


「おい、いきなり誘うなって……」


 剣士の男は苦笑するが、まんざらでもなさそうな顔をしている。


「俺はストレイだ」


「私はエリス! 魔法を使います!」


「俺はレオン。剣士やってる」


「私はセリア! 軽戦士って感じかな?」


 名前を交わし、俺たちは初めての"仲間"になった。



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