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転生鬼譚  作者: 葉月 琇
序章
3/4

2 小鬼《ゴブリン》は中鬼《ホブゴブリン》と対面する

徐々に意識が覚醒していく。

「そうだ!俺は訳もわからないまま殺されて…」

(いや待てよ…もしかしたら今までの社畜での疲れが蓄積したあまり、帰宅途中の路上で寝てしまい、包丁を持った少年に腹部を刺され、小鬼ゴブリンに転生した夢を見ていただけかもしれない…)

 だがそれは都合の良すぎる解釈だと、状況が訳分からなさすぎて狂った脳の妄想だと俺は確信した。

 なぜなら夢にしては包丁が体内に入ってくる感触も、包丁が刺さった痛みも夢だったらあり得ないほどに鮮明に覚えている。

 あの感触を思い出しただけでも全身に悪寒が走る。

 何より身体が夢とは思えないほど生臭く、俺の横にはぼんやりとしか見えないが、醜悪な見た目をしたファンタジー系のライトノベルとかでお馴染みの小鬼ゴブリンの幼体みたいなやつが数十匹目を瞑って、まるで死んでいるかのようにぐっすりと眠っているからだ。

(……やば…めっちゃ眠い……)

 そんなことを思っていると急に物凄い眠気が俺の意識を飲み込む。眠くなってきた。

(……まあ良いや、夢なら目が覚めて終わりだしな)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

・個体名〈ヒデオ〉は〈小鬼ゴブリン幼体〉から〈小鬼ゴブリン成体〉に成長進化しました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 眠気に従い意識を失う瞬間、どこか無機質な声が脳内(?)に響いた。

(……ん?なんだろ…まあ良いや…明日の事は明日の俺がなんとかするだろ……今はとにかく眠い……)

 考えだけを見るとダメ人間みたいだが、俺はいつもこの考えで今まで過ごして来た。頭が悪く、要領の悪い俺みたいなヤツがいくら考えても、良い考えは浮かばない。

 こうして俺は流れるように意識を手放した。


パチリと目が覚めた。

(こんなに気持ちよく起きれたのは久しぶりだな……)

 自分でも驚くくらいに寝覚めが良かった。

 そして俺は物凄くクリアになった頭で昨日の出来事を思い出して、周囲を観察し始めた。

(……何だこいつは?)

 周囲を観察すると周りには昨日の記憶よりも一回りくらい大きくなった全身緑色で醜悪な顔をした小鬼ゴブリンがいた。

(……これはどう考えてもアレという判断で良いんじゃないのか!?)

 ラノベを見つけたあの日から、俺は高校・大学時代本屋に足繁く通った。

 そう俺は生粋のオタクなのだ。つまりーー

(これは異世界転生確定なんじゃね!?)

 という訳である。

 俺の周りには30匹以上はいるであろう小鬼ゴブリンの幼体達。

 鏡や水といった自分を写す物はないが、腕を見ただけで自分も小鬼ゴブリンなのだと分かった。言わずもがな俺自身の腕も緑色で、筋肉も全然付いていない貧弱な身体だからである。

(…というか別に、小鬼ゴブリンなんかに転生させなくても…前世と同じ人間でいいじゃん……)

 周囲の観察と自分自身の状況把握を終えた俺は、異世界に転生したことを確信し、誰にいうでもなく苦言を呈した。

(まぁいいか、本来なら終わっていた人生を再チャレンジ……いやこの場合は鬼生を送る…か)

 この際、小鬼ゴブリンに転生したことはしょうがない。

 せっかく異世界転生出来たのだからこの状況を喜ぶべきだろう。 

(それよりも…昨日の声……)

「グギャー!!」

 昨日寝る前に聞こえた声のことを考えようとしたら、俺の隣で寝ていた小鬼ゴブリンの幼体が言葉にならない声で何かを求めるように泣き叫んだ。

 それからは凄かった。この声に呼応するかのように俺の周囲に寝ていたはずの小鬼ゴブリンの幼体達が徐々に泣き叫び始める。

 それから少しして、ペタペタという足音が聞こえて来た。

 俺達がいるのは、周囲を岩壁に囲まれた洞窟の広間のようなところで、一か所だけにポッカリと穴が開いており、そこから何者かが体を覗かせる。

「おぉー!俺様の子達、全員無事に生まれたか!」

 そう俺にも分かる言葉で話した。その姿は俺達よりも大きく、成人の男性くらいの背があった。

 そして人目見て俺達と同族であると分かった。

 なぜなら古びてカビた服を着てはいるが、服で隠せない掌や足は小鬼ゴブリンの特徴である緑色だからだ。

 顔は醜悪な顔を少し凶悪にしたような顔をしていて、体付きも俺の貧弱な身体と比べると全然違う。

 言うなれば中鬼ホブゴブリンだろうか。

(…間違いない、ヤツは俺の父親だな)

 そう判断して中鬼ホブゴブリンの話に耳を傾ける。

 今はもうあのブラック企業で働かなくていいということだけでも、俺にとっては最高な気分であった。

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