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アリゾナ・ガヴェッジ・サバイバー  作者: 神崎 和人
第1章 コウノトリの楽園

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13.焼却炉

 左方向に湾曲する通路を進んでいくと左手に扉が現れた。

 ストレッチャーに導かれるままに扉の前を通りすぎていく。

 横目で扉に書かれた文字をおったケネスは軽い目眩を覚えた。

 

『焼却炉 第一搬入口』

 

 本当に人間を処理するための焼却炉がここにあるというのだろうか?

 建物の外からは煙があがっているような様子は見えなかった。

 そもそもアメリカでは焼却炉自体が珍しく、ここアリゾナでは聞いたことがない。何しろ周囲は砂漠だらけで埋め立てる場所などいくらでもある。


 いや、仮に人間を埋め立てたとしてどうなるか? 皮膚や筋肉、内蔵はともかくとして骨は相当な年月残るだろう。それが何十体、何百体ともなれば、いつ無関係な一般市民の目に触れないとも限らない。

 超高温で骨が灰になるまで焼き切ってしまうのであれば、むしろ賢いやり方にも思えた。

 

 そのまま順に三枚のドアを通り過ぎ四番目のドアに近づくと、それは自動的に開いた。

 おそらく『第四搬入口』だ。

 通路はその先で袋小路になっていて、そこに同じ型のストレッチャーがいくつかならんでいるのが見てとれた。

 ストレッチャーは狭い入り口の手前で器用に折りかえしてむきをかえ、室内に入っていく。


 ケネスは気配を殺して部屋の入口に近づき、中の様子をうかがった。

 そこはストレッチャー数台分くらいの狭い部屋で、奥の壁はガラス張りになっていた。

 人の姿はない。

 部屋の中央にガラス張りの壁を突き抜けるようにして、ベルトコンベアが設置されている。

 その横に並ぶようにストレッチャーは停止した。

 ここで人間をベルトコンベアに移し替えるのだろう、彼はそう推察した。


 その横には操作パネルらしき制御盤も設置されている。

 ガラスのむこうには左方向に開けた空間が広がっていて、天井にはいくつもの照明灯が吊りさげられていた。

 照明は点灯しているものの人気ひとけはなく、ここまで続く経路と同様に静まりかえっている。

 ベルトコンベアは彼のいる小部屋からガラス壁を突き抜けて、そのまま二十メートルほど続いていた。


 その先の光景にケネスは戦慄する。

 半円形に開いた投入口を塞ぐ、分厚く巨大な鉄の扉。

 扉には小さな丸いガラス窓が三つ。

 窓の奥には赤い光が満ちていた。ゆらゆらと炎が踊っている。

 扉の隙間からはときおり、火の粉が舞いおちては短い命を散らすように消えていく。


 まるで三つ目の巨大な怪物が炎のよだれをたれ流しながら、獲物を今か今かと待ち構えているようだった。

 間違いない、焼却炉だ。

 しかもただの焼却炉ではない、人間を焼却処分(・・・・)するための焼却炉だ。

 悪夢が現実となってしまった瞬間だった。

 ケネスはその衝撃に言葉もでない。

 

 ベルトコンベアの両脇にはある程度のスペースが確保されていて、大きなカゴのようなものが等間隔にいくつか置かれていた。

 視線を左方向にむけると、同じ構成で三本のベルトコンベアが走っている。

 全部で四本のベルトコンベアが中央奥の炉にむかって交わる形で敷設ふせつされていた。

 彼は上層のリサイクル設備を思いだす。この無駄に長いコンベアで何をするのか、想像するのは容易たやすかった。


 ――分別処理。


 ただ一つ、違うのはここでの対象は人間ということ。

 おそらく焼却前に対象から金品や場合によっては衣類を取りあげるのだ。

 そして、それを行うのも人間だ。


「胸糞悪い」ケネスは吐きすてるように言った。



 

 そして彼の気分を陰鬱にしている要因がもう一つあった。

 キャスリーンの姿が見つからないこと。


 ここにくれば会えるのではないか?

 最悪、会えはしなくとも何か手がかりが見つかるのではないか?


 そういう希望があった。

 しかし、現状、彼女につながる情報は何一つない。

 彼の脳裏に、もう一つの可能性が浮かびあがる。

 つまりそれは――。

 ケネスはかぶりをふって自身の考えを否定する。


「まだだ、まだそうと決まったわけじゃない」


 何でもいい、何か手がかりはないのか? 彼は部屋の中をさぐるように足を踏み入れた。

 室内をぐるりと見わたす。

 ふと、左後方に何かの気配を感じる。

 次の瞬間、ケネスは後頭部に強烈な衝撃を受けて、振りむくこともできないまま前のめりに倒れこんだ。

 気を失ったのか身動き一つしない。


「手間かけさせやがって」


 カーキ色のつなぎを着た男が、警棒を握りしめて倒れた彼を見おろしていた。



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