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バベルの翻訳家〜就活生は異世界で出会ったモフモフと仕事探しの旅を満喫中!〜  作者: 天壱
Ⅳ.着地

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37.移住者は目を開く。


「遅えな!!やっと来やがったか!」


……?


ガタァン!と何かを蹴り飛ばす音で、最初に目が覚めた。

身体がまだ怠くて、目は覚めても瞼を開く気にならない。硬い寝心地を感じながらゴトゴトガタガタと面倒そうな音に耳を澄ます。

複数の足音に振動するし、やっぱり今床にいるのかなと思う。……なんだろう、眠くないのと別に目を開けたくない気がする。

早くしろ、そこの女だ、何故遅くなった、突然呼んだのはそっちだろと。男達が喧嘩口調で言い合うのが嫌でも耳に入る。


眉間に皺が寄らないように意識しながら唇を結び直前までの記憶を巡らせれば、状況もだんだんと理解した。

捕まって変な薬嗅がされて、本当にお手本のように攫われた。

どれくらいの時間が経っているんだろうと思えば、ルベンとサウロも心配になる。二人ともあのまま無事にいてくれれば良いけど、どう考えても状況からしてあの店もグルだろうし追い出されているかもしれない。ううん、追い出されるくらいならまだ良い。それよりも二人までこいつらに捕まってたらと思うとぐっと心臓が突き出されるように気持ち悪く鳴りだした。

奴隷とか、どうしようルベンも珍しい白色で、サウロもオークの中で見かけが珍しいし私達には美形だし!もとはといえば私があの性悪エルフに喧嘩を売ったから!!


どうか二人はいませんようにと、願いながら少しずつ薄めを開く。

ぼやけた視界から焦点が合ってきたらそこでちょうど知らないおじいさんが真正面にこっちを向いていたことに気付いて慌ててまた目を閉じる。まさかがっつりこっち剥いているとは思わなかった!!

本当に一瞬だったけど、おじいさんの回りにさっきの性悪エルフ達も集まっていた。おじいさんも多分エルフだ。


「おい!スキル鑑定できたならさっさと言え!!」

「ああもううるせぇなぁ言うかい?じゃあそのまま言ってやるよ。〝万族翻訳〟だとよ」

ハァ?!!と、直後に間の抜けた大きな声が複数まばらに重なった。

もうこの声を理由に目を覚ましても良いくらい耳につく大声だ。眉間に皺が寄らないように奥歯で堪えながら、どうやら今のおじいさんが鑑定スキル持ちだったらしい。あっさりと私のスキルがバレた。やっぱりあの性悪エルフに言い返した所為でスキル目当てに狙われたんだ。ああもう本当私のバカ!!


なんだそりゃと〝翻訳〟の意味も知らない彼らが騒ぐ。この世界に翻訳はないし、スキル鑑定のおじさんも理解に悩んだんだろうなと思う。ごちゃごちゃの若い声は多分性悪エルフの仲間だ。

うまく聞き取れないけど、多分あの性悪エルフの声も混ざっている気がする。具体的にどういうスキルなんだと尋ねる彼らに、溜息混じりにおじさんが〝翻訳スキル〟の最高ランクだと説明していく。私が最初に聞かせてもらったスキル鑑定のお姉さんの話と内容は大体一緒……いや、ちょっと違う。


「全ての種族の言語を変換可能。文字も言語もなんでも好きな種族に変えられるだとよ。なんなんだこのスキル?今まで色々な鑑定してきたが翻訳なんてスキルどころか聞いたこともねぇよ」

おじいさんの性格柄なのか、それとも態度が悪い性悪エルフ達への嫌がらせなのか説明がすごい大雑把だ。間違っていないけれど、眷属も翻訳されることや、同族である人間族に普段はという説明が全部抜けている。もしかしてスキル〝ランク〟の違いだろうか。

このおじいさんよりも、サンドラさんの街の鑑定士のお姉さんの方がランクが高い分わかることも多いのだと考えれば納得できる。


目を閉じたまま瞼の裏越しに、声のする方向へ見えないおじいさんを睨みつける。

なら、私についての情報も少しは知られずに済むだろうかと祈るように思う。少なくともスキル目当てならスキル不明のルベンとサウロは狙われずに済んだかな。いやでも二人は二人で大金とか高価なものいろいろ持っていたし……。

さっきまでのぎゃあぎゃあ声が嘘のように、性悪エルフ達の声が収まった。知らないスキルの内容に戸惑っている彼らに、どうか私のスキルが無価値だと判断されますようにと耳を澄ます。

すると、今度こそ間違いない、あの性悪エルフの声が静けさの中に落とされた。


「変身スキル持ちのエルフじゃねぇってことか?エルフの言葉喋るだけのただの人間族かよ……」

「ルート!!話が違うじゃねぇか!お前がレアスキル持ちって言ったから協力してやったのによ!!」

「あ~あ、今頃通報されちまってるぞ??あの従業員のババア、恨みがましく睨んでやがったから間違いねぇ」

「わりに合わねぇ仕事しちまったなあ」

「あんなやべぇ飼い主いたらあそこで攫う以外ねぇだろ!!!」

うるせぇ黙れと、ルートと呼ばれた声がぎゃいぎゃいまた怒鳴る。多分、私に絡んできたあの性悪エルフの名前だ。

話に食い付いたのはお前らもだろ、だいたいあの店は盗みをする為にと会話を聞きながら、大体の状況は把握する。


どうやら彼らは窃盗団……いや私を攫ったのだから奴隷商とか、とにかく犯罪組織で私達がまんまと紹介されたお店にもともとは強盗に入るつもりだったらしい。

従業員の中に自分達へ借金しているおば様がいるから手引きさせる手筈は前からできていて……それを今回強盗ではなく、私一人誘拐の為に協力させた。

着替え部屋に私を誘導したあの人しか想像できない。私が翻訳スキル持ちの人間ではなくて、人間族に化けてるエルフだと思って攫ったということも納得する。


翻訳なんてこの世界にないとサンドラさん達も言ってたし、確かに何も知らない人ならそう解釈する方が自然かもしれない。良かった、翻訳スキルを狙われたわけじゃない。

攫われた本人が寝ている前で大声で責任の押し付け合いから仲間割れをするエルフ達の喧嘩を聞きながら、このまま寝たふりをし続ければお役御免で開放されないかなと甘いことを思う。私のスキルに価値がないと思ってくれるならこのまま縄ほどいて捨てていってくれれば




「〝異世界転移者〟……?!」




ビッ、と微弱に肩が思わず揺れた。

息を止め、一瞬で思考が止まる。比較楽観的な気持ちになれた筈なのに、おじさんの低過ぎる声が再び部屋が静けさを取り戻した。

さっきまでの面倒そうな声じゃない、まるで幽霊でも見たようなおどろおどろしい声に心臓がバクバクと鳴りだした。エルフ達に聞こえちゃうんじゃないかと思うほど鈍く大きな振動が身体の中で響く。まずい、鑑定でスキル以上に知られたくないことを知られてしまう。


どういうことだじいさんとエルフ達が訪ね出す。お願い言わないでと念じるけど、そんなのこいつらに協力しているおじいさんに届くわけでもない。スキル鑑定でそんなことも知られるなんて……でも、確かにあの鑑定のお姉さんも私がこの世界の言語事情知らなくても全く不思議がっていなかった。あのお姉さんもスキル鑑定した時点で気付いていたんだ。

サンドラさんの街は異世界人も定期的に現れていたしそこまで大げさに珍しがらなかっただけ。……でも、この王都は。


「こいつ異世界転移者だぞ!!!数十年に一度の逸材じゃねぇか!!人間族でもいたのか?!一体どこで攫ってきたんだこんな奴!!」

「転移者?!そんなの本当にいたのか!!」

「最高スキルってのもそういうことか……。おい、転移者の報奨金って百年前から変わってねぇ筈だぜ」

「高額どころじゃねぇ!今すぐ城に連れてくぞ!誰か急いで奴隷商から枷買ってこい!!奴隷でたまたま見つけたってことにして売りつけるぞ!!」

まずいまずいまずいまずい!!

一気に状況が恐ろしい方向へ傾いていく。サンドラさんが教えてくれた話が嫌というほど頭に蘇る。まさか報奨金までは知らなかったけど城が欲しがっているのは知っていた。

急に慌ただしくバタバタとした足音が振動になって横たわる全身に伝わる中、このどさくさで逃げられないかなとゆっくりと手足を動かしてみる。ほんの数センチ動かそうとしただけで、ギシッと手足が縛られていることを確認できた。片方だけ動かそうとしてももう片方も動くし、手も一緒だ。

いっそもう起きて何か言ってみようかとも思ったけど、その先の方法が何も思いつかない。どれだけしらばっくれてもスキル鑑定でスキルも異世界からの転移者なのも隠せない。その内「使ってなかった枷ならどっかにあった筈だ」ととんでもない持ち合わせ情報まで聞こえてくる。奴隷に強盗に借金って本当にこいつら何?!!


こうなれば、ともう枷なんかつけられる前にと目を開ける。さっきの薄く開けていた目では大して感じなかった部屋の明かりに一瞬目がくらついたけど、無理矢理開く。途端にやっぱり最初に目に入ったのはさっきのおじいさんだった。いや、見かけはどちらかというとおじさんくらいだ。

会話から聞いてもわかっていたけどやっぱりエルフだ。私が突然起きたことに目を丸くしたおじさんが、僅かに首を反らす。更には傍にいた他のエルフが「起きたぞ!」と私を指差した。

もう状況をこれ以上驚くわけもなく、起きれない分私はぐるりと首を回して周囲を確認する。

木製の古びた床に、飛び降りられそうな窓が一つ。硝子も嵌められてない枠一つがぽっかり開いている。壁も灰色の染みがいたるところに滲んでいて、天井にランプが吊されている簡素な部屋だ。

両手は後ろに縛られていて見えないけど、足に視線を向ければ普通の縄だった。私の力じゃどうみても千切れそうにはないけど、これさえなんとかすれば窓から逃げ出せるかもしれない。


「おーおー起きたかペット。いつから起きてた?すげぇなお前異世界転移者なんだって??」


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