表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バベルの翻訳家〜就活生は異世界で出会ったモフモフと仕事探しの旅を満喫中!〜  作者: 天壱
Ⅳ.着地

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/79

27.移住者は広げ、


「すっげぇえええ!!これ全部食っていいのか?!」


おおおおおぉおおっっ!!とテーブルの上に目を輝かせるルベンに思わず笑ってしまう。

最初の牛串屋さんで腹ごしらえを済ませた後、私達は宿屋へ戻りながら通りがかるお店でご飯を調達して歩いた。パン屋さんか牛串屋さん以外にも美味しそうな店が目白押しで、同じような店もあれば珍しい料理が揃っているのもあって見てて飽きなかった。……うん、本当に見てて飽きないだけに止めておけば良かったんだけど。


今、宿の部屋に戻った私達の前にはテーブルの上にところ狭しと買い込んできた料理が並んでいる。

牛串を始めとした肉料理と菓子パン以外にも結構あった甘いお菓子、そして個人的に野菜不足生活にと林檎やトマト、キャベツとか生で食べれる系の果物野菜もついでにがっつり買い込んだ。もう宿屋に着く時には買ったご飯しか持っていない私まで両手一杯にスーパーの大安売り帰りみたいになってしまった。

調子に乗って買いすぎた、と後悔もしなかったわけじゃないけど何かお祭りハイみたいになってた。だって、あんなに食べ物でルベンもサウロも喜ぶんだもん。

気分は完全に初孫と初めてのデパートに来たおばあちゃんだった。牛串を買い込んだ後もルベンは味をしめたようお肉や甘いにおいがすれば目を輝かすし、サウロまで肉料理のお店を見つけたルベンが声を上げれば「あれも肉なのか……」と興味津々に呟くからついついお財布の紐が緩んでしまった。


「全部食べても良いけど、これで今日一日分だからね。朝ご飯とお昼ご飯と夜ご飯はこれだけ。……ていうか寧ろ明日の分までありそうだけど」

「なにいってんだよ余裕だろ!!サウロも早速食おうぜ!」

「私も食べていいのか……?」

むしろサウロも食べてくれないとこの量のお肉食べきれる気がしない。牛串二十本だってもともと私じゃなくてサウロとルベンの為だけに買ったんだから。

テーブルに並べられた料理……といってもお皿がないから買った時に詰めてくれた箱とか紙袋とかに入れたままであまり見栄えは良くないけど、二人とも全く気にせずに喜んでくれる。

私が手を洗っている間にもルベンは「よっしゃ!!」と遠慮無く料理を食べ始めていた。人間用の椅子の上に乗り上がって立ったままモシャモシャと食べ始めるルベンに疲れないかと思ったけど、食べるのが早い彼にはこっちの方がすぐに料理に手が届いて良いのかもしれない。

ルベンの隣の席に腰を降ろした私も「頂きます」と一人手を合わせてから早速野菜を鷲掴んだ。スーパーがない分、どの野菜も取り立てらしくすごく鮮度が良い。

ルベンに誘われた後もじーっと料理を見つめ続けるサウロに私からも食べようと声をかけた。私はわりとパンと牛串でお腹も膨らんだけど、絶対二人はそれで足りているとは思えない。


「ほら、サウロが美味しいって言ってた牛串もあるよ」

どれを食べれば良いか悩んでいるサウロに、ルベンが全部食べちゃう前にとさっきのお店で買った牛串を取って差し出す。

今度は迷わず口を開けたサウロに、はっとついさっきの事件を思い出した私は「ストップ!!」と声を上げた。うっかり慌てた所為で大きな声になってルベンまで顔を上げてしまった。

キョトンとする二人を前に私はサウロに早速レクチャーを試みる。


「サウロ、一回試しにお肉だけ食べてみれる??さっき私やルベンがやってたみたいにー、えーと!こう、……やって」

ンぐっ、と言葉では難しいので実際に一口分囓って食べてみる。一番上に刺さったお肉一個を歯で囓り、串から抜いて口の中に頬張る。

サウロにあげようとしたのをそのまま食べちゃってちょっと悪い気はしたけど、まだたくさんあるし。それよりも今度こそサウロに正しい串焼きの食べ方を覚えさせたかった。

これで串と一緒に食べた方が美味しいとかならもう諦めるけど、やっぱり副菜じゃないし串に味がしないならお肉だけで本来の美味しさを味わって欲しい。

そう思って食べてみせた私に、ルベンが「別に食えるならどっちでも良いだろ」と姑を見るような目を向けてきた。いや別にマナーとかそういう理由で言ってるわけでもないし!……というかマナーとかなら手掴みで料理全部食べている私達全員レッドカードだろうなと思う。しかも二人は手も洗ってない。今までそれで死ななかったなら良いけど。


「?……肉だけ、……?」

サウロもルベンの意見と同感なのか、串を避けて食べる意味がわからないようにちょっとだけ難しそうに眉を寄せた。

でも私がもう一本新しい牛串を取ってサウロに手渡してみれば、手探りといった様子で口を開けてさっきの私と同じように食べてくれた。

良かった、難しくはなさそう。身体の大きさこそ違うけど、これくらいなら普通にできるみたいだ。


「串に刺さったのがどんどん下の方になったら、……まぁ食べても良いけど。除ける場合は横から囓ると食べやすいよ」

サウロなら喉に刺さる心配はないとわかってもつい助言してしまう。

一口目のお肉を私の真似をして本当に一切れ分しか囓らなかったサウロは、薬でも飲むようにすぐ喉に通してしまった。次の二口目になると食べ方の要領を得たサウロは今度は大口でがぶりと横から囓り、するりと上手に串だけ抜いて食べきった。

私には見慣れたのことの筈なのにサウロができるとつい感動してしまいつい「上手上手!」と褒めてしまう。……直後にはルベンに「馬鹿にしてんのか」と素で突っ込まれたけど。


最後には残った串をポリポリとスティック野菜形式で食べてしまった。

サウロが文字通り牛串丸ごと食べきったのに対して片手に牛串一口で止まっている私は、食事よりもサウロの食べ方講座に夢中になってしまう。

お肉を食べている間はルビーの目が輝いているように見えたサウロは、本当にお肉が好きなんだなと思う。


「どう?どっちが美味しかった??あんま変わらない?」

「……今の方が、肉の味がした。次からは、これで食べてみようと思う」

ぼそぼそと低い声のサウロは抑揚もないけれど、次から採用ということはこっちの食べ方で気に入ってくれたらしい。

良かった!と正直に感想を声に出す私は、どうぞどうぞと他の料理をサウロに手で示した。手当たり次第似たようなお肉料理も買ってきたから、他にも串に刺さっているものはいくつもある。

ルベンがもう食べた料理を指して「これとか美味かったぞ!」とサウロに教えると、彼も勧められるままに手を付け始めた。

あんまり表情に出さないサウロだけど、お肉の塊系のだと特に目が輝くからシンプルな料理の方が好きなのかもしれない。お肉に関してはルベンと気が合うのか、次第に彼に勧められなくても「これ美味い!」と声を上げる度に自分もそれを手にとっていた。

味覚が合うって大事だなと思う。お互いに良い友達になれて良かった。

もぐもぐと食欲旺盛な二人を眺めながら、口を付けちゃった牛串の続きを食べようかと思ったけどちょっとお腹がもたれた。ちょっと後回しにして食べれなさそうだったらルベンに食べてもらおう。

反対の手で引き続き、テーブルに置いていた野菜を優先的に食べる。みずみずしい野菜に口の中がすっきりして美味しい。


「今のところ二人はどんな料理が一番気に入った?」

お勧めがあったら今のうちに確保しておこうかなと、そこで二人に投げかける。

「ルベンはー、あっ!この甘いのが美味い!!最初に食った甘いパンと同じ匂いだけどこっちの方が絶対美味い!!林檎もすげーはいってんだ!」

食ってみろよ!と両手に食べ物をわし掴むルベンが長い鼻で指し示してくれたのは、アップルパイだ。

まだ甘い系は食べてなかったなと、私は勧められるままに一切れ確保する。見かけの綺麗さに押されてワンホール買っちゃったけど、既に二切れないからルベンだけじゃなくサウロも食べたんだなと思う。もしくは術にルベンが二切れ食べたか。

皿がないからアップルパイを入れていた箱に一切れだけ切って収納すると、ルベンが食べる手を止めて首を九十度傾げた。


「今食わねぇの?」

「うーん、食べきれるかわかんないし。あ、一口食べたら残りルベン食べてくれる?」

取り敢えず一切れ確保した上で、また一切れを手に取る。

アップルパイとか一日おくと生地が硬くなっちゃうし、ルベンも今感想が欲しかったのかもしれない。


私の誘いに元気よく快諾してくれたルベンに甘え、三角形の先端にパクリと齧り付いた。角切りにされた林檎の固めの食感とジャム、そしてパリッとした生地が最高だ。シナモンもふんだんに使われていて〝美味しい〟が舌だけじゃなく鼻からも駆け抜ける。うん、やっぱり今日食べれて良かった!


「美味っっしい!このアップルパイ私が今まで食べたのでも一番かも!!」

飲み込んですぐに感動を声に上げれば、ルベンからも「そうだろそうだろ!!?」と早口で合いの手が返ってきた。うんうんと思いっきり私からも首を縦に振りながら頷きまくる。

一口だけ、と思ったけど堪らずもう一口だけ囓ってからルベンに差し出した。両手が埋まっているルベンは、迷い無く直接私の口から残りのアップルパイを咥えた。私の手を避け、大きな口でアップルパイを咥えた後は器用に上を向いてパックンと口の中に収納してしまった。なんか、鳥が魚を丸呑みした時に似てる。

最初に馬車で旅を始めた時もそうだけど、やっぱりルベンって果物系の甘いものが好きなんだぁと思う。今度はチェリーパイとか林檎飴とかも見つけたら買ってあげよう。


「サウロは?何が一番美味しかった??」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◆◇コミカライズ連載中!◇◆


【各電子書籍サイトにて販売中!】
各電子書籍サイトにて販売中!画像

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ