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バベルの翻訳家〜就活生は異世界で出会ったモフモフと仕事探しの旅を満喫中!〜  作者: 天壱
Ⅳ.着地

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24.移住者は支払い、


「サイラス様より、前金の徴収に窺いました。ソー様に全額請求するようにとのことでしたので」


……はい。そうでした。

一気になんだか夢から覚めさせられたような気持ちで私はマットから立ち上がる。ルベンが「今の受付にいた女の声だろ?何て言ってる??」と尋ねるのに一言答えてから、私はリュックの中にしまっていた小袋を二つ取り出した。

一つはこの世界の通貨、もう一つはゴブリンさん達から貰った砂金だ。取り敢えずは通貨で払えれば楽だけど、この部屋の豪華さは通貨だけで払いきれる額か自信がない。夢の値段、といったらちょっとは素敵かもしれないけど。

基本的に御者のサイラスさんの分も御者代として滞在中の宿屋代は私が払うのが当初からの約束だ。


扉を開け、笑顔で待ってくれていたお姉さんに額を聞くとやっぱりなかなかの良いお値段だった。

私の通貨全部を出して何とか払えた額に、なんとか砂金で物々交換交渉はしなくて済んだ。これは外に出たら最初に換金所に行かないといけないなと予定を組み立て直す。

サンドラさんの街にはなかったけど、城下なら都会だしきっとある筈。今なら社会人がカード決済を重宝する理由がよくわかる。


支払いを無事終えた私は扉を閉め、満帆の砂金と金貨一枚だけになった小袋を両方リュックにしまい直す。

まだ貯金はいっぱいあるけど、通貨がなくなると少し心許ない。私の憂いを全く知らないルベンはマットに転がりながら「払えたかー?」と気楽な声を上げた。ええそりゃあ払いましたとも。


「ソーはすげーな!隣の御者はいつもと同じくらいの小部屋だったのに、こんな広い部屋借りれちまうんだから!」

いやどっちも実は私払いなんだけれど。

転がりながら自慢げに声を上げるルベンに少し苦笑いしてしまう。でもその話だとどうやらサイラスさんは自分の部屋までグレードアップはさせなかったらしい。支払っているのは私とはいえ、なんだかそれはそれで悪い気がする。また何か差し入れでも渡そう。


今度は何が良いかなと考えていると、急激にぐぅーとお腹が鳴った。反射敵にお腹を押さえたけれど、既にルベンもサウロもこっちを凝視していた。完全に聞こえた反応だ。

そういえばまだ朝ご飯は食べていないし、昨夜の夕食から考えると結構時間が経っている。こういうところって食事はどうなんだろう。こんなに豪華な部屋を用意できるなら料理も出そうな感じだけど、どっちにしろ頼むなら一回受付に降りないと駄目だ。

持ち込んだ荷物に非常食もあるけど、折角の城下一日目を馬車と同じ食事というのも味気ない。さっきお金の請求が来た時に思い出せば良かった。


「ちょっと食事について聞いてくるから待ってて。鍵持って行くね」

「ルベンも行く!」

「私も……」

がばっ!と、まさかの二人ともマットから起き上がった。別にちょっと出てすぐ戻るだけなのに!

小柄なルベンだとまだお手軽感があるけど、身体の大きなサウロがのっそのっそと起き上がるのを見ると何だかそこまで手間かけなくてもと思ってしまう。でも、全く私の意見もお構いなく歩み寄ってくるルベンとサウロに今更却下しても二人にとっては二度手間だ。

まぁ腰が重くない分は良いかと扉を開けて、私達は仲良く部屋を後にした。


「すみません、ここの食事ってどうなっていますか?」

サイラスさんには説明したかもしれないですけど!と断りながら、階段を降りた私達は早速受け付けのお姉さんに声を掛けた。ついさっきの今にまた話しかけてこられてちょっと驚いたのか瞬きを二貝繰り返したお姉さんはその後にまた笑顔で答えてくれる。


「お食事は別途料金で用意させて頂きます。お時間さえ指定して頂ければお部屋にお持ちします。宿の外にも飲食店はございますが、いかがなさいますか」

「部屋に運んで貰えるか、外で食べるか……ですか」

「まだ朝だし外で食おーぜ。どんな店あるか見てみてぇし」

「どちらでも構わない」

お姉さんの言葉を反復する私に、ルベンとサウロがそれぞれ返事をくれる。良かった、これくらいの阿吽の呼吸はできるようになった!


確かにまだ朝だしこの辺の店も見て回るのも楽しいかもしれない。それに換金所に行かないと通貨が無い。

お姉さんに換金所があるか聞いてみると、地図を出して丁寧に教えてくれた。幸いにも人間族の居住範囲内に換金所もご飯屋さんも服屋もある。

ついでにサイラスさんはもう部屋に戻っているか確認したけど、戻ってなかった。まだ馬に餌をあげているんだろう。

今までも基本的に時間関係なく宿に部屋取ったら爆睡だし、店巡りしているとも思えない。取り敢えずお姉さんにサイラスさんの部屋に食事と、運ぶ時間は本人に確認を取ってもらうことだけお願いして宿を出た。支払いは私付けにして貰ったし、これならサイラスさんも都合良いときに食事できる。


「サウロは斧を部屋に置いてかなくて良かった?」

「いや、要る」

またもや即答。

部屋を出た時からリュックを背負った私やバッグを提げたルベンと違って、斧片手のサウロだったけど本当に何処までも戦闘モードだなと思う。まぁその分サウロは他に荷物とかないし、そんなに本人には重そうじゃないから良いけど。武器屋とかあったら、もうちょっと運びやすい鞘とかケースを買ってあげよう。山の中ならいいけど、店の中とかでも剥き出しで持っていたらうっかり建物や商品を傷つけかねない。


その為にも先ずは換金所だ。

お姉さんに教えて貰った通りの道順を歩き、すれ違う店は早くも美味しそうな香りで鼻を擽ってくる。サンドラさんの所に負けない立派な街だ。出店も並んでいるけれど、居酒屋みたいなお店からちょっとお洒落なカフェっぽい店もある。なんだかちょっと元の世界っぽい佇まいだ。


すげぇ!美味そう!!あれ食おう!と声を上げるルベンに、今日は朝から久々のご馳走だなと思う。

でもそこでふと気になってサウロを見ると、やっぱりこっちはまだ緊張気味だった。ついこの間までは人間どころか他人と全く接して来なかったサウロにとっていきなりこの人間の数はちょっと怖いかもしれない。

実際はここにいる人達全員が掛かってきてもサウロ一人で余裕勝ちなんだろうけど。


「サウロ、大丈夫?」

「………………嗚呼」


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