クズ教師の腐った声
「私ちょっと行ってくる!」
「ちょ、待ってとわ!危ないよー!!」
華乃の声を背に受けながら、私は急いで中庭に向かう。
中庭に着くと、四人の男子が一人の男子を囲んでいて、囲んでいる内の一人の、リーダーっぽい男子が、その囲っている男子の胸ぐらを掴んで拳を握っていた。
「ちょっと!何やってるんですか!?」
私がその人たちに大声で言うと「やべ!」「ちっ!」とか言い、リーダーっぽい男子は胸ぐらを掴んでいた手を離すと、その男子の腹部を足で蹴って逃げていった。
「ううっ…」
囲われていた男子は、壁際で腹部を押さえうずくまりながら、小さな呻き声を溢していた。
「あの…大丈夫ですか?」
声をかけながら、うずくまるその男子に近づくと。
「なんで…進級してクラスも別々になったのに、なんでまだ僕のこといじめてくるだよ…」
(あんな頭の悪い奴らは、みんな死ねばいいのに…)
呻きながら、男子は声に出しそして心でそう呟いた。負霧が以前よりも黒く色濃くなっている。
(このままだと、本当にまずいな…)
男子の背後でもやもやと揺れる真っ黒い負霧を見つめていると。
「とわー!!先生つれてきたよ!」
「永久ちゃん怪我は?大丈夫だった?」
華乃と亜衣奈が声をあげながら駆けてきて、亜衣奈は私に勢いよく抱きついてきた。ふにゅんと、亜衣奈のやわらかいおっぱいが私の胸に当たる。思わず鼻血が出そうになったけど、今は鼻血を出してる場合じゃないと思い、ムラムラを抑える。
すると、2人の後ろから面倒くさげな顔をしながら、急ぐ素振りもせずに教師がこちらに向かって歩いて来た。
「なんだ~?いじめられてる生徒がいるって聞いたから来たのに、誰もいじめられてないじゃないか!」
「あ、あの、この人が男子四人に囲まれて暴力を受けてました!リーダーみたいな人が逃げる時に蹴るところも、私見ました!」
と、私が言うと「はいはい」とため息混じりに言いながら、うずくまっている男子に声をかけると。
「…あぁ木山、またお前か。大丈夫か?立てるか?」
口ではそう言いながら。
(ちっ、いじめられてんじゃねえよ、めんどくせぇなぁ…たく、俺の仕事の時間がお前のせいでムダに延びるだろうが)
と、教師は内心で舌打ちしながら言った。
(なにこの教師、サイテーなんだけど…)
うずくまる男子の体を片手で雑に起こしながら、面倒くさそうに声をかける教師を、私は軽蔑の眼差しで見つめる。
「ったく、なんでお前らは仲良くできないわけ?まあいいや、保健室行くか?」
教師がその男子に聞くと、男子はふるふると頭を横に振った。
「あっそ。まあ大丈夫そうだし、俺は仕事に戻ろうな。もうケンカするなよ~」
「ちょっと!もっとちゃんと話聞いたりしないんですか?!てか、あれはケンカじゃなくていじめ…」
「いいよ!」
華乃が怒り気味に声をあげながら教師に言うと、途中でその男子が遮った。
「あれはいじめじゃないから…だ、だからほっといてください!」
そう言いながら男子は、腹部を押さえながら走っていった。
「ふん、だとさ。そんなことよりお前ら早く帰れよ、そろそろ下校時間だぞ!」
教師は謎に勝ち誇った顔をしながら鼻で笑い、私たちにそう言うと去っていった。
「なにあの先生~…サイッテー。あんなのが教師とか、まじ終わってるわ」
「ほんと、ひどい先生だね…」
教師からは特に負霧は出ていない。ストレスとかじゃなく、もとからあんな性質の人間なんだろう。
「また」と言っていたから、これまでも何度か、あの男子がいじめに遭っているところを目撃しているのだろう。だけどきっと、今のように雑に対応して終わっているんだろう。
あんなのが教師をやってると思うと…虫酸が走る。
(あの男子の負霧、どうにかできないかな?いやその前に、いじめをどうにかしなきゃか…)
男子が走り去っていった方を見つめながら、そう思うのだった。