異世界スナイパーは缶コーヒーがお好き。
第四回なろうラジオ大賞参加作品第六弾!
依頼人によれば、半月前。
依頼人が通う学園に聖女が来たそうな。
この国の風習は知らんが。
依頼人の話では、この国では、瘴気が北東より流れ込む五十年おきに聖女――聖属性魔法に特化した女性が産まれるらしく、国はその女性を瘴気対策のために探して、そして見つけ次第、瘴気をどうにかできる実力を身に付けさせる為、依頼人が通ってる学園に入学させるそうだが……。
「コーヒーどうぞ」
「コーヒーどうも」
相棒が買ってきた缶コーヒーを受け取り、一口含んで俺は、木枯らしが吹く中を相棒と共に並び。
そして俺は狙撃銃を。
相棒は双眼鏡を手にし。
標的たる、その聖女へ照準を合わせる。
「距離四三二八m。風速三m。追い風。発射修正角度四分半」
すぐに修正。
狙いは聖女の首元……十字線がそこを捉える。
遠距離狙撃は二人組の方が効率良い。
一人では分からない部分をすぐ補える。
「照準良し」
「撃て」
直後、消音魔法で発射音を消され魔弾は放たれる。
そしてそれは、狙い通り聖女の首元へ。
聖女が張っている結界とかあるらしいが、それについては魔弾に聖属性の魔力をコーティングしたため楽々突破。
俺の放った魔弾は見事に聖女の首元に命中。
しかし聖女の首から血は流れない。当然だ。
魔弾は極小の針で、命中後は血液に溶ける特別製。
さらにその針には、その聖女にとっては嬉しい特典が……おっと、早くも効果が出たな。
突如彼女の周囲にいた男性――彼女が籠絡した貴族令息や騎士団長の息子が豹変し、彼女を押し倒し、服を強引に破るように脱が……これ以上は見ちゃいられないな。
依頼人が俺達狙撃屋にした依頼は暗殺ではない。
依頼人の婚約者を始めとする令息を籠絡し輪を乱す聖女と、自分達を捨てた令息を失墜させてほしいというモノだ。
そしてそのために、俺は特製の魔弾を生み出した。
着弾者の魅力を極限まで。それこそサキュバス並みに高める魔弾を。
これを受けた者を前にした異性は、全てを出し切るまで正気には戻らない。
ちなみに、彼女らがいるのは学園内の一室だが、そこにはあらかじめ、依頼人を始めとする聖女に婚約者を取られた令嬢の張った結界があるため音は外に出ない。
聖女は心ゆくまで濃厚な逆ハーを楽しめるってワケだ。
「全く。逆ハーのどこが良いんだか」
俺の相棒――奥さんが溜め息を吐く。
「全員落としても、最後は一人を決めなきゃなのに」
「全くだ」
俺も溜め息を吐いた。
「というかそれ以前に、ハーレムなんて疲れるだけだ」
いやホント。
逆ハーを狙っている、一部の脳内お花畑系の正規主人公は、原作ゲーム内のシナリオの後の事を考えているかねぇ?