第二話 レベル
展性、それは
金属の物理的性質の一つであり、弾性の限度を越えた圧力・打撃によって、破壊されずに箔に広げられる性質の事。
つまり……今の俺は展性金属である…ということか?
自分を見ると白い石みたいな体になっていた。
たしか、タルクには展性なんて無かったはずだ。
あの神様は「転生」を「展性」と間違えて俺を展性のタルクにしたということか?
待て待て待て!
俺は異世界に転生して勇者とか賢者とか、最悪それ以外でも良いからなんか最強っぽいやつになって無双して、女の子にモテモテが良かったのに……
ふざけんな!石で最強になれってか!?
モテモテになれってか!?
己の今後に絶望感を抱く。
……そもそもこの世界はどうなっているんだ?
てっきり剣と魔法の世界かと思ったのだが、石であるはずの俺が考えて動ける時点で予想してた世界とは明らかに違う。
そういえば、さっき見たステータス。
あれにはパワーだの防御だのと色々書いてあったが……
もしかしてこの世界って本当に剣と魔法の世界みたいだったりする?
特性で耐熱と展性とあったな……
ちょっと試してみるか!
耐熱は試しようがないが、展性ならなんとかなるだろう。
近くに壁に向かって思いっきり突進してみる。
すると、衝撃で自分の体が平べったくなった。
(おお!これが展性か!)
意識してみると体を薄く引き伸ばしたり出来る。
なんだこれ面白い!
そうして遊んでいると、目の前に自分と同じ形の石が現れた。
(こいつも俺みたいに喋れるのか?)
「あの〜、もしかして喋れたりします?」
話しかけてみたが返事をしない。
かと思ったらいきなり体当たりしてきた。
(うおっ!)
いきなり敵意丸出しだな……
展性のおかげでダメージもI減っただけで済んでいるが……
それなら俺も容赦せんぞ!
もう一度とばかりに突進してくるタルクにカウンターを食らわせてやる。
(どっせい!)
タルクは耐熱性は高いが、硬さが足りない。
俺は展性のおかげでダメージ量が少ないが、今目の前にいるコイツは別だ。
俺の一撃でコイツの体もいくらか崩れた。
しかし、腐っても鉱物。
それだけでは死なないようだ。
いや、鉱物が死ぬというのもおかしな話だが……
ボロボロになっても同じ行動を続けて、俺に向かってくる。
悪いけど……そんな突進じゃいつまで経っても俺は倒せないぞ。
何度かカウンターを繰り出すことでようやく倒せた。
「……動かなくなったな。もしかして死んじゃったのか?」
すると、頭の中に声が響く。
(レベルアップしました)
「うお!なんだぁ?」
レベルアップか……とことんゲームみたいに出来てるな。石でさえなければ……
(レベルが2に上がりました。スキルポイントをIポイント獲得しました)
スキルポイント?
(それはなんですか?)
心の中で聞いてみるが返事はない。
仕方ない。もう一度ステータスを見てみるか……
名前 無し
種族 タルク
レベル 2
HP 11
パワー 2
防御 55
素早さ 2
特性
展性
耐熱(弱)
スキルポイント I
本当だ。スキルポイントなるものが追加されてる。
時々漫画やらゲームやらでみる設定だが……これを集めればスキルの獲得が出来るのではないか?
どうやってスキルって獲得できるのだろう?
「スキル!獲得!」
適当に叫んでみたらステータスの中に新項目が追加された。
スキル一覧が。
「おお!これは……やっぱりスキルってポイントを消費して獲得するんだな!」
何々?
忍足 5ポイント
耐久 2ポイント
剛腕 2ポイント
疾走 4ポイント
火魔法 10ポイント
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めっちゃ色々あるな!
というか魔法もあるのか!欲しいなぁ……
そんな風にスキル一覧を見ていくと、ある一つのスキルが目についた。
成長 20ポイント
なんだこれ?
ポイントが馬鹿多いな……
もしかして獲得するとステータスの増加量が増えるとか?
なんとなくだが、コイツは早めに取っておきたい。
成長強化系のスキルって初期に取るほど効果がよく現れるんだよなぁ……
でも20ポイントねぇ、それ取る暇があったら他のスキル獲得した方が良くない?
やはりスルーしようと思ってスキル一覧の下の方を見る。
………………………
鑑定 3ポイント
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おお!みんなお馴染み鑑定があるぞ!
これがあれば色々分かるかもしれないな…
ちょっとポイント多めだが、絶対取らねば……
俺は積極的に同族を狩ることにした。
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