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魔王にならないかと言われた

全く意味が分からない。魔王になれ?この雑魚ステータスの俺に?


「あ、君が雑魚ステータスだってのは知ってるよ。私達の力で何とかできるかも。」


なんだって?


「それは本当か?」


「かも、だからね。それより、どうする?魔王になる?」


今ここで魔王になると言っても、何も知らないクラスメイトが俺のことを探しに来るかもしれない。かといって断っても、このままずっとこの雑魚ステータスで生きるかと言われたら、とても無理だ。


「考えさせてくれ。締め切りは今夜俺が外に出た時だ。」


「あ、待つ?いいよ。じゃ、今夜までに決めておいてね~。」


そう言うと薔薇の魔王、ローズは裂け目を使って何処かへ行ってしまう。


「さて、魔王になる、か…。」


実質悪い話ではないが、いくつか問題がある。まず、このステータスだ。魔王達がどうにか出来ると言っても、今の俺の頭脳のようにすることはいくら魔王でもおそらく不可能だろう。それにかも、なのでどうにか出来るという保証はどこにもない。次に魔王になるということはクラスメイトを、つまり人間を敵に回すということだ。魔王達を信頼していない訳ではないが、相手は人間。しかもかなりの力を持った人間だ。クラスメイト以外にも力を持った人間は沢山いるだろうし、魔王達は大丈夫だろうが、俺はこのステータスだ。真っ先に狙われるだろう。どうすればよいのか…。


「やることも無いし、夜まで考えておくか。」


次々と出てくる問題に嫌気がさした俺は夜まで考えておくことにした。



~夜~


「疲れた~!」


「もう腹がスカスカだぜ~!」


クラスメイト達が帰ってきた。皆まだレベルが低いからか、ぼろぼろだ。


「お?なんだあのでかい黒板みたいなやつは。」


「あれは掲示板みたいなものだよ。なんか書いてあるし、ちょっと読んでみるね。」


面倒なことをする。俺はスキル、解析のお陰で普通に読める。


《スキル、解析がレベル上限に達しています。スキル、鑑定に変換可能です。変換しますか?》


いきなり声が聞こえてきた。よくあるお告げというやつか?それより、スキルはレベル10が上限なのか。鑑定は確かかなりいいスキルだった気がするな。俺もネットサーファーだから分かるが、鑑定は誰もが喉から手どころか足まで出てくるほど欲しいスキルだ。もちろん俺は、


《イエスだ。》


変換を選んだ。


《解析を鑑定に進化させます。》


俺の体から光が溢れる。スキルが変換されるときはこのように光が体を包むようだ。


「斬斗が光った?!」


「何かしたのか?!」


スキルを変換したと言ったら面倒なことになりそうだ。


「いや、俺も良く分からない。」


「なんだよ…。」


「つまんね…。」


それより板の文字を読まなくてはな。スキル、鑑定。


東夜大翔(あずまやそら) 竜騎士(ドラグナー)


岩凪雅人(いわなぎまひと) 拳闘士(グラップラー)


羽田咲花(うたさな) 魔剣士


江巻夏菜(えまきかな) 医者


小河原甲斐(おがわらかい) 船長


上盛篠(かみもりしの) 僧侶


霧野実心矢(きりのみしんや) 魔導師


釘原拓(くぎはらたく) 錬金術師


気崎山藍(けさきやまらん) 魔法戦士


古賀松勇太(こがまつゆうた) 暗殺者(アサシン)


相模夜琥珀(さがみやこはく) 野伏(レンジャー)


霜霧唯(しもきりゆい) 幻術師


澄桐葵(すみきりあおい) 弓使い(アーチャー)


星羅斗正幸(せらとまさゆき) 神官(プリースト)


空道愛理(そらみちえり) 薬師


田南吉良晴輝(たなきらはるき) 聖騎士(パラディン)


地実輝杏(ちみきあん) 魔物使い(テイマー)


辻山斬斗(つじやまきりと) 分析者


寺海直哉(てらうみなおや) 海賊(バイキング)


寅北未琴(とらきたみこと) 盗賊


七倉優花(ななくらゆうか) 司書


新空行雄(にいぞらゆきお) 傭兵(ハイランダー)


沼澤七海(ぬまさわななみ) 司教(ビショップ)


根唐木瀬南(ねからぎせな) 諜報員(スパイ)


野木口光(のぎぐちこう) 狂戦士(バーサーカー)


羽月明(はねつきあきら) 戦士


緋色野香(ひいろのかおり) 女戦士(アマゾネス)


古実山夏海(ふるみやまなつみ) 精霊使い


平良口祐介(へらぐちゆうすけ) 重戦士(アーマー)


堀廻彩(ほりまわりあや) 学者


牧幕勇二(まきまくゆうじ) 賢者


宮三木葉(みやみつこのは) 巫女


夢道大輔(むどうだいすけ) 狂騎士(ベルセルク)


目良崎春(めらさきはる) 料理人


盛瀬寛太(もりせかんた) 鑑定人


山蔵咲(やまくらさき) 吟遊詩人


雪夏一輝(ゆきなつかずき) 剣聖(ソードマスター)


与一野舞(よいちのまい) 踊り子(ダンサー)


来骨壮太(らいこつそうた) 鍛冶屋


陸橋優里(りくはしゆり) 祓魔師(エクソシスト)


流浪崎治(るろうさきおさむ) 侍


零口涼子(れいぐちりょうこ) 死霊魔術師(ネクロマンサー)


呂月花六花(ろがつかりっか) 近衛兵(ロイヤルガード)


和倉瀬俊明(わくらせとしあき) 守護者(ガーディアン)


あの板には俺らの名前と職業が刻まれていたのか。あまり重要でもないが、鑑定の試運転には最適だったな。しかし、俺の高校が一学年三クラスとは言え、44人は多いな。結構時間が経った。


「皆様、お疲れ様でした。ではそろそろ、食事を始めたいと思います。それでは、皆様の召喚成功、レベル上げ成功を祝って!」


「「「「「「乾杯!」」」」」」


この世界にも乾杯の習慣はあるのか。俺にとってはどうでもいいが。さて、約束の時間だ。俺は魔王に会ってくるとしよう。


しかし、俺はこの時影で尾行している存在に気付かなかった。


「…あいつ、こんな大食事会に何で外に出ようとしてるんだ?」



―――――――――――――――――――――――――――



「待たせたな。ローズ。」


裂け目が出てくる。


「私がいるってよく分かったねー。」


「魔王は約束を守る。必ずな。」


魔王は非道なのもいるが、約束はどんな形でも守る。俺の経験からの論だ。


「で、決まった?」


「ああ。」


俺は少し間を置く。


「俺は魔王にはなれない。」


「そっかぁ…。」


「だが、魔王のアシストをさせて欲しい。」


魔王にはならなくとも配下なら、必要以上に狙われることもないだろうし、魔王の手助けも出来る。このステータスは魔王には相応しくないが、配下ならとても役に立つ。


「え?それって?」


「俺はあんたら魔王に仕える。ただ、出来れば下っぱからじゃなくて、幹部からにして欲しいけどな。」


ローズが目にも止まらぬ速さで抱きついてくる。


「するする~!魔王になる方より嬉しい答えをありがと~!」


魔王の突進は威力がバカにならない。実際、俺は今おそらく瀕死だ。


「ぐふっ…。」


「ああ~!ごめん!今回復してあげるから!」


ローズが回復魔法をかける。楽になってきた。


「じゃ、他の魔王たちにも会おっか。」


俺はローズの作り出した裂け目に入ろうとする。


「魔王だー!魔王が現れたぞー!」


城中から響く警鐘の音。そして大勢集まってくる兵士の足音。


いつの間に、俺らは囲まれていた。


「斬斗!」


「斬斗君!」


その中には、クラスメイトもいた。


「よりによって最悪ですね…。薔薇の魔王、ローズ・ヴェリアルだなんて…。」


王女が何か呟いている。


「薔薇の魔王、警告します。今すぐその方を離しなさい!」


「なんでかな~?斬斗君は渡さないよ~?」


ローズは何時もの口調でのらりくらりと話す。


「何故です!」


「だってぇ~、斬斗君は私達のものだからねぇ~。」


「王女様!これ以上奴と話しても無駄です!攻撃の指示を!」


「駄目です!あそこには斬斗様もいます!今攻撃したら、間違いなく巻き込んでしまいます!」


さて、どうするか。俺とローズは裂け目で普通に逃げられるが、何も知らないあいつらは俺が拐われたと勘違いする。そうなるとあいつらが俺を探しに来るのは必然。面倒に巻き込んでしまう。


「王女様!何故薔薇の魔王が最悪なのです?!」


「…薔薇の魔王の元々の名は生命の魔王。生命の魔王は、生命を与えることができます。しかし、その逆を考えれば生命を奪うことも可能なのです。攻撃されれば必然、触られただけでも私達は死んでしまうでしょう。」


ローズ…お前それほどまでにやばい魔王だったのか…。


「さ、帰ろうか。」


「させるか!」


クラスメイトが数人飛びかかってくる。


「おっと、ここは君の出番だよ。斬斗君。」


そう言われると、体の奥底から力が沸き上がってくる。試しに俺は思ったことを実行した。


「結界。」


俺とローズの前に結界が現れ、クラスメイト達を拒絶する。


「斬斗!何で邪魔をする!」


「そうだ!俺達は仲間だろう?!」


クラスメイトと言えど、ほとんど話したことがない奴に言われた。それだと何と言うか、何も思わない。


「仲間、か。じゃあ質問だ。クラスメイトの中にステータスが雑魚な奴がいる。そいつはスキルも雑魚で戦闘では全く使い物にならない。そいつのことをお前らは仲間と思えるのか?」


「そ、それは…。」


クラスメイトが黙る。やはり、こいつらも同じだ。


「俺が邪魔をするのはそれさ。」


「っ?!まさか斬斗!お前?!」


「さあな。それはお前らで考えろ。」


「お別れは済んだ?」


ローズが聞いてくる。


「ああ。思い残すことはない。」


「じゃ、行こっか!」


俺ら二人は裂け目の中に入っていく。


「待て斬斗!戻ってこい!」


「お前が雑魚でも、俺達はお前の仲間だ!」


「お前が頼むなら、いくらでも助けてやる!」


クラスメイトが必死に結界に攻撃しているが、レベルの低いあいつらでは破るのは到底無理だ。


「さらばだ。」


俺は捨て台詞を吐く。そして裂け目が閉じる。



―――――――――――――――――――――――――



「くっ…!逃がした…!」


「斬斗…俺らがいないところであんなに悩んでいたなんて…。」


クラスメイトからはそれぞれ後悔の声が出る。


「皆様。」


冷酷な声で王女が言う。


「国家命令です。反逆者、辻山斬斗を捕縛、または殺してください。」

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