異世界召喚されるみたいだ
「うわっ?!なんだこりゃ?!」
「ちょっと何これ!」
「異世界召喚とか聞いてないよ?!」
俺ら3年1組は、授業中に異世界召喚されようとしていた。こうやって主人公含むクラス全員が召喚されるというのはよくある話だ。クラス全員を異世界召喚するというのは、よっぽどのことがない限り、あちらでもしない。
「っと、冷静に分析してる場合じゃないな。」
「「「「「その態度で言うな!!!」」」」」
クラス数人に突っ込まれた。まあ、他はそれどころじゃないんだろう。こうして、俺ら3年1組は異世界召喚された。
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「ようこそいらっしゃいました。召喚者様。」
王女らしき人物が、俺らに挨拶をする。大体の奴等はきょとんとしているが、数人喜んでいる。
「皆様にはそれぞれ職業とスキルが付与されております。女神様からのご加護です。」
数人が驚いたような素振りを見せる。あいつらは…自分のステータスを見てるのか。俺が少し見えたのは、
羽月明 Lv1
職業 戦士
ステータス
HP100
攻撃力10
防御力8
魔力3
魔術耐性5
回復力1
素早さ4
頭脳2
スキル
勇敢 Lv1
攻撃力強化 Lv1
固有スキル
早熟
極スキル
魔物殺し
上盛篠 Lv1
職業 僧侶
ステータス
HP90
攻撃力3
防御力4
魔力6
魔術耐性7
回復力10
素早さ8
頭脳5
スキル
祈り Lv1
回復力強化 Lv1
固有スキル
精霊の守り
極スキル
加護
霧野実心矢 Lv1
職業 魔術師
ステータス
HP70
攻撃力2
防御力2
魔力10
魔術耐性9
回復力1
素早さ9
頭脳8
スキル
魔術強化 Lv1
魔力強化 Lv1
固有スキル
魔力操作
極スキル
魔力解析
ふむ、よくあるやつだな。俺は…?!
辻山斬斗 Lv1
職業 分析者
ステータス
HP3
攻撃力1
防御力1
魔力1
魔術耐性1
回復力1
素早さ1
頭脳1000
スキル
解析 Lv10
分析 Lv10
固有スキル
頭脳以外全能力超弱体化
極スキル
頭脳極限強化
…なんだこれは。ステータスを全て頭脳に全振りしたようなステータスは。まだLvが低いからステータスが低いのは分かる。攻撃力などに特化していない戦闘向けではなさそうな職業であることは分かる。…だとしてもこれは酷くないか?頭脳以外全て1だと?頭脳以外全能力超弱体化が関係してるのか?超が付く程だからな…。
「お前の職業何だったー?」
「えー?俺は…。」
わざわざ聞かなくても、自分から見ればいいだろうに。…いや、待てよ?俺はあいつらを見ただけであいつらの職業やスキルが分かった。しかしあいつらは聞かないと分からない。つまりだ。俺が他人のステータスを見ることが出来るのは、分析者という職業だからか?
しかし…これはハズレ中のハズレだな…。HPが3だから、魔物の攻撃を少し受けただけでも死ぬ可能性がある。防御力も無いに等しいので、実質俺はどんな魔物の攻撃でもワンパンだ。素早さも無いから行動速度は期待できない。攻撃力も無いので前線での戦いはほぼ不可能。ましてや魔力も無いので、補助魔法や回復魔法など、サポートも出来ない。唯一出来るとすれば、敵の情報を見抜き、弱点などを味方に教える。
だが、その他に何が出来る?戦うことは愚か、冒険に行けるかも分からない。ステータスがこんなに低い奴を連れていけば、足手まといになるのは確実。俺は、召喚して能力を与えた女神様とやらから見捨てられた存在なのだ。
「皆様。この世界は恐ろしい魔王により、支配されようとしています。私らも、手を尽くしたものの、全くと言っていいほど効果がありませんでした。皆様には、異世界から召喚された者として、魔王と戦って欲しいのです。」
皆がざわつく。そりゃそうだ。事情もよく分からないまま、ゲームで言うラスボスの魔王と戦わされそうになっているんだからな。
「勿論そのまま魔王と戦えと言っているのではありません。皆様には、これからレベルを上げていただきたいのです。」
確かに魔王戦においてレベルは大事だ。レベル1ではまず勝てない。幼い子供が格闘技チャンピオンに挑むようなものだ。
「レベルの上げ方は簡単です。魔物を倒す。これだけです。魔物が強ければ強いほど、レベルは沢山上がります。」
ゲームっぽい要素が出てきて、一部が意気込む。
「これから皆様には、朝から昼は自主でレベル上げ、夜は豪華な食事をいただいてもらうという生活をしていただきます。レベルが沢山上がっている方から、食事をしていただくことにするので、是非頑張ってください。」
話が急すぎるのに、俺以外のクラス全員が出ていく。豪華な食事という単語に釣られたんだろう。
「おや?あなた様は行かないのですか?辻山斬斗様?」
「…お前に名乗った覚えはないぞ。」
「私達、召喚する前に人物の名前を全て覚えておいたので。」
なるほど。…準備が良すぎる気がするがな。
「そして、斬斗様は行かないのですか?」
「こんな奴にレベル上げをしろと言うのか?」
俺は自分のステータスを王女に見せてやる。王女は驚いた顔をしていた。「こんなの女神様に聞いていない…」とかほざいている。俺は異世界で生きれる可能性0のステータスで、内心怒りが頂点に行っていた。
「で、でも!レベル上げをすればステータスは…。」
「俺が無傷で倒せる魔物がこの世にいるのか?」
「そ、それは…。」
王女は何も言えなくなる。
「で、でも!斬斗様だって、皆様のサポートくらいは出来ます!分析者なら、魔物のステータスを読み取って、弱点などを伝えるなど…。」
さっき俺が考えたことと全く同じだ。
「じゃあ、それ以外に何が出来る?」
「え?それはー…えー…その…。」
「結局出来るのはそれだけだ。それが終われば俺は戦う能力もないので戦闘を見ているしかない。それを魔物に知られたら、俺が狙われるのは確実だ。その結果、俺は味方に手間をかけさせて、邪魔な存在にしかならない。」
王女は何も言えないとばかりに黙る。
「俺の願いはただ一つ。日常を返すこと。魔王をあいつらに1秒でも速く倒させて俺を帰らせろ。」
「は、はい…。」
王女の力無い返事。それは若干の躊躇を含んでいた。
「まさか魔王を倒してからもずっと俺らに守ってもらおうとか考えているんじゃないだろうな?」
「そんなことは…。」
「無いとは言い切れないのか。まあいい。俺は外に行ってくる。」
俺は憂さ晴らしに外に行く。さて、俺の究極雑魚ステータスを知った王女はどうするのかね。
―――――――――――――――――――――――――
「風が気持ちいいな。」
俺は無意識に呟く。城の周りは町で囲まれ、その周りには森がある。
「こんな平和そうな世界に魔王が本当にいるのか?」
「いるよー。」
後ろから声をかけられた。どこか抜けた声だが、不思議なことにこの声の持ち主はヤバいと、俺の本能が警報を鳴らしている。俺はゆっくり振り向いた。そこには、かなり大きめの女性がいた大きめと言っても、女性の中ではだ。実際、身長は俺と同じくらいだ。
「君は見た感じ、異世界召喚者だね。私はローズ・ヴェリアル。またの名を、薔薇の魔王。」
薔薇の?言い方が引っ掛かるな。
「もしかしてお前以外に魔王がいるのか?」
「鋭いねぇ。いるよ。私を合わせて6人のね。」
これは駄目だ。とてもとは言えないが、俺らの勝機は無い。声だけで、雑魚と言えど異世界召喚者の俺の本能が警報を鳴らすほどだからな。。
「具体的には?」
「煉獄の魔王、嵐の魔王、常闇の魔王、聖光の魔王、水簾の魔王、そしてこの私薔薇の魔王。」
「何故そんなにいるんだ?」
「私らはね、世界の創設者なんだ。」
何だと?!魔王が世界を創った?!
「普通ならあり得ない話でしょ?でもね、私たちなら出来るんだ。私達の力は、世界を創るのに最低限必要な物なんだ。水が無ければ生物は生きられないし、火がなくても生物は生きられないし。」
確かに水は生物が生きる上での最低条件だ。火。つまり暖が無ければ、俺らは寒さに凍えて死に絶えるのみ。
「嵐が来るから植物は生きられて、昼があるから動物は活動できて、夜があるから生物は休める。」
「ちょっと待て。ならお前は何だ?」
「私は元々生命の魔王だったんだけど、生命だったら魔王っぽくないでしょ。だからその時私が好きだった薔薇の花から薔薇の魔王ってことになったんだ。」
確かに生命はどちらかと言えば神か精霊だが…。聖光の方が魔王らしくないと俺は思うがな…。
「私達は、暇潰しで世界を創っちゃったんだけど、それが神の逆鱗に触っちゃったみたいでさ。神は人間という種族を作って、私達に魔王という肩書きを植え付けて、私達を殺そうとしてるんだ。」
暇潰しで世界は創るものではないがな。そりゃ勝手に世界創られたら神だってキレるだろうな。
「んで、何故俺のところに現れた?」
「たまたま通りかかっただけだよ?」
「嘘だな。魔王であるお前が無闇に歩くことはしないはずだ。ましてや、敵が大量にいるこの城の庭でな。」
俺が魔王なら、散歩はするかもしれないが、わざわざ敵の陣地に飛び込むようなことはしない。
「…やっぱ鋭いなぁ。そうだよ。私は君に用があって来たんだ。」
「その用とはなんだ?」
「ここまで来たら分かるんじゃないのかな。どう?魔王にならない?」
「…は?」