友達だった人
友達とは何か。
それは他人がいるから成り立つ「関係」
それは時に崩れる関係。
仮に僕が友達と信頼しても、相手は知り合い程度としか考えていない場合がある。
結局のところ、「友達」とは信用性の無い識別するだけの言葉である。
「何見てんだよ!」
僕は背後から腕をカッターで切りつけられた。
ふと振り向くとそこには以前まで仲良くしていた友達だと思っていた佐野晶だった。彼は中学からずっと同じクラスで唯一信頼出来る友達だった。
「った...何するんだよ晶くん...」
「さっき、見てたよな。」
晶君が言っていたのはカツアゲをしている不良のことだろう。それをすぐ察し、見てないと嘘をついた。
「お前、次見たらこんなんじゃ済まねえぞ。」
ゾッとした。
以前まで唯一の理解者だった晶君が僕を切ろうとは思ってもいなかった。
驚いたが悲しさからか涙がこみあげた。
そして僕は、走って逃げた。
少しすると休み時間の鐘が鳴った。
僕は担任の浅野先生を頼り職員室へ行った。
「先生っ!」
先生は上の空だった。
「あの、実はさっき...同じクラスの晶くんにやられました...」
大まかではあるが事情を説明した。
具体的な頼みはないが口で注意するなり親に連絡するなりして欲しかった。
だが返ってきた返事に絶望するだけだった。
「そうか、気をつけろよな。」
おかしい、先生なら助けてくれるはず。なんで何もしてくれないんだ。
あの時の僕が言っていた「悪のない世界」とは全く違うじゃないか。
気づくと僕の頬は濡れていた。
涙が止まらないのだ。
こんな世界に戻るくらいならあの時死んでしまえばよかったのに。なんで僕は僕を止めたりしたんだ。何故生かすんだ。
「それが君のやることだからだよ。」
どこからか声がする。
あの時の僕だ。
「知ってる?僕らが思う悪って言うのはさ、あくまで人間が決めた尺度でしかないんだよ。
それは他の動物とかにはあるのかな?人間の悪は人間しか判断できない。犬や猫の言葉が分からないのと一緒さ。」
要は僕の思う悪は悪じゃない。そこに正義がない限り悪は悪と認識できないという訳だ。
だからここで先生が晶君を注意しないで目をつぶったから僕の腕の傷は罪ではない。
だれも否定出来ないこの世界こそが「悪のない世界」
もうこの世で僕の味方はいないのだろうか。
救ってくれる人はいないのだろうか。
でも、諦めたらダメなんだ。
僕が生かされた理由を考えろ。
僕がやらなきゃ行けないことを考えろ。
そう考えているうちに体は動いていた。