第六話
「はー、食った食ったー。」
「僕もお腹いっぱいだよ~。」
「あっ、兄さん要さん、僕は先に教室戻ってもいいですか?そういえば、次体育だった気がするので。」
「ん、さっさと行かなきゃ、こんな時間だし遅れんぞー?」
時計を見るとあと十分で休み時間が終わってしまう。
「えっ、あっほんとだ!それじゃあ!またね兄さん!後、またお願いします要さん!」
「んっ、おうっ!またなー、って行っちまった。はあ……いやー、昼休みのはずなのにちょー疲れたんだが、?」
「はあ、僕もだよ……というか全体的に秀のせいなんだけど?ほんっと、記憶はないけど、案外似てんのかもね~?」
「んん?でも俺が聞いた話だと昔のー、あー……佐嶋様の方は俺様でカリスマらしいじゃん?どう考えても似てねーだろ。」
「いやいや、そうでもないよ~?まっ、僕もそんな知らないしー、もっと知ってそうだったらやっぱりファンクラブの――――」
「佐嶋様!」
「あー、噂をすれば、だね~。」
「佐嶋様、隣の……君は三ツ木君?どうして君が佐嶋様と?すまないが、少し退室してくれないか?僕は佐嶋様と少し話が……」
「んー、それはいいんだけど、時間、大丈夫?」
「ああ……そうだな。」
え、えっと俺の知り合いっぽい??いやでも全然わからん!ああ、どうしよー、うえええ、
「あっ、えっと……ごめん俺今……」
「記憶喪失でさ……」「記憶がないんですよね?」
「えっ、?」
「今回の話はその事なんですが……まあ仕方がない。では次の休み時間に伺います。それではまた、」
そういうと、少年はすたすたと早足で去っていってしまった。ええ……?言うだけ言って、帰っていった……って!ああ!!時間、!
「やっべ!おい、走るぞ要!」
「えっ、あ!待って、走っちゃダメだよ!」
あんなにあったはずの残りの休み時間が3分をきっている。俺達は早足で教室へ急いだ。
◇◇◇◇◇◇◇
五限が終わると、宣言通り少年が俺達の元へとやって来た。
「あ、ほんとに来たんだ。」
「とりあえず、時間削減のためにさっさと本題へ生きましょう。この際、三ツ木君も聞いてもらった方が早いかもしれませんし……。佐嶋様、僕達ファンクラブにも佐嶋様の記憶喪失の話は来ています。現状、どうにかなるというわけではないのですが、一応今日からが初登校ということで、挨拶に来ました。」
「挨拶?」
「はい。ひとまず、僕の名前やファンクラブについて、など。他、質問などがありましたら出来るだけ答えるつもりです。」
「へ~?ふーん……あっ!そうだ、秀聞けば?佐嶋様のこと。」
何でお前が興味津々なんだ……?まあ、でもそれはいいかもしれない。俺はまだ全然昔の俺について知らないし、それに俺は、ほんのすこしでも俺の体で過ごしてたやつのことをもっと知らないといけないと、思ったりもしなくもない……多分……?なんとなくだけど。
「とりあえず、僕の自己紹介からしましょうか。佐嶋様のファンクラブ会長の、松嶋夏樹です。本当は副会長の八尾木も一緒に来るはずだったのですが、まあ……そこはいいです。」
俺のファンクラブの会長らしい松嶋さん。よく見ると、なんだか睫毛も長いしすっげーカッコいい顔をしている。この人が会長……?むしろファンがいそうな顔なんだが!ファンクラブ、ファンクラブかあ……あー、てかファンクラブってなに?
「ファンクラブは僕が説明してあげるよ。まー、ファンクラブっていうのは、ざっくり言うと、好きだ~!ってすっごく思われる、モテモテな男の子が、トラブルにならないように、好きだ~!って思ってる人達でグループをつくることだよー。」
んー?、なー、なるほ、ど?んん?
「ざっくり過ぎるでしょう。はあ……相変わらず説明が下手ですね。詳しく説明しますと、僕達ファンクラブは、佐嶋様を慕い、支えたい者達が集まっています。好きの度合いはこの際置いておいて、“支えたい”という点で、僕達はいろいろなサポート等をするためにこの団体を作りまし……あー…………と、僕は思っています。副会長の八尾木はどちらかというと慕う気持ちが強い奴ですし、案外ファンクラブ会員の大半もそういう方が多いかもしれません。ですが、僕達は佐嶋様を支えるべく行動しています。佐嶋様、今回の記憶喪失ですが、きっと佐嶋様の方でも混乱は多いと思います。僕達はそんな佐嶋様の不安を少しでも払拭したいと、こうしてやって来たわけです。つきましては、始めに……」
「はーい!ストップ~!松嶋君、ここら辺で止めてくんない?秀がフリーズしてるよ!おーい、秀~?」
……………………ハッ!いけねえ、長すぎてよくわかんなかったッ!
「いや、なんかごめん……俺馬鹿だから、もっと短くしてくれると……」
「松嶋君ごめんね。ふふっ、秀っておバカだからさ、長い話だと頭パンクしちゃうみたい。」
「佐嶋様……やはり噂通り凄く変わられた。でも………いややめておきます。そうですね、簡単に説明しますと、僕達は貴方の味方だということです。」
「まっ、当たり前だよね~。だって秀のファンクラブだもん。」
「はい。当たり前の事ですが、佐嶋様には一番これが理解しやすいと思ったので。」
「ふーん、まあ、いーんじゃない?秀、わかったー?」
「んー……正直わかったのは、わかった、?と思う。」
「ホントにわかったー?てゆか、わかってもらえないと話進まないか、!よし、わかったってことにしとこーう!ね?わかったよね?」
「お、おう!」
「ありがとうございます。と、言いましても話は今日はこのくらいだけなのですが……また後日副会長の八尾木と共にやって来ますので、またお願いします。他に、何か質問等がありましたらお答えしますが……」
「あっ、あのさ!昔?の俺の事について教えてほしいんだ!ほら……俺記憶喪失だからさ、そのー……めちゃくちゃ頭良くて俺様なカリスマ会長時代の俺ってどんなだったのか気になるっていうか……」
「そうですね……会長は、言うなれば、凄く孤独でした。」
「孤独?」
「はい。弟さんともあまり仲がよろしくないようでしたし、それになんだか寂しそうでした。まあ、僕達ファンクラブも嫌われてたようで、あまりお話もしてくれませんでしたしね。こんなこと言っては何ですが……………今の会長の方が僕は好きです。」
孤独……寂しそう?うーん……なんだか俺の聞いた佐嶋様と全然違うんだが。俺様でカリスマ性のある頭のいい奴だけど孤独で寂しがりや?……うーん…………わからん!
なーんかごちゃごちゃしてっし、難しい!
「んー、んー?んー……なんか、昔の俺ってごちゃごちゃしてるんだな、」
「僕も意外だったかもー。へぇ~、あの会長が孤独ねえ?あー、でも、言われてみればそうかもね~。」
「ははっ、佐嶋様はプライドが高い方でしたから、言われないと気づかないかもしれないですね。ああ、それじゃあ、僕はもう行きますね。また後日。お願いします。」
「ん?おう!もう行くのか、」
「はい。次の授業がもう始まりそうなので。」
ん?っと思って時計を見たら、ホントだ!もうすぐ休み時間が終わる。は~……時間流れんの早いな~。って、松嶋さんももう行ってしまった……
でも、それにしても昔の俺凄い奴だったんだな~。ファンクラブもあって、なんかごちゃごちゃしてて、なーんかすげ~
「すげーなー俺……」
「いや、凄いのは秀じゃなくて佐嶋様だからね。」
「んなことわかってるし!」
どーせ俺は普通人間だしー、あー……でも昔の俺も俺には変わりねーんだから、あれ?俺って凄いんじゃ……?
「いや、やっぱ俺凄いんじゃ、」
「馬鹿なこと言ってないで、集中。」
しょーがねえ、静かにするかあ~。これで今日の授業は最後だし、あー、放課後かあ…………放課後、どーしよ?