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死神クロコと異世界の正体

俺の目の前に現れた死神。

自分、黒田昭典(くろだあきのり)を殺した張本人。

忘れもしない、骸骨頭と大きな鎌。


死神は・・・鎌の柄の部分を地面に2回打ち付ける。

カンカンという音が、辺りに響いた。

それに満足したように頷くとこちらを見た。


「・・・黒田昭典、お久しぶりです・・・」


「何が久しぶりだ!」


両手に力を籠め、魔法の詠唱を始める。

右手には『ライトニング』、左手には『エクスプロージョン』を。

一般人なら粉みじんになるほどの威力だが、今更手加減をする相手じゃない。

事と次第によってはさらに上位の魔法を使うつもりだ。


「お待ちください・・・!」


死神はそう言うと、自らの頭・・・頭蓋骨を掴んだ。

それを引きはがすかのように、引っ張る。


メリメリ・・・と少しづつはがれていく頭蓋骨。

それと同時に、まるで・・・頭蓋骨にくっついてるかのように、

黒いローブもはがれ始めていた。


ある程度までその音が響くと、急に、ずるりと。

果物の皮のように、剥けた。


「ふぅ・・・ようやく、この格好でお話ができますね」


その姿は、黒髪で目鼻立ちの整った・・・所謂美少女だった。

絶世と言っても過言じゃない美少女が。

いや、待て、これは一体どういうことだ!?

俺を惑わしてまた殺すための罠か・・・!?


「すみません、私はクロコ・・・この世界の案内人にして、

 説明役を任されたものです」


「・・・な」


説明役?案内人?

その言葉に困惑する、一体何を言っているのかと。


だが、目の前の少女は少なくともこちらに攻撃する意思を見せてはいない。

怪しさは残るが・・・。

両手を下ろし、魔法を解除する。

それを見た彼女、クロコは俺に頭を下げた。


「ようこそ・・・『マジックキング』の世界へ」


――――――――――――――――――――


マジックキング。

どこかで聞いたことがある・・・名前。

なんだっけ・・・ええと、確か。


「ああ・・・!マンガの題名だ!」


思い出したのは、あの色褪せたマンガ本。

あれの題名だった気がする。


「ご名答です。そして、死神は案内役と説明役を務めています」


「あ、ああ!そう言えばいたな・・・死神の」


だが、もっとデフォルメされて書かれていたが。

目の前のクロコを見る。

・・・こんなに、可愛い子じゃなかったのは確かだ。

それに、男って設定だったはず。


「恐らく・・・昭典様、いえディラン様が考えているのは、私の父です」


「父?」


「ええ、とてもかわいい死神ですよ」


娘に可愛いって言われる父親って・・・。

って、娘?


「じゃあ、あの・・・説明役は結婚してたのか?いや、まあ今その話はいいか」


そこまでマンガの事は覚えていない。 

20年も前の話、大分おぼろげだ。


「ええ、私は・・・途中で交代する予定でしたから」


じゃあ・・・彼女はマンガの世界の人間で、ここは・・・マンガの中ってことか?


「はい、正しいかと」


「・・・考え、読めるの?」


口に出していなかったはずだが。


「案内人ですよ、楽勝です」


そう言って、Vサインをする。

じゃあ、可愛いって思ったのも分かったってことか。

少し、気恥ずかしくなった。


「えーと・・・本題に戻ってもいいですか?」


「・・・ああ、頼む。一体何が何やら」


クロコは、先ほど脱いだローブから、何かを取り出す。

それを広げると、こちらに見せてきた。


それは、マンガの本、数冊。

『マジックキング』の1巻から3巻まで。


「作者の剱田 仁(つるぎだ じん)は世に3巻目を出した際に、交通事故で死にました」


「え?そうだったのか・・・?」


途中まで呼んでいたことは覚えていたが。

・・・途中から読まなくなった理由は覚えていなかった。

多分、連載休止になったからだろう。

子供の時は、その理由さえ分からなかったって事か。


「剱田仁の造った世界、それがこの世界になります」


「じゃあ、俺はその世界とやらに取り込まれたのか?」


「ええ、転移した・・・いえ、私がさせたんです」


どうして、と聞く暇も与えずに、クロコは喋る。


「ディラン様、どうか、この世界をお救い下さい」


そう言いながら、クロコは頭を下げた。


――――――――――――――――――――


「・・・いや、やっぱりどういう事なんだ?」


あの言葉から数分、ずっと、自分で色々と考えていた。

だが、やっぱり分からなかった。


「ディラン様、3巻目の最後、ご存知ですか?」


「え・・・いや、覚えては・・・無いかな」


「・・・1巻、2巻目は魔王と勇者の結婚まで、3巻はディランの誕生と成長が描かれています」


「じゃあ、今は3巻目・・・ってことか?」


はい、とクロコが頷く。

なるほど、最終巻という事か・・・ん?


「今のこの世界は・・・止まりかけているのです」


「止まる、ってことはその先が無いってことか?」


物語の最後、それが途中で終わるというのなら。

それはつまり。


「この世界の終焉が近い・・・という事です」


終焉・・・終わり。

この世界がマジックキングの世界なら、3巻目の終了と同時に全てが終わる。

そしてそれは今、眼前まで迫っているということか・・・?


「先も述べましたが・・・ここはマンガの世界が元になった世界。

 作者死亡で途中で終わった物語の世界」


「ああ」


「予定通りならディラン様が生まれ、世界を平和に導くための行動を起こす。

 そして世界が一つの国家となり平和へと導かれる・・・という流れだったそうです」


「続き・・・って、そうか」


この世界にその続きが無い、のだ。


「ええ、続き・・・がありません。その時が来ればこの世界は完全に崩壊します。

 恐らく物語を強制的に終わらせる何かが生まれて」


「何か、って?」


「例えば全てを滅ぼす魔獣、大陸を飲み込むほどの巨獣が現れるかも。

 ・・・とにかくこの世界全てを「破壊して無かった」ことにする存在が現れる」


頭を抱える。

話が全部本当だとすれば、この世界の破滅が近い。


「ですから・・・私は、黒田昭典様の魂を、こちらに呼んだのです」


「ちょっと待ってくれ、そんな・・・大ごと俺で解決できるのか?」


ええ、とクロコが頷く。

先ほどマンガを取り出したローブから更に何かを取り出す。

それは、俺の持っていた・・・ボロボロになった。


『マジックキング』の一巻だった。

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