ゆくなぎ きっと2人は恋をする ー本当はそんなに好きじゃないんだー
あてんしょーん
この物語はフィクションであり
実在する人物団体その他もろもろには
一切関係ありませーん
わかった? お兄ちゃん♪
この世は、掃いて捨てる程多くのカップルで溢れている。
けれど一つとして、同じものは無い。
歳も、職業も、立場も…みんな違う形をしている。
そしてそれは、時に在り方さえも――。
ここにも、とある一組のカップルが居た。
『策士なぎさんです、よろしくお願いします』
『僕には通じない』
『Loveが強過ぎて勝てません』
『なぎさん大好きだから♡』
『唐突に僕をキュンとさせるのやめて頂きたい!! いややっぱりやめないでほしい! 僕もゆくまさん大好きです♪』
端から見ると、何とも言えぬやり取り。
成り立っているのは、間違いなく二人の仲が最高にいい証拠だった。
しかし…。
(んー…)(まあ…)
((本当はそんなに好きじゃないんだけど))
この二人が、お互いを好きである事は確かだった。
旦那さんなどと他人が言えば、ゆくまの事だとわかるし、きつい冗談だって楽しく言い合う事が出来る。
もはや夫婦のようですらあった。
それでも、今この二人の心中には…“恋”と呼べるものは無い。
『ロコロコロコロwwwwwwwwwwチーンwチーンw(昇天する音)ロコロコロコロコロコwwwwwチーンwチーンw(昇天する音)』
『天使かな?? みんとんさんにおっきくしてもらいますか〜〜〜』
そんな二人のコトバは、先のやりとりと間を置かずに、無軌道に飛び交っている。
二人が今感情を向けているのは、お互いとは別の相手だ。
『おちごといってきましゅ...』
『ゆくまさん、いってらっしゃいませ〜♪ ふぁいとですっ!』
そして、またこうして唐突に、仲睦まじいやりとりが交わされる。
普通に考えれば、何とも異常なやり取り。
しかし、ここではそれが普通だった。
なぜなら二人は………お互いの顔すら、見た事が無い。
やり取りを交わすここは、ネット…SNSの上。二人は、ネット上のカップルだった。
お互いの素顔どころか、年齢も本名もわからない。そんな事も多いこの場所…。
けれど、だからこそ自分をさらけ出し、気の合う相手とだけ関わる事を許される場所。
そんなここで、これほど仲良くなれた二人は、間違いなく気が合っていた。
(そうは言っても…)
(さすがに恋とか結婚とか…ねえ…)
ここでのマナー。
現実と混同しない。あくまでここで、仲良くしていると言う線引き。
現実より、本音をさらけ出せる夢の世界。
その世界での出来事を現実にする為には、大きな一歩が必要だった。
しかしそんな勇気も、切っ掛けも…ここでの大抵のカップルは、得る事無く時を過ごしていく。
そんな二人に、今、転機が訪れようとしていた。
チカチカと、SNSの通知欄が受信を知らせている。
『To――― 今度の―――フェスのチケット、余りがあるんですけど、どなたか行けませんかー?』
それは、二人が所属するSNSグループに流れたメッセージ。
内容は、ただのイベントへのお誘いだ。友人同士なら、日々いたるところで行われているやり取り。
ただしここでは………一歩の距離を縮める、とても大きな意味を持つ誘いで…。
「ふぅ…」
「んぅー…」
今はお互い、それに気付かないまま、それぞれの現実を生きている。
そう…夢でやり取りしている相手は、間違いなく、現実に生きているどこかの誰か。
現実に会う事があったなら、それはもう…どうなるかなんてわからない。
もしかしたら、この二人が恋に落ちることだって――。




