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羊を探して森の中


鬱蒼と茂る大きな木々の間をアリスは跳ねるように進む。隆起した大木の根を飛び越え幹を回り込む。

手には村の武器屋が作った小ぶりなハルバード。ハルバードといっても、田舎の金物屋兼武器屋が作った代物。子供用の槍に拳大の斧が付いている程度のもので、武器というより農具に近い仕立てをしている。

それを音をたてずに握りなおして、一突き。


「取ったりっ!」


「ピーーッ!!」


根っこの影に隠れていた者は甲高い悲鳴を上げた。

小さな丸い耳に長い尾っぽの全身を鮮やかな緑の毛皮に覆われた小動物は一突きのもとこと切れていた。

この一見、テンにも似たこの動物はただのもちろん獣ではない。

魔獣または魔物と呼ばれている生き物の一種で、この世界の至る所に生息している。

今、アリスが仕留めたのもフォレスト・サーボウと呼ばれる図鑑などにも載っている個体だった。が、アリスをはじめとしたこの村の人達のほとんどは知らない。

というか、図鑑なんて高価な物は児童向けの薄い物が村長の家と教会兼寄り合い場にあるきり。このフォレスト・サーボウのような万人向けではない薬の材料となる動物の価値をこの村の人々はもちろんのこと知るよしもない。


「エリーのヤツどこいったんだろ?」


槍先から仕留めた獲物を回収しながら、アリスは後ろを振り返る。木々の合間にからは自分が先程いた村はずれの草原が見える。遠くの方ではラックがのんびり柵の中の羊たちを眺めていた。

目的の者はまだ帰ってきてはいないらしいと認めて、アリスはまた前を向く。そこには深い森が広がっている。森の木が折り重なり奥に行くほどまるで夜が取り残されたかのように闇が広がっていた。


「エリー、どこー?!」


森の中に声が響くが、返事はない。


「・・・・・・」


エリーことエレキサンダーはアリスの家で飼っている羊の一頭だ。群れのリーダー格の一頭で他の羊達より一回りも大きな身体と角を持った雌羊だ。

このエリー様、羊なのに集団行動が性に合わないのか散歩気分でよくこうやって脱走する。

羊なのにこの辺り周辺の肉食獣より強い闘争心と戦闘力を持っている彼女なので身の危険は全く心配してないが、エリーがいないと柵を閉められないから彼女を早く捕まえたい。

そして姉弟は家に帰って朝食にもありつきたい。


アリスはとりあえず、この先にある川に足を向けることにした。

生き物なら喉が渇けば水場に水を飲みに来るだろうからいる可能性がある。

お腹が空いてきたので、急ごう。


アリスは両足全体に意識を集中し力を循環させて、


「強・・かぁぁっ」


を、失敗した。

さすがにアリスも、音にも迫る速さの第一歩のせいで獲物と一緒に肉片になるのは避けたい。だからいつものように自分の身体の強度を上げた。これで木にぶつかっても粉砕するのは木の方なので彼女はひとまず安心する。

アリスは魔法が苦手だった。発現は出来るのだが、加減が難しい。今までも一度として望み通りに出来たことはない。


このままではいけない。弩弓から放たれたような矢のように、一直線に木々をなぎ倒しながらアリスはもっと鍛練を頑張らなければと思うのだった。

自分で言っといてなんですが、だいたい10話で終われる気がしない。

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