私の一日
私の名前はセリア・アードレイ。
森の奥に自宅を構えている。特別やること何てない。ただ、夫の帰りを待つ為に私はここに住んでいる。
私の1日は、まず朝起きる事から始まる。一人で朝食を食べて一人で片付ける。家族や友人は居ない。何故なら私が魔女だから。
この世界は魔女に優しくない。人々に疎まれている存在だからね。
他の人間と違うのは強力な魔術が使える事と寿命が長いって感じかしら。
私は見た目18歳だけど、もう118歳。きっと1000年位なら生きられると思う。
朝食の片付けも終わったし魔術の練習でも、しようかしら。
私は一人心の中でそう思って庭で練習を始めた。
まぁ、100年以上も魔術に関わってると伸び悩んで来るけどね。
私が使える魔術は意外と多い。回復系の魔術も使えるし攻撃系の魔術も使える。国一つ吹き飛ばせる程の威力ね。回復に至っては頭さえ無事でまだ生きていれば完全に再生出来るわ。
私はふと、昔の事を思い出す。
まだ私が18歳の頃。今の見た目と実年齢が伴って居た時の事を。あの当時の私はまだ、まともな魔術を使えなかった。そのせいであの人は…私の夫は死んだ。
今ほどの魔術を使えていればあの人が死ぬ事なんてなかった。
当然、復讐した。それが今から百年前の事。でもそれはまた別の話し。
炎に水に光に闇、色んな属性の魔法を出した。私が主に練習するのはコントロール。
私は一通り魔術の練習を終えて息を着く。
と言っても息は全く乱れない。だって生まれつき魔力が普通の人、千人分は有るんだから。今の私なら有る出来事でざっと一万人分の魔力迄羽上がってるわね。
だから余程の事をしなければ魔力が尽きる事はない。
魔術の練習はここまでにしよう。最近、魔術で学べる事が無くなった。正直、現状維持の為の練習になっている。
家の床に座ってボーッとしていた。もうやる事がない。魔術の練習だってそう。もう極め尽くした気がする。
そう言えば何か買わないともう食べる物無かったわね。買い物に行こうかしら。
もう食材が殆ど無かったのを思い出して買い物に行く事にした。
家の外は森林。獣道だけど問題ない。私には魔術が有るから。
外は良い天気。太陽が出て雲一つない天気ね。
私の雲のように曇った心境と違ってね。思わず魔術で雨にしてやろうかと八つ当たり気味に思ったけど止める。
百年以上生きていて、そんな事をしたら大人げない。
そんな事を考えながら町へ歩いて行った。
この町の名前はクレイトタウン。それなりに人が居る。活気もある程度有るわね。
クレイトタウンには、だいたい2,3日に一回のペースで買い物に来る。
野菜と今日の分の魚だけ買えば十分。
日保ちしないから余り多く買う事は出来ない。
目的の物を買ってさっさと帰ろうとしたら何か騒がしい様子。
「困りますよお客さん」
「うるせぇ!、食い物に虫が混ざってやがった!、慰謝料寄越せ!!」
三十代位のオジサンがまだ若そうな青年に凄んでいる。多分因縁ね。本当に虫が入っていたのかも怪しいわ。放っておこうと思ったけどそう言う訳には、いかなかった。
「あのジジイ」
思わずそんな独り言が漏れる。だって刃物を取り出したんだもん。これはやり過ぎね。オマケに誰も助けようとしない。
私は火の玉を魔術で起こしてジジイの所に放ってやった。
ジジイは一瞬火だるまになった。
まぁ、一瞬だから少し火傷した程度ね。
ショックで気絶したみたいだしこれで良いかな。
ジジイも本心では刺す気もなかっただろうし、十分ね。
私は瞬間移動の魔術を発動させてこの場から離れた。
瞬間移動で家の前に着いた。本当はこの魔術で町に行く事も出来たけどなるべくなら歩いた方が良いと思って使わなかった。
家に入って私は昼食を作る事にした。
一人で食べるご飯は何処か虚しい。
私の夫、グレン・アードレイは約束してくれた。何時か帰って来ると。こんなの、もう少しの辛抱ね。
普通に聞けば未亡人の妻の精神状態が病んでいる様にも聞こえるかも知れないけど私は至って正常。
夫は死に際に生まれ変わったら帰って来るって言った。輪廻転生が有る事は間違いない。グレンとある日話した時からそれは確信している。
ただ、不安な事は有る。私には前世の記憶はない。次に生まれ変わったグレンに記憶が有るのかと。
本当はグレンの魂を召喚しようと思った。何故かと言うと理論的に器と魂を定着させれば人工的に輪廻転生を引き起こす事が出来るから。
器は細胞を魔術で培養して作れば良い。魂が手元に有るのなら転生させる事が出来る。グレンの例で言えばグレンの魂とグレン自身の細胞から身体を作って魂を定着させれば輪廻転生…いや、この場合は輪廻回帰と呼んだ方が良いかしら。輪廻回帰させる事が出来る。
でも今回はそれが出来なかった。グレンが死んだ時、まだこの魔術は使えなかった。それどころか簡単な魔術でさえも。
だからグレンの魂を捕まえておく事が出来ず逝ってしまった。更に言えばその当時の私は魂を見る事も出来なかった。
だったら魂を召喚すればと思ったけど成仏して黄泉へ行ってしまった魂に魔術で干渉する事は出来なかった。それさえ出来れば後は身体を作るだけだったのに。
だから今の私に出来る事はグレンの帰りを信じて待つことしか出来ない。
今日も私はグレンの帰りを待っている。