初恋-9
もうすぐ卒業ですね。
先輩は受験で忙しそうです。
受験が終わってからも、
帰り道ではとても不安そうに、入試の事を話してくれました。
先輩が卒業したら、
この日記も、もう、書かなくなるのかな?
読み返してみたら、先輩のことばっかりで、
馬鹿みたいだな、なんて笑ってしまいます。
先輩、先輩が卒業したら、この日記はおしまいにしますね。
十二月
あなたは無事に、大学に受かったようでした。
放課後の帰り道、わたしに報告をしたあなたは、とても嬉しそうでした。
「どうしてわたしに言うんですか?」
わたしはあなたの反応に、少しの期待を抱きました。
「…………さぁね」
あなたは、淋しそうに笑いました。
そしてまた、胸がちくりと痛みました。
もうすぐ、冬休みに入ります。
また、あなたに会えなくなります。
その間、わたしはどうやって過ごして行きましょう?
そう考えると、また、胸がざわつきました。
十二月二十四日
冬休み二日目です。
友達の家でクリスマスパーティーをすると言うので、
わたしは今、友達の家に向かっています。
今、あなたはどうしているのでしょう?
家でケーキを食べてますか?
友達とパーティーですか?
街はすっかりクリスマスムードです。
恋人たちが幸せそうに歩いています。
その時……わたしの胸が、前よりもっと、ざわつきました。
わたしの目の前を、あなたと、一人の女の人が歩いていました。
その人に見せるあなたの笑顔は、わたしの前で笑ったときより、
すごく幸せそうでした。
わたしは思わず、走りました。
あなたに気付かれないうちに、早くその場から逃げたくて…
わたしは、友達の家に行かず、そのまま自宅に帰りました。
不思議と涙は出ませんでした。
…胸のざわつきの原因が、一気にわかったようでした。
あの時、彼女がいると、どうして言ってくれなかったの?
わたしなんて眼中に無いからですか?
先輩には、わたしなんて見えていないからですか?
ねえ、先輩?
わたしは、どうしたらいいですか?
涙は出ません。
その夜、目に焼きついたあなたの笑顔と、
隣で笑う女の人の笑顔が、わたしの頭を離れなかった。
わたしの気持ちだけ置き去りにして、
冬休みが終わります。