初恋-8
先輩、何かあったんですか?
どうして何も言ってくれないんですか?
私じゃ何の力にもなりませんか?
このままそっとしておくことが、
今の私に出来る唯一のことなんですか…?
十月
今年も台風が沢山通り過ぎていきました。
暑さから肌寒さに変わり、制服もまた、夏服から冬服に変わりました。
あなたとの関係は相変わらずです。
けれど、最近、あなたの様子がおかしいのです。
笑っていても、どこか悲しんでいるようで、
話していても上の空だったり。
どうしたんですか、と聞いてみても、あなたは何も答えてくれません。
静かに笑ってなんでもないよ、と言うだけです。
それと同時に、これ以上何も聞くなと言われたようで…。
先輩の様子は変わらないまま、十月が終わりました。
何も出来ない私は、とても無力で
役立たずで、だけど、どうしていいかわからなかった…。
十一月
放課後、あなたと帰るのが日課になってきました。
けれど、やはり、帰り道は何も話しません。
あなたの様子もおかしいままです。
私に対してはずっと笑顔の先輩が、寂しくて、悲しくて、
何も出来ない私が、ただ無力で、馬鹿みたいで、
先輩が笑うたびに泣きたくなります。
「よ!待っててくれたんだ」
昇降口で座ってるわたしに、あなたが声をかけてくれました。
「…いえ。座っていただけです」
「そっか。よし、じゃ、帰ろう」
あなたはわたしの手を引っぱって、校門を出ます。
「………最近、噂になってますよ」
「ん?」
先輩はとぼけた顔でわたしを見ます。
「わたしと先輩のことです。どうするんですか?付き合ってもないのに…」
わたしは、あなたの反応に何かを期待していたのでしょうか。
「…そだね。ま、いいんじゃない?人の噂も七十五日って言うしね」
あなたは否定もしなければ、肯定もしませんでした。
あなたと帰るたびに、わたしの胸の中で、何かが音を立てて崩れていく…
なにかとてつもない不安に襲われて、
わたしの胸はずっと、ざわついたままでした。
わたしに何も出来なることがないのなら、
せめて先輩が泣けるように
せめて先輩が笑っていられるように、
あなたのそばにいたい と
想うことは、迷惑ですか…?
振り向いてくれないとわかっていても
わたしに笑ってくれるなら
そばにいたい と
自惚れてしまいたい と
想うことは、迷惑ですか……?