表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

初恋−3

もしかしたらあの人にとってわたしは、何でもないただの後輩だったのかもしれない。

だけど、わたしにとってあの人は、紛れもなく「初恋」の人でした……。




四月


入学式も終わり、あの人と初めて会ってから半月が過ぎた。

たまに頭をちらつくあの人に、自分が恋心を抱いているなんて、

この時のわたしは気付きもしなかった。

ただ、なんとなく、名前も知らないあの人が、

教室の前を通るたび、ドキンと鳴った自分の胸が、

不思議で不思議で仕方なかった。




綾香にこの間のラブレターの事を聞くと、


「あんなやつ、振ったよ!!当然!

だってさ、一目ぼれなんて信じられるわけないでしょ!?

それに、あたし、あいつのこと名前だって知らなかったんだよ!?」


それなのにスキって言われても困る!!だって。

少し照れながらそう言った。


入学してしばらくたつと、綾香は部活に入った。

そのせいか、帰宅部のわたしとは帰る時間が合わなくなって、

一人で帰ることが多くなった。



その頃からあなたに、よく逢うようになりました。








『桜の木の下で落ちてくる桜の花びらを、

地面に落ちるまでに左手でキャッチできれば、恋は実る。』


そんなおまじないが流行ったころ、わたしは馬鹿みたいに実践してた。

この日も、まるでそれが、帰る前の儀式のように当たり前に

落ちてくる花びらを追いかけていた。

でも全然つかめなくて、私を素通りして落ちていく花びら。

まるで神様に、『あきらめなさい』と言われてるみたいで、

余計にムキになって追いかけた。


「なに?またやってんの?懲りないねぇ、君も。」


必死で花びらを追いかけてた私に、あの人は、突然話しかけてきました。

まだ、あなたの名前も知らなかった頃です。


「…いいじゃないですか………ていうか、毎日毎日…一体なんなんですか?」


わたしは花びらを追いかけながらそう言った。

あなたは私がいる桜の木の下まで来て、ドカッと座りました。


「大城裕太、3年生。ねぇ、なんでそんなに必死なの?好きな子いるの?」


あなたは座ったまま、花びらを追い掛け回すわたしを、目で追っていました。

わたしは立ち止まってあなたのほうを見た。

あなたのそんな態度に、わたしは思わずあなたを睨んだ。


「…あなたには関係ありません。」


あなたは、わたしのこんな態度に顔を歪めることもなく、笑って言いました。


「ふぅん。ま、いいけど。じゃ、俺帰るわ!頑張ってね」


あなたは、わたしに大きくを振りました。

それが、あなたの名前を知った日でした。

あなたは年上でした。




「……大城…先輩………」


わたしの目は何故か、あなたの後ろ姿を、ずっと追いかけていました。



あの日、あなたにあんな態度をとったこと、今とても後悔しています。

だけど、その時はきっとあれが精一杯だった……。


わたしはあなたの前で笑ったことはありません。

あの頃わたしは何故か、あなたの前では笑ってはいけないと、そう思っていました…―――



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ