表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/13

二話 再会-1

わたしたちは、3−2の教室に向かった。

そこまで行くのに通る、懐かしい教室。

職員室、1年の教室、階段を上がって、生物室、書道室…。

……先輩のいた教室。

ふいに、その教室の前で立ち止まったわたしの腕を、綾香が引っぱってくれた。


「…行くよ」


「うん」


3−2。

教室に着いた。

ドアの前に立ったわたし達は、少しためらいがちに、

少し懐かしさを感じ、二人で扉を開けた。

すでに何人かが来ていた。


「おぉ!久しぶりだなぁ!!お前ら!」


扉を開けると、一人の男性が嬉しそうに近付いてきた。


「おぅ!!久しぶり!」


綾香はなんのためらいもなく、その人とハイタッチ。

この男性は、高野広司。高校時代の綾香の恋人。

卒業してからは、お互い忙しくて、逢えなくなったから別れたらしい。

それにしても…さすが綾香だ。あっという間に囲まれた。

わたしは教室を見回して、窓の方に向かった。

道路側の窓からは、登下校の生徒が良く見える。

そういえば…よくここから見てたっけ…先輩のこと。


「理奈。またなんか考え込んでるでしょ」


背中からした綾香の声で我に返る。


「…ん。ごめん」


「………べつに謝ることじゃないよ。」


綾香はわたしの隣に立った。


「…まだ、ふっ切れてないんだ?」


「…………わかんない」


綾香はうっすらと笑みを浮かべた。


「…仕方ないか…」


「わたし、ちょっとトイレ…行ってくるね」


綾香にそう言って、わたしはあの場所に行った。


先輩の教室……覗く勇気はなくて、目を逸らした。

書道室を通りすぎ、生物室、階段を降りて1年の教室の前を通る。

職員室を通りすぎ、昇降口を出ると、斜め左に見えるは校門。

その前に立つ大きな桜の木。

あの頃から何も変わらずに咲き続けている一本の桜。

わたしはその木の根元に腰を下ろした。







卒業して何年目の春が過ぎた?

今年もこの桜は変わらずに咲くのに、先輩はもういなくて……


桜の下で、こうして座っていれば、また、会えると思った。


先輩が卒業した後も、昼休みにはここで座ってた。

雨が降った放課後は昇降口で座って、雨が止むまで待っていた。

先輩のいない2年間は、とても長かった。

毎日が長くて、先輩がいないことが、こんなにも苦痛だった。






空を見上げると

桜の花びらのスキマから覗く、綺麗で青い空。

目を閉じると、鮮明によみがえるあなたの笑顔。


今、先輩はどうしていますか

何をしていますか

先輩の心の中に、あの日のわたしは

いますか………?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ