初恋-12
高校時代のわたしの日記。
そういえばこんなこと書いてたっけ。
ああ、こっちに来たときに読み返したんだった。
どうしてこんなことばかり覚えてるんだろう。
全部忘れたつもりだったのに。
ねえ、理奈?
会えなくなってから、もう十年経つんだよ?
どうして、まだ、忘れられないの………?
「ちょっと理奈?あんた起きてる?」
親友の声で目が覚めた。
どうやら電車の中で、寝こけてたらしい。
「……やな夢。」
「ん?何?」
「何でもない…」
あれから10年経つけど、未だに胸の中のざわつきが治まらない。
先輩は…今、どうしてるだろう?
「ほら、降りるよ!……いつまでそんな顔してるつもり?
あの人が来るわけないでしょ、先輩なんだから」
綾香に腕を引っぱられて、電車を降りた。
久しぶりの駅。
わたしは高校を卒業してから、今の家に引越した。
だから、卒業してからは一度も来ていない。
「…懐かしいね」
思わずそんなことを口にした。
「でしょ。みんな元気かな?」
綾香はホッとしたように笑って見せた。
高校に近付くにつれて、だんだん胸が痛くなってくる。
いろんなこと思い出して、ちくりちくりと胸が痛む。
「ほら、ついたよ!」
高校の正門の前に来ると、綾香がわたしの背中をたたいた。
「痛…っ…。もう、何?」
「ごめんごめん、ほら、着いたよ」
見上げると、そこには見慣れた、懐かしい風景があった。
「……うん」
胸が高鳴る。
来るわけない、先輩の面影を追いながら、
7年ぶりに正門をくぐった。
一話 初恋 終わり