初恋-11
先輩に初めて会った日から
もうすぐ一年が経ちます。
色々なことがありましたね。
教室で先輩が物憂げな顔をしていたとき
わたしは見とれてしまいました。
男の人に、とても綺麗だ と
感じてしまいました。
傘を忘れて、昇降口で立っていたとき
その時点で先輩には分かってたんですね。
傘を持ってきてなかったこと。
その日から、一緒に帰るようになりました。
もしかしたら、この辺りから
わたしは自惚れていたのかもしれません。
どれだけ憎まれ口をたたいても、
どれだけ素直にならなくても、
あなたは笑ってくれました。
先輩は、わたしの全てを見透かしてるみたいに思えた。
小さい声で言った「ありがとう」に
反応して笑ってくれたときも
素直になれないわたしに
「きついね」と笑ってくれる。
とても とても
とても 優しいね。
三月
卒業式。
わたしは1年だから参加しない。
二月に会ったあの日以来、一度も会わずに、あなたは卒業してしまった。
授業中、ざわつく校庭を窓から覗くと、
あなたと、あの日見た女の人が嬉しそうに笑ってた。
心なしか、先輩の目が赤く見えた。
…泣いたのかな。
先輩でも泣くんだ。
ざわつく胸を抑えながら、わたしは黒板に目を向けた。
結局、あなたはわたしの名前を知らないまま、
わたしの前からいなくなりました…。
とても
とても
すごく優しい先輩に
最後に意地悪くらいすればよかった。
困らせてしまえばよかった。
もう、日記にも書けない言葉だけれど
先輩にも、誰にも言えない言葉だけれど
すごく優しい先輩に
最後に意地悪くらいすればよかった。
先輩、卒業、おめでとうございます。
そして、さようなら。