初恋-10
年が明けました。
先輩はどんな大晦日を過ごしましたか?
家族と過ごしましたか?
それとも彼女とですか?
年越しそばは食べましたか?
初詣には行きましたか?
わたしは、見事に大凶でしたよ。
先輩は……きっと大吉ですね。
先輩、合格おめでとうございます。
直接言えなかったけれど、今はまだ素直になれないけれど
せめて、日記の中では言いたかった。
もう、あなたとは会わないことにします。
一月
もうすぐ、卒業式です。
あれからあなたとは一度も会っていません。
あなたの教室の前を通らないように、まわり道で昇降口に向かい、
あなたが来る前に帰ります。
今、あなたに会えば、何もかもが崩れてしまいそうで、怖かった…
わたしなんかに、本気で相手をするわけがなかった。
あなたには、好きな人がいた。
二十四日を一緒に過ごすような人が。
卒業までに伝えようと思っていたけれど、
わたしはやめることにした。
今年は、先輩にとって最高の一年になりますように。
二月
3年は午前授業が多くなり、時には誰も来ない日もあった。
これで、あなたに会わなくてすむ。
わたしは、時期を遅れて降っている雪を眺めながら、
少しだけ泣きそうになった。
「久しぶりだねぇ。『桜ちゃん』」
わたしの背後で、あなたの声がしました。
「なんで先に帰ってたの?俺待ってたのに…」
どうして、どうして…あなたがそんなことばっかり言ってるから、
だから、わたしみたいなのが付け上がるんですよ…
「なに言ってんですか。先輩はもうすぐ卒業ですよ。そろそろ一人で帰らないと…」
わたしは何も知らないことにした。
彼女のことも、わたしがあなたに恋をしていることも。
全部に、知らないフリをした。
「まぁ、そうなんだけどね。…相変わらず、きついね」
あなたは苦笑して言った。
ざわついたままの胸を抑えて、何も語らない帰り道、
ずっと終わらなければいいのに…
そう思いながらあなたと帰った。
会わないと決めたのに
もう、忘れようと決めたのに
あなたに会えば、
会ってしまえば、
叫んでしまいそうになるわたしは
勝手ですか?
わがままですか?
そのままわたしだけに笑ってくれたら と
願うのは、勝ってですか?
名前を叫びたいのに、
名前を呼んで欲しいのに、
いつまでたっても呼んでくれなかったのは、
わたしが先輩にとって「対象外」だからですか?
先輩に会うたびに、どうしいいのかわからなくなります。
先輩は笑ってくれるのに
わたしは笑わなくて
先輩は待っていてくれるのに
わたしは待たなくて。
いつまでも素直になれなかったわたしへの
はやく想いを告げなかったわたしへの
報復ですか………?
来月には、あなたの姿はありません。