表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

僕は、

いじめられてもう何年になるのだろう。

僕は、いま14歳。つまり中二だ。

部活はサッカー部。でも、僕はいつも補欠にすらなれないヘタクソだ。どんなに努力しても『才能』には勝てない。これが僕の今までの人生。でもこんな僕を優しく見守って微笑みかけてくれた人は、いた。

もういないけど。

それは僕の母。僕は一人っ子で。母はいつも僕に優しくしてくれた。でも、それとは正反対で、父はすごく怖かった。いつも母を殴っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「くだらねー残業から戻ったら

お前は謙也(けんや)と遊んでばっかでよー! この、寄生虫が。誰の金で生きてると思ってんだよー!」

小学生の僕を寝かしている時に父が帰ってきた。

「ごめんなさい、今お酒持ってきます」

そう言って母は急いで冷蔵庫へ向かった。

いつもの風景だ。父は嫌なことがあるといつも母を殴っていた。

母が殴られている音を聞くのが一番辛かった。

「謙也もそろそろ教育しねーとなー!」

酔った父が、リビングから僕のいる寝室の方に歩いてきた。すごく怖かった。殴られるんじゃないか?そう思った。

僕はただ布団にくるまって怯えていることしかできなかった。

その時、母は父の手を掴んだ。

「おい、なんだよ。

なんか文句あんのかよー!」

「謙也は何も悪くない。とってもいい子。

全部、私が悪いんです。稼ぎが無いのに遊んでいる。…...だから殴るんだったら私だけにしてください」


ドゴン!母がそう言うと父は手加減しないで思いっきり母の頬を殴った。

そのまま、母は床に倒れて微動だにしなかった。

「つまんねーな」

そう吐き捨てると父は二階の自分の部屋に閉じこもった。

僕と母のいる

一階は暗く恐ろしいほどに静まり返った。

数分後、母が、よろけながらも立ち上がり、壁に手をあてながら僕のほうに来て、一緒に横になった。

暗くてよく見えなくても

母はどこからか血が出ていてとても痛そうにしているのが見て取れる。

「いつも怖い思いさせてごめんね。こんな家に産んでしまった私が悪いの。本当に、ごめんなさい。こんなお母さん大嫌いだよね」

母は僕の頭を優しくなでた。なでる時いつもお母さんの体は濡れていた。

「そんなことないよ。お母さんのこと、大好きだよ。あんまり無理しないでね。お巡りさんとかに話せばきっと楽になると思うよ」

「ありがとう。でもそれだと、みんなに迷惑がかかって、しまうし、お父さんにそんなことしたら、もう、お父さんからお金がもらえなくなっちゃう。それだと、あなたが飢え死にしちゃう。こんなに辛い思いをさせてるのに、惨めに死んでいくなんて…...あなただけにはそんな思いさせたくない。だから、我慢して。時が経てばきっとなんとかなるから」

母は僕をギュッと抱きしめ頬にキスをした。



でも、世界はそんなに甘くはない。

母は元からガンだったのだが、容体が悪化し病院で生活することを余儀なくされた。父も看病が面倒くさかったのだろう、一番安い病院に入院させ、殆ど見舞いには来なかった。

僕は母の所に毎日行った。

「お母さん、僕大人になったらお金持ちになってお母さんの病気を治すからそれまで待ってて!」

今思えばとても無謀でくだらないことのように思えるが、それしか言えなかったのだ。

高い手術料を出すにはそれしかないと思ったからだ。

「わかったよ。あなたがお金持ちになるまでは生きてるから私のこと治してね」

母は微笑みながらそう答えた。

「絶対お金持ちになってお母さんを助けるんだ!」


でも、母は入院して半年で死んだ。

お母さん、僕が大人になるまで死なないって言ったのに、ねえ、どうして…...


一ヶ月後、葬式が開かれた。

「保険金がこんなにおりるとは。保険だけはちゃんとしといてよかった。これで、遊んで、おっと、なんとか暮らせるな。おい謙也!

お前、明日から学校の近くにある養護施設に行け」

葬式が終わっ

たら父は無愛想にもそう言った。

お母さんのこと愛していなかったんだよね。

ふと悲しくなる。

葬式、誰も来てくれなかった。お母さん。寂しいよ。嘘だよね。死んでなんていないんだよね。

そう自己暗示するも、受け入れるしかなかった。

お母さんが何をしたんだろう。お母さんは何も悪くないのに。

僕はそれからただ生きているだけだった。

他の人が楽々と中学生になることができたのに、僕は、こんなにも辛いなかやっと中学生の歳まで生きたんだ。

お母さんと一緒に死にたかった。お父さんは僕を預け、いや、捨てて、中学生の入学式のときどこかに行ってしまった。

どうしてお母さんはお父さんなんかと結婚したのかなあ〜

しなければこんなに辛くなかったのに!

こんな悲しみと

孤独を味わなくて済んだのに。


部活に入れば僕でも友達が作れると思ったのが間違いだった。学校はみんな父だった。

みんな僕のことをバカにしてクズ呼ばわりする。

それも仕方ないか。昔、お母さんを助ける為にお酒を万引きをしてそれがばれて…...

お母さんは僕のことをただ抱きしめてゴメンネとしかい話なかったし、

大人たちはその話をなかったことにしたんだけど…...子供達つまり同級生たちは、僕に距離を置くようになってしまった。

万引きの代償は大きかった。

養護施設でも陰口を叩かられていたし直接「死ね」とも言われた。

でも、大人たちは小中学校の先生たちは、面倒くさかったからか見て見ぬ振りをして助けてくれなかった。

もし、部活で成功すれば変わるかもしれないと思ったが所詮、僕なんかが部活で成功できるはずない。何をやってもダメなこの無能な僕だから、みんな、嫌うんだ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕は部活中いつもこのことを考える。補欠以下だから暇なんだ。中一の時はいじめられてたんだけど今は『無視』されるように

なった。

死んでても誰からも気づかれないだろう。

寂しい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ