【番外編】六.五ミリ、進んだ日記
○月×日
今日はなんと、先輩を見つけた。
聞くと、先輩にも前世の記憶があるらしい。それは置いとくとして、先輩は相変わらず変態だった。生まれ変わってもあいかわらずだなんて、少し羨ましい気もするよね。
前書いた例の変な声(「この声が聞こえた奴はどうのこうの~。世界征服どうのこうの~」ってやつ)についてだけど、まだ聞こえてる。
でも、あれは気にしたら負けなヤツだ。絶対そう。だって私が決めたもん。第一、世界征服だなんてイマドキ流行らないでしょ。「この世界は私のものだはっはっは」とか叫んでイッタいポーズとるの? 嫌だよ? 黒ローブのモノクル少女がやっても場が凍りつくだけだから! やらないから!!
と、そんな事より、私と先輩二人集まったって事は他の皆にもまたあえるって事なのかな? だとしたら楽しみだなー。
うん。今日はこんぐらいかな! いつもより書くことがあって私はうれしいです! おやすみ!!
×月○日
昨日の推測通り、続々と部員が集合しはじめているっぽい。今日見つかったのはマッサージが得意なあの子。なぜか鶏に喰われてたんですがそれは……。
今はナミラと名乗ってるらしい。ナミラちゃんもあいかわらずだった。整体師って……天職やん! うっわぁいいなぁ仕事があって……。
かんわきゅうだーい、私はまだ飲めないんだけど、先輩の作る料理やお酒はおいしいらしい。この世界の料理は全体的に『食べれるけど美味しくない』レベルだから、酒場で出してるちょっとしたデザートなんかも人気なんだそうで。
――確かに先輩のお菓子は美味しいけど、それでも先輩はロリコン変態野郎だ。
またもや話は変わるけど、先輩と出会ってってすぐくらいから、私の魔力のコントロールが効かなくなってきた気がする。いやいやいや、別に先輩のせいじゃないと思うけど。あの人にそんな力あるわけないし。
コントロールが効かないといっても、おおっぴらに放出さえしなければ問題ないっぽい。まあ、上級魔法なんて使ったら本来の効果が何であれ真面目に森が吹き飛びそうだとは思うけども。
何はともあれ危ないから、初級魔法~中級魔法の中でも簡単なものまでしか使わない事に決めた…………君に決めた!! あ、いや、なんでもないです。ワタシモゲモン厨違うヨ? 違うヨ?
本当は、あの鶏爆発させたかったんだけどなぁ。でも、もし爆発させてたら美味しい鶏の炊き込みご飯は食べれなかっただろうし、結果オーライだね!!
△月○日
今日は何か恋愛相談された。いやぁ、私達に言われても……。って感じだよね本当。
まあ適当に面白がってたら解決したから結果オーライ…………じゃないね? ギシアンBGMで寝ろとか鬼畜過ぎるでしょ。眠いよ寝たいよ寝れないよ。うるせぇんだよこんにゃろう。
……そうです。今、私ギシアン聞きながら日記書いてます。
そうだ、先輩に出会うまでの話でも纏めて書き留めてればれば寝ちゃうかギシアン止まるかのどっちかはあるでしょ! いつ記憶がなくなってもおかしくない世界だしね。日記は大切!!
とりあえず、ざっくりと。
私は、私の一番古い記憶でも既に貴族の豚(見た目も中身も)に育てられていた。
私を育てた貴族の夫婦は、ついに最後まで私が邪魔だと口に出さなかった。とはいっても、夫婦の息子と私とじゃ扱いが全然違ったから、彼らにとって私が邪魔だなんてのは物心ついた時から肌で感じていたけれど。もし口に出したらその時は私の魔法で八つ裂きにしてくれようと思ってたから、彼らからしたらそれは賢明な判断だったといえよう。
扱いが違ったと言っても、私が虐待とかをされていた訳じゃない。むしろ、息子への愛の注ぎ方が異常だったのだ。私には、食事を与える、勉強をさせる……。と、必要最低限な事しかしないし必要以上に関わってこない反面、息子には過剰にものを与え、学ばせ、そして褒めた。
私は、それを見ても特に寂しくなんてなかった。
幸か不幸か夫婦の家には本が沢山あって暇はしなかったし、ご飯も金だけはかけてあるからこの世界の中ではおいしい方だった。服やらなんやらにも不自由しなかったし、何より、私は前世の記憶が戻ってくるのが早かったから。
記憶が戻ると、それ以前から一緒に居た人と今まで通りに過ごすのがものすごく難しくなる。だから、保護者が自分に無関心なのは転生者からするとだいぶありがたいのだ。
……ふぅ。家出した時の話はまた今度にしよう。そろそろ眠気がヤバイ。寝れるかは分からないけど、横にはなっておこうと思う。おやすみ、私。
ちなみに、例の世界征服おじさんは遠くでブツブツ言ってるのが集中するとわかるくらいになってる。
向こうはこっちが盗み聞きしてるのに全く気付いていないみたいで、何か重要っぽい事もぺらぺら喋ってたから、故意じゃ無いのに『自分の生い立ちがヤバイ』を知ってしまったよもうちょっと警戒しようよ!!
ただ、具体的なことは何も聞けなかったからちょっと不完全燃焼。
□月○日
今日はアンラッキーなあの子があらわれた!! 今はミキレイと名乗っているんだそうで。それにしたって海賊に捕まって樽から出てくるとか……あいかわらずだねとしか言えないよ。
聞いただけだけど、樽から出てきた瞬間は滅茶苦茶怖かったらしい。ちょっと見てみたかったなー。
市場でミキレイちゃんがこっちに走ってきた時は真面目にビックリした。ビクッた。久しぶりに表情筋を大きく動かした気がする。明日は顔が筋肉痛か……。なんか滅茶苦茶格好悪いよ顔筋肉痛とか。
あいかわらずの眼鏡とワカメに安心した所でまたあの声が聞こえた。今日は折角だからどんな事を言っているのかご紹介しとこうかな。誰がこんなもの読むかわからんし呼んだ奴は残さずぶっ飛ばす所存だけど。備忘録ついでに、ね。
「我が一族の末裔よ。今こそその力を解き放ち、この世の隅々までをその手中に収め、我が一族に栄光を!!」
ねえ、一言言わせて?
おじさん、アホか。
?月☆日
本屋に行ったら同人誌みつけた。
「え? あれ? あれは、え?」
「どうしたのオーガ? 聖なるダンゴムシでも見付けた?」
「い、いや、ほら、あれだよあれ。…………ナミラ! コイツを見てみろ!!」
「えぇぇぇえええ!?」
と、某バライティー番組のお約束パロディーをしながら手に取ったあれ、同人誌。やべぇよ同人誌だよやべぇよ!! この世界では見た事無かったんだけど!! しかもこの組み合わせは!!
とか言って作者を特定し本屋のお兄さんに居場所を聞き作者のモジャモジャを拉致し名前を聞いて爆笑し……と、今日は色々あった。いや、この面子で居るといつも色々ある気がするけど今は置いておこう。
ちなみにモジャ子ちゃん、今はハモォヌと名乗って居るらしい。ハモォヌハモォヌ! ホモー!! ああ面白い。
こうやって周りが賑やかになるに連れて、段々とあの声も大きくなってきている気がする。
でも、スルースキルだけは一丁前なんで、これからもとりあえず現象維持で行こうかなって思ってる夜十時なうです。
→月←日
今日はギルドのお手伝いに行った。
ギルドのおっちゃんは皆ゴツイしウザイし酒臭い。そんなんだから思春期の娘に遠ざけられるんだよ。まったく。
あ、ついでに先輩はガチムチ派だけど私は華奢派だ。華奢のが可愛い。可愛いは正義。つまり華奢=正義。ガチムチ=悪=敵。と言う方程式がですねぇ!! 出来るんですよ!! ね?
でも、ガルバディストさんはそんなに嫌いじゃない。なんか、私を見るなり「アンタも若いのに苦労してんな」とか言ってきたから、多分私の魔力の現状を一目で理解したんだろう。すごい人だ。
ただ、ドラゴンを倒すのはちよっとなあ、と思う。また今度書く気だけど、私はドラゴンに助けられた事があるからね。でも、先輩がドラゴンの卵を貰ってきたのはすごく嬉しかった。
世界征服おじさんの声も、先輩がドラゴンの卵を貰った後から今の今まで一回も聞こえてきていない。やっぱりドラゴンはヒーローだ。誰様神様ドラゴン様!! すべてにしびれる憧れる!! ま、そもそも爬虫類愛好家なのがかかわってないといったら嘘になるけど。
それにしても、ポケットに入ったドラゴンの卵を見つけた時の先輩の顔と言ったら!! この世界にカメラがあれば良かったのに!! 撮りたかったよぅ……。
12/7 誤字脱字修正しました。