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第五話 神坂ゆかりと言います。男は全て狼だと思ってます†


 うーむ。


 私は悩む。


 禿げるんじゃないかと思うほどに悩む。


 この年で禿げるのは嫌だ。てか年齢関係無く女で禿げるのは嫌だ。毛根までしっかりと洗おう。うむ。


 私は何度も何度も選択肢をクルクル回す。



   《選択肢を選んでください》

   絵里がトラックに轢かれる

   絵里がトラックに撥ねられる

   絵里がトラックに衝突する

  →



(……四つ目、やっぱカーソル行くよなぁ……)


 私は空中に浮いている選択肢に近付き凝視する。


 目をかっ開く。


 前にクラスの男子生徒達がこうやってえっちい本の『ある部分』を凝視すると『見えない場所が見えてくる』とか何とか言っていたのを思い出したからやってみた。


「・・・」


 凝視する。


「・・・」


 凝視する。


「・・・」


 目が乾いた。

 私に嘘を付いたクラスの男子はみんな爆ぜてしまえ。



 うーん。


 私は悩む。


 その場で顎に手を当てながらウロウロする。


「……裏から見たら何か見えるとか?」


 私は選択肢の裏に回る。


 ……裏から見ても半透明の文字がさかさまに映っているだけ。


 何て言うんだっけこういうの……ホモセクシャル?……違うな……なんだったか……。モーホークラブ?


 近い気がするが思い出せないので置いておく。



 どうしよう……。選んでみるべきか……?


 どの道、どの選択肢を選んでも絵里がミンチになってバッドエンドまっしぐらだろう。


 ……もしくは選択肢を選んだと同時に私がトラックの前に飛び出したらどうなるんだろう……?



 ……私は馬鹿か?


 そんな事をしたって私と一緒に絵里も轢かれて死ぬだけだろう。


 もしくは『ゆかりっ!危ないっ!』って絵里が私を突き飛ばして轢かれて死ぬか……。


 どちらにせよ『絵里がトラックに轢かれる』という運命は『絶対』なのだろうから。



「………よし」


 私は決心する。


 どの道バッドエンドに向かう可能性が高いのであれば駄目元で『四番』を選択してみよう。


 もしかしたらただのバグで選択しても何も起こらないのかも知れないし。



 私は深呼吸する。


 そして今一度カーソルを『空白の四つ目』に合わせ―――。



 ―――『決定』ボタンを押した。






◆◇◆◇





 私は目を覚ます。


「…………あれ?」


 いつもの図書館の一室。


 私は周囲を見回す。


 傍らに携帯ゲームが置いてある。


 画面は……点いたまま?


「………戻って……来ちゃった……」


 私はゲーム画面を凝視する。


 選択肢の画面で停止している。


 これって……?


 と、私のいる『無人の新聞部屋』の扉が開く。


「……っと。ごめんごめん……。まさかここに人がいるなんて……………あ」


 携帯ゲームを片手に床にへたり込んでいた私と目が合う男子生徒。


 何気に視線が私の太もも辺りに強く感じるのだが。


 私は視線を落とす。


 ……うん。ちょろっとパンツ見えてるね。


「……何を見ているのですか?」


 私はスカートを整えながら男子生徒を睨みつける。


 取り合えず携帯ゲーム機はそのまま蓋を閉じて『スリープ状態』にしておく。


 ……後でどういう事態に陥っているのかを検証しないと……。


「……す、すいません……!まさか神坂先輩がこんな所にいるとは思わなくて……!」


 男子生徒は顔を赤らめ後ろを向く。

 誰だ……?私の事を知っている……?


 私は立ち上がりスカートの埃を払う。


「……貴方は……一年生かしら?」


 鞄に携帯ゲーム機を仕舞い込み、さして興味も無い社交辞令の質問を投げかける私。


 何度も言うが、私は穢れた男子共などにこれっぽっちも興味は無い。


 たまに可愛い私の弟を苛めて弄り倒せればそれだけで満足なのだから。


「あ……はいっ!僕は一年の三好尚吾みよししょうごって言いますっ!あの……その……」


 何か口篭り始めた後輩を私は冷ややかな目で見る。


「そう。じゃあ三好君」


「は、はい!」


「そこどいてくれるかしら?通れないから」


「え?……あ、すいませんっ!」


 慌てて横に飛び退く男子学生。


 その脇をすり抜け図書館を後にしようとする私。


 ……と、その前に。


 私は顔をキラキラと輝かせている男子学生を振り向く。


 ……こいつ……絶対今晩私をおかずにシェイクシェイクブギウギする気だな……。


「三好君……だったわよね?」


「は、はい!三好尚吾、好きなものはアニメ全般と格闘ゲーム、それに落ち物パズルなんかも……」


 何かグダグダ言い始めたが無視。


「今日の事は黙っていて欲しいの」


「今日の……事……」


「そうよ。私がこの『無人の新聞部屋』に居た事も、携帯ゲームを持っている事も、全て」


 ……ばれる訳には行かない。


 私のリアルでの生活に悪影響を及ぼしてはならない。


 私は完璧な、誰もが敬い憧れる、完全体の美少女なのだから。


 その私が携帯ゲームに嵌っている……しかもそれが『美少女ゲーム』だとは知られてはならない事。


「………別に今時、女子の方々も携帯ゲームくらい……」


「い い わ ね ?」


 私は三好に近付き念を押す。


「は、はいいいっ!!!」


 顔を真っ赤に興奮しながら三好は良い返事をする。


 ……本当に大丈夫かよこいつ……。


 私の秘密を知ったのだ。


 当分は監視対象だな。


「……じゃあ、お願いね。三・好・君?」


 私は真っ赤な頬を人差し指でつつき、踵を返す。


 振り向きざまに後ろで膝から崩れる三好の姿が視界に映ったが、そんなん知らんわ。



 私はそのまま図書館を後にした。



















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