第三話 神坂ゆかりと言います。変態と言われると悶えます†
松永が変な顔で私の選択を待つ。
というかこの『選択肢』が空間に浮かんでいる間は私以外の全ての物の動きが止まる。
なんて言うんだっけ。ああそう、……忘れた。まあいいや。
とにかく時間が止まっちゃってるから松永も変な気持ち悪いエロい顔をしたままストップしている。
絵里もそう。
少し顔を赤らめたまま時間が止まってしまっている。
ここで私は良い事を思い付いた。
この時間が止まった空間で、私だけは動く事が出来る。
じゃあ選択肢を選ぶのはちょっとこっちに置いておいて、絵里にちゅーしちゃおっか。うんそれがいい。
私は選択肢を無視し、斜め後ろに恥ずかしそうに顔を赤らめている絵里の手をそっと握る。
細くて爪の先まで綺麗に手入れされた絵里の手。
ちょっとムラムラが抑えられなくなって来たので、絵里の指先を軽く口に含む私。
甘い。うん、絵里の指って甘いんだ。
そして、私は変態だ。うん。みんなごめん。
そして私は絵里の顔に自身のひょっとこみたいな顔を近付ける。
すいません、絵里さん。
その美味しそうな唇、頂いちゃいます―――。
まさに私の『かわはぎ』のような唇が絵里の唇に触れようとした瞬間……。
『おい。そこの変態』
「ビクウッ!!……だ、誰だ!?」
何処からか声がした。
え?警察の方?
私まだ犯罪は犯す寸前というかまだ未遂だよっ!
『まだ未遂って……。これから犯罪を犯すつもりなんだろう?『神坂ゆかり』』
なんか教室の天井から徐々に足から現れてくる謎の人物。
ていうか天井からすり抜けてくる辺り人間じゃないねコレ。
え?運営?
あ、でもオンラインじゃないから運営出て来ないか……。
そしてゆっくりと机の上に着地する黒服の人物。
黒いパーカーのような物を着ていて、頭からフードも被ってるし。
でも一番目立つのはあの肩に抱えている大きな『鎌』だよね。
え?何?厨二病の人?
『……一つ言っておこう。神坂ゆかり』
「あ、はい」
『……。お前の心の声、駄々漏れだぞ』
「……………。……………まじかっ!?」
なんと言うことでしょう……!
この私の繊細且つ、いたいけな少女チックな乙女心満載なこの心を勝手に読み取るなんて……!
お前殺す。
『……僕を殺す?この僕をか?……神坂ゆかり。お前は誰に向かって口を聞いているのだ?』
「いや……もちろん知らないけど」
『……僕に喧嘩を売っているのか?……それとも状況が分っていない、ただのアホなのか……』
なんか凄い言われよう。
ていうか男の子?女の子?
声が中性的過ぎて、しかもフードで顔が見えないから判断がつかないんですけど。
男だったら無視するかぶっ殺すし。
女の子だったらお召し上がりしちゃうかもしんないし。
真ん中だったら……オークションにでも出して高値で売る……?
『……聞こえていると言っているのが分らないのかこいつ……。一度痛い目に合わないと分らんか……』
フードの男は担いでいた大鎌を振り上げた。
え?それ本物?
本物だったら教室でそんなもの振り上げたら危ないよ!
天井の蛍光灯とかに『がしゃん!』ってなったら先生に叱られるよ!
私はバックレるけど!
とか考えているうちに、フードの男は大鎌を私に向けて振り抜き。
私の身体は真っ二つに。
「振りぬいたああああ!!!そして私死んだああああああああ…………あれ?」
死に際の台詞くらい明るく突っ込んでやろうと思った私だが。
お腹から真っ二つにされたはずなのに、生きている?
というかお腹もくっついている?
「………あ」
と思ったら、制服が一気に粉々に吹き飛んだ。
そして私は全裸になりました。
これ、何の脱衣ゲー?……やった事無いけど。
『……ふん。頭はおかしいが、身体は良いものをお持ちの様で』
「きゃあーーーー(棒読み)」
『……でも馬鹿は馬鹿なのか。……何故『主』はこんな奴を選んだのだ……全く……』
取り合えず恥ずかしいのには違い無いので軽く胸と下のほうとかも隠してみる。
てかお前が犯罪者だろ!
女子高生の制服ズタズタにして全裸を晒すて!
運営!運営さんいらっしゃいませんかぁ!
警察呼んで下さい!今すぐに!変態がいまあす!ここに変態が!
………てか『主』って何ぞ?
『……まだフザケルのか。……まあいい。神坂ゆかり』
「あ、はい」
『お前に与えられた使命はこのゲームのクリアだ。それ以外の事には手を出すな。……それだけだ』
ゲームのクリアが私の使命……?
それ以外の事って……。
『言葉のとおりだ。神坂ゆかり。お前が今、しようとした事も含め、選択肢を選択する以外の行為全てだ』
「え?息を吸うのも?」
『……』
おい!
そこは『お前は小学生かっノ』でしょうがっ!!
『……付き合いきれんな。僕はもう戻るよ……』
「あ、おい!あんた名前は……」
また上空に消えていこうとするパーカーの人物。
てか性別どっち?そこんとこ非常に重要なんだけど!
―――僕は……そうだな……『使者』、とでも名乗っておこうか、神坂ゆかり―――
「なんかのアニメっぽい名前キタあああああああーーーーー!!!!!」
多分弟が随分前から騒いでいたアニメにそんなのがいた気がする。
私はアニメを全く見ないので知らないのだが。
「使者くん(ちゃん)か……。なんかビミョーな名前だなぁ……」
まあいいや。
で?余計な事はするな、と。
あーあ。せっかくこの選択肢を選ぶ間の硬直時間(?)を利用して私の溢れんばかりの欲望とか満たして満たして満たし尽くそうかなーなんて考えていたのにぃ。
仕方が無いので選択肢へと戻る私。
→《選択肢を選んでください》
どうせ普段は私の事をオカズにシェイクシェイクブギウギを楽しんでいるんでしょう
……もしかして男優の方が目当てなんですか?
とにかく気持ちが悪いので窓から突き落とす
「……めんどくせぇから1番でいっか!」
私は1番を選択し『決定』を押した。
そして動き出す世界。
私の口も勝手に喋り出す。
「どうせ普段は私の事をオカズにシェイクシェイクブギウギ……」
「か、、、かかか、、、、、神坂あああああ!!!!」
いきなり台詞中に私に襲い掛かる松永。
「ゆ、ゆかり!その格好……!///」
格好……?
「…………………あ」
「か、、、、かみかみ、、、、、神坂ああああああ!!!!!!」
おい。
使者。
お前私の服、戻して行かなかったのかよ。