第五話 「運命の出会い」
そうして翌日の朝、ロタリンギア家の紋章の入った馬車で三人は城下町をゆっくりと走っていた。
「とても、大きな街です……」
そう言って呆然としたように言うリースを両親は、優しげに見守りながら
「そうだろう。ザールラント帝国が六百年を懸けて作り上げた城下町だからな。この、ローランド大陸
においても随一の大きさを誇る街なのだよ」
そういって父親は、ほんの少し誇らしげに語った。
「(本当に、でかいな。魔法を除けば、古代から中世のヨーロッパという感じだが、これほどの街は
存在していなかっただろう。何よりも無秩序に街が広がっているのではなく道路が完璧に舗装されているのが凄い。しかも、一部は水道まで整備されているようだな。これは外観以上に文明は高いとみるべきだな)」
そんなことをリースが馬車の小窓から外をみていた時だった。
リースの視界に一人の少女が目に入った。
とてもやつれて、ボロボロの服を着ていた。
灰色がかった髪は、今まで切り揃えたことがないように腰の辺りまで伸びていた。
それだけなら、ただの孤児院か浮浪者の子供と思いリースも気にしなかっただろう。
しかし――
しかし――
しかし――
その耳は、頭の上に付いていた。
髪と同じ灰色をした耳が頭から生えており、その耳は垂れることなく天を向いていた。
そして、腰のやや下あたりからは尻尾が生えていた。地面に付くほどもある尻尾。
それは、見間違えようのないものだった。
「(夢じゃない……夢じゃない……夢じゃない……確かに、目の前に居る。
ネコの姿をした少女が目の前に居る。
ああ……神よっ! この前はすまなった。
お前は決して二日酔いでこの世界を作ったのではなかったのだな。
お前は、極上のワインを嗜みながらこの世界を作ったのだろう)」