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第3章 番外編

3章 番外編


「正也よ。1月の修行をよくぞ耐え抜いた。まずは、世界の皆に此度の勇者の実力を、希望の光を披露するためナスカの闘技大会へ行くのだ」


王様からそう言われ旅に出たが、なんだかゲームの主人公になった気分だけどここは僕にとっては現実世界なんだ。僕が負けるということは僕の命を落とすだけでなく、希望の光をなくすことになる。絶対に負けられない。そう思うと思わずこぶしに力が入る。


「正也様、そう気を引き締めすぎる必要はありませんわ」


リスティーが手をそっと握りながら励ましてくれる。


「そうですぅ。正也様は勇者の象徴である神話魔法を使えるようになったじゃないですかぁ」


そう、城の図書館でふと気になる本を見つけ、読んでいると勇者が使っていた魔法に関する本だったのだ。そのうちの1つがゲームやアニメではよく使われる魔法だったので真似をしてみた結果できたのだ。オージェ様の言うイメージを強く持てば出来ないものはないという教えの通りやった結果だ。


「そうだぞ。それに魔法だけでなく剣技も本気の私でも危うくなる程の実力を1月で身につけたのだ。大会まで時間はある。自信を持て」


剣技についてはもともと剣道のおかげで相手の動きを読む力は多少なりにもあったし、ステータスのおかげでより反応しやすくなった。今思い返してもこの1月は人生の中で1番濃密な1月だった。一足先に旅に出てしまった吉晃さん……今も元気にこの世界を満喫できているのでしょうか……




~~☆~~☆~~~


場所が変わって、アルトランド城。吉晃はひとり城の部屋でのんびりと過ごしていた。


「はぁ、まさか出航日前にリリーが体調を崩すとはな」


最初は国の者の陰謀かと疑ったが、本当に体調不良らしい。症状を聞いても曖昧な返事しか返って来ずわけがわからなかったが、時間でしか治せない症状らしいので出航日をずらすことにした。


「ヨシアキ様、入ってもよろしいでしょうか?」


リリーの看病をしていたはずのエリーゼが俺の部屋に尋ねるとはどういうことだろう。考えても仕方がないので部屋に招き入れるために扉を開けるとエリーゼだけでなく姫さんも一緒にいた。


「姫さんと一緒とは珍しいな」


「リリー殿とエリーゼ殿と話をしていた時にヨシアキ殿の話題になってな。2人と相談した結果、時間があるのでこれを機にやってしまおうと思って来たのだ」


やるって何をやるつもりだ?リリーとエリーゼが了承したのだから危ない話ではないにしろ当事者を除けものにして話を進めるなよ。


「いったい何をやろうっていうんだ?」


「それは、これございます」


そういうと、エリーゼはテーブルにワイングラスと液体の入った数本の瓶を置いた。


「ヨシアキ殿は飲めないと聞いた。本来なら気にすることもないが、リリー殿と一緒にいるのであれば飲めないのは不味い。毒として盛るつもりがなくても寝てしまうようでは今後に差し支えてしまう」


たしかにそうだ。酒の場で拒み続けることはできても知らない内に飲まされましたじゃ笑いごとでは済まされない。


「そこでだ。王族が下戸であるというのは国の恥であると言われ、アルトランド家では水のように飲めるよう幼少のころに訓練される。その方法でヨシアキ殿の飲めない体質を変えようという訳だ」


なるほど、国柄が原因とも考えられるが王様や殿様が飲めないイメージが全くわかない。そういう訓練があっても不思議ではない。話の流れに疑問はないのだが……


「申し出はありがたく思うが、病人の主様の看病をせずになぜにここにいるわけだ?」


「ヨシアキ様の身を案じて毒見役として参りました」


そういうことね。国の恩人であれどそれを妬ましく思う輩もいる。それの対処としてエリーゼに任せたという訳か。


では、さっそくということで瓶の液体をワイングラスに注ぐ。見た目はただの水の様な感じだが匂いで水ではないとわかる。ただ、これが何なのかと聞かれてもわからない。まずは飲んでも大丈夫と見せつけるように姫さんはぐっと液体を一気に飲み干した。それを見たエリーゼはワインを確かめるかのようにグラスを回したり香りを確認したりして液体を飲んだ。


「(これは……)毒()入っていないようです」


「そうか、んじゃ俺も」


普通に水を飲む感覚で液体を口に含ませる。しかし、それが大きな間違いだった。大きく傾けたグラスを見て2人が焦ったように呼び止めるが時既に遅しだった。


「ブハッ!!」


盛大に液体を吐き出す。それで治まると思ったがのどが焼ける感覚が治らない。急いで別の液体を飲まされのどの痛みが治まった。


「いったい何を飲ませたんだ!?」


「これは大和にあるのど殺しと呼ばれる酒だ。アルコールの強さは世界屈指の代物で要は度数の高い物で体を慣らすという手法だ。まさか、男らしく一気に飲むとは思わなかった。すまない……」


名前の通りのどをやられるかと思う程の酒だ。それを飲んで平然としている2人はどれだけ酒につよ……


「「 ヨシアキ(殿・様) 」」


~~☆~~☆~~~


「気がつかれましたか?」


気がつくとベッドに横になっていた。いったいどれ程寝ていたのかと時計を見ると3分しか経っていなかった。


「やけに目が覚めるのが早い気がするんだが何かしたのか?」


「ああ、気付け薬嗅がせたのだ」


本当に弱いのだなと内心で言ったつもりだろうが、声に出ているぞ。


「用意が良いな」


ベッドから起き上がると体を軽く動かしてチェックをするが異常なさそうだ。


「つまり、今回の訓練は度数の高い酒を飲んで耐性を付けると言う方法なのです」


「倒れるまで飲まされて、倒れても無理やり起こされるとは酒好きならともかく俺にとっては苦だな」


徐々に体を慣らすのかと思っていたが、まさかの荒療法だったとはな……ちょっと待て、飲まされ続けるということは言い換えれば飲み放題。毒見役として参加する酒好きのエリーゼにとっては願ってもないご褒美じゃないか!?


「エリーゼ、おまえはこのことを最初から知っていたんだよな」


「はい。ちなみに姫様もご存じごでざいます」


「もうやけだ。リリーが治る前に絶対に耐性をつけてやる」


こうして俺は飲んで倒れてを繰り返したおかげで徐々に倒れるまでの時間が長くなり人並みに飲めるようになった。

後日、リリーも回復し結果を伝えるとロザリオでズルをしていたのではないかと指摘された。俺が否定する前にロザリオのことを知らない姫さんが否定して飲めることを証明しようと今度はリリーも含めて飲み会が行われた。ロザリオなしでも飲めることが証明され調子に乗っていろんな酒を飲みまわされた。翌日起きると頭が痛くて動けなくなっていた。どうやらロザリオのおかげで二日酔いにならなかったようで、外して寝てしまったため動けない。今更身につけても無効化でもすでになっていては対処の仕様がないらしく大人しく薬を飲んで苦しい時が経つのを耐えるしかなかったのだった。



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