第47話
第47話
いきなり、襲われる俺。一瞬かわそうとしたが、剣を抜いて攻撃を防ぐ。あれだけ大きな剣だ。避けて後ろにいるリリー達に当たらない保証はどこにもない。さすがに、最強クラスの一撃だけにずしりと重く気を軽く持っていたら剣を弾かれそうだ。
「ほぅ。今の一撃に耐えるとは、やはり見込みは正しかったようだの」
「ケガをしたらどうするつもりだったんだ」
「なに、さっきのは見せかけでやろうとしたところをお主が防御の体勢をとったからそのまま打ちこんだだけじゃ。次はどうかな」
キャラ最速のアンジュ、大剣使いとは思えないほどのスピードだ。閃光と言われるだけあって、今まで見てきた者達とは天と地程差がある。
「ほれほれ、守るだけじゃ勝てぬぞ」
「なら、こっちから行くがケガしても知らねーぞ!」
剣を弾き飛ばせば終わるだろうと強くなぎ払ったが、簡単にいなされてしまった。
「力自慢のようだが、その程度の浅知恵で妾を倒せると思うなよ!!」
今度は斬撃から乱れ突きに変わりスピードが跳ね上がった。ステータスのおかげで斬撃そのものは見えるが斬撃をさばき切れずステータス依存の回避行動で無理やり避けきる。
「……解せぬな」
俺のなぎ払いをバックステップでかわし、攻撃してくるかと思ったが、剣を下げやる気をなくしたようだ。
「いったい何が解せないんだ?」
「それに関してはここで話すのはまずいな。騒音のせいで兵が確認をしに動きだしたようだ」
そう言われて兵士たちが大道からこちらへと近づいていることに気がついた。俺との戦闘中にそんなことまで気が回るとは、チートの俺では出来ない戦闘経験が成す技なのか?
「私の宿で話すとしよう。お主達も妾がなぜこんなことをしたのか納得がいかぬだろう?」
「わかったわ。あなたの経歴を知っているから今は不問にするけど、納得がいくまで話を聞かせてもらうわ」
~~☆~~☆~~~
アンジュが泊っている宿へと来たが、まさにVIPルームとも言えるような部屋だな。
「ここなら誰にも邪魔も盗み聞きもされず、安心して話せる。知っておるかもしれんが、妾の名はアンジュ。世界で数える程しかいないSランク冒険者じゃ。挨拶が遅れたが、久しいのうディアナ姫よ」
「アンジュ殿、お久しぶりです。闘技大会に出るということでナスカにいると思っていましたが、なぜここに?」
「いやなに、大会の前に野暮用でこの港で待っておったのじゃが、意外と早く終わったな。質問についてじゃが、答えるが妾からもいくつか聞かせてもらうぞ」
「なら、先に聞かせてもらうが、なぜヨシアキ殿に挑んだ?」
温厚な姫さんの眼が鋭くなった。あれか?恩人に危害を加えようとしたから怒っているのか?
「よ、よしゅ……その者の名か?まぁ、簡単に言うなれば猛者を探しておったのじゃ。噂では勇者が召喚されたと聞いて実力を試したいと思ってこの港にいれば会えると思っておったが、まさかこんなにも、はよう会えるとはな」
「残念だが、俺は勇者じゃないぜ」
「嘘を言うでない。ユルカとアルトランドの姫君を連れているお主が一般人のはずがなかろう?」
「一般人ではないのは確かでございますが、勇者でないのも真です」
たしかにそうであるが、どう説明すべきか考えていたところを
「なぬ!?」
アンジュはエリーゼに言われ驚きを隠せないようだ。
「アンジュ殿は口が堅い。本当のことを言ってもかまわないか?」
~~異世界人説明中~~
「なるほどのう。だから実力がちぐはぐなのか」
「なんでそう思ったんだ?」
「はっきり言えば、お主の剣術はいくら得物が違うといえど、素人に毛が生えた程度だ。しかし、身体能力は妾以上のものだ。魔物を狩り続けてステータスが上がっているというなら多少は納得できるが、その範疇を越えている」
なるほどな。だからギリアムが『所詮、若僧か』と言っていたのか。
「なんで双剣使いじゃないと言い切れるんだ?」
実力については先程の説明で納得したが、得物が違う理由にはならない。
「左手は薙ぎと払いしかしなかったのもあるが、間合いの取り方だ。踏み込む際は構えた後に1歩前に踏み込んでから斬りつけていた。大和の国でそういう剣術使いがいたが、お主のはそれとは少し違っておった。おそらく本来の得物は妾と同じ大剣であろう?」
「御名答。たしかにメイン武器は大剣だ」
やはりSランクの称号をもっているだけあって、あっさりと見抜かれてしまったようだ。
「ヨシアキの大剣っていったいどんなの?」
はてさて、これはどうすべきか……神様が言っていたことから考えると問題になりそうだが、このメンバーなら別に見せてもかまわない気がする。
「きれい……」
幾千もの戦いをしても曇りの一つない金属美を魅せる大剣。誰が言ったのか、それともこの場にいる全員の言葉だったのか、そう微かに聞こえた。
「……ベルクラントという名前は聞いたことあるか?」
「先代勇者マサムネが魔王を倒した時に使っていたと言われる聖剣のことでしょうか?」
エリーゼがそう答えて、やっぱりそうかと思ってしまった。もしかしたら、俺が正也に大剣を使うよう勧めたのが原因かもしれないが、ゲームの主人公ともいうべき正也が大剣使いとなったからこの世界では大剣が聖剣になった可能性もあるな。
「……まさか!?いや、ヨシアキならあり得るけどいくらなんでもそれは問題になるわよ!」
俺の様子からリリーが察したようで、イスから立ち上がり声を荒立てる。
「そういうことだ。だからこれはここぞと言う時以外は使うつもりはない」




