第45話
第45話
アルトランド城に滞在して早1週間が経とうとしている。なんでこんなにも滞在しているのかは俺やリリーの体調不良により出航日にはまともに動けないというアクシデントが起きたからだ。先延ばしは城のやつらの陰謀ではなく本当に体調不良らしい。らしいというのは、俺のは自業自得?なのでそのことについては次の時に話すとして、リリーのも念のためということで詳しいことは俺にはわからない。深く理由を聞くのは野暮だし急ぎではないので、次の出航日までアルトランドに厄介になっている。
滞在中は観光をしたり、城内で体を動かしたりとのんびりとした時間を過ごしていたが、明日には城を出る日になった。最後の夜ということで、しんみりとした雰囲気だ。そう感じるのは城の連中から面倒な勧誘が全くなかったからだ。誰かさんが王家転覆を謀ったせいで、俺にまで手が回らなかったと思う。このまま最後の夜を過ごせればいいんだが……
「やっぱりそう言う訳にもいかないか」
扉をノックされベッドから起きる。リリー達はさっきまで話していたのでリリー達の可能性は低いので足取りが重く感じる。
「はいはい、どな……お、王様!!」
扉を開けてびっくりだ。さすがにここまで考えがいかなかった。一国の王がわざわざ出向いてくるとは、そこまで緊迫している状態なのか?
「夜分遅くにすまないね。漸く時間がとれたので最後に君と話がしたくて来たのだが、お邪魔してもかまわないかね?」
「かまいませんけど、王様が気安く冒険者の部屋に来て家臣達に怒られませんか?」
随分とフランクに話しているが、そうしないと王様の機嫌が悪くなるので敬語に慣れていない俺にとってはありがたい。
「心配せんでも、そう言う意味で来たのではないので警戒するなとは言わんが、固くなる必要はないぞ。しかし、お邪魔すると言ったが、この部屋ではゆっくりと話ができそうにないな。テラスで月を見ながらでも話すとしよう。」
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「まずは、改めて感謝する。君のおかげでディアナの命を守ってくれただけでなく我が国の膿を出すのが捗っている」
「その話はもう済んだ事ですよ。それよりも本題は何ですか?」
話の切り口としてはありきたりのことであるが、今その話を持ち出すのは本題がお願い事であるのは物語のお決まりなので容易に想像できた。王様と語らうのは嫌いではないが、やはり腹の探り合いは気が進まないので要件を済ましておきたい。
「君はせっかちだな。まぁ、そのディアナのことなのだが、今度の闘技大会に国の代表として選出させようと決まったのだが、その護衛を君にお願いしたいのだ」
「これまた、随分と信頼されたものですね。そう言うのは城の誰かの仕事では?」
「この際、膿を全て出し切ろうかと思っているのだが、そうなるとまたディアナが狙われかねん。城の中では護衛を任せるにしても誰が敵なのか情けないことに分かり切っておらぬ。そうなると事が終わるまで城を出てもらった方が動きやすい。しかし、ディアナの護衛を付け過ぎるのも出来ぬ故、君達に連れて行ってもらおうと考えたわけだ」
若干皮肉気味で言ってみたが、特に気にすることなく王様は情けないふりをしてそう言った。
「なるほど、ある意味一石二鳥ですね」
さっきの言葉は、明らかに嘘をついている。王様であれば懐刀となる人物がいるのだからそのものに任せれば何も問題はない。さっきの話をしたのは俺を説得させるための本当のことを混ぜた嘘話だろう。嘘と真実を混ぜることでどこまでが真実かわかりにくくして、嘘でも本当のことのように聞こえてくる。その辺の交渉術は持っていないのでよくわからないが、そんな俺でも王様の目的は、城から人員を割かずに最も安全な場所に預けられ、俺との親密度を高めることだろう。
「ちなみに報酬は我のことをパパと呼ぶことを許可しよう」
「ブッ!!」
何考えてんだこの王様は!!
「なんじゃ、まさか報酬が気に食わんとは言うまいな」
「意味がわかりません!!」
分からないと言うのは嘘で、考えたくはないが、姫さんを嫁としてどうだということだろう。
「ディアナは口を開けば君のことばかり話すのでな……父としては好意を持っている男と添い遂げてやりたいと常々思っていたのだが、なかなかそう言う男と巡りあわなかったのでな。せっかくの機会だから父として応援をしてやりたいわけだ」
親バカなのか……その話を鵜呑みにするなら姫さんが俺に気があるかもしれないということだ。自分で言っちゃなんだが、女の琴線なんてこれっぽっちもわからないので、そう言えばあの時……なんてことは思いつかない。
「安心しなさい。まだ、娘の口から君のことが好きだと言う朗報は聞いておらん」
安心できるか!!考え込んでいた俺を見て王様がそう言うが、コントよろしく立っていたらずっこけていたに違いない。現に座っていても肩がガクッとずり落ちた。
「まぁ、いいですよ。旅は道連れ、世は情けという言葉もあるので、引き受けます。ただし、報酬は別でお願いします」
「なんじゃ、娘さんを僕に下さいとでもいうことか?」
「違います!!」
「本当に娘が気に入らんのか?まさか、ロリ……」
「あまりにも割に合わないでしょう。ただの護衛であんな出来た娘さんをもらうなんて出来ません。美人で性格もよくて人徳もあって、あんな女性と添い遂げられる男は幸せ者でしょう。俺だってバカだったら喜んで貰い受けてしまいますが、マイナス思考なので後先を考えると誰とも付き合うなんて考えはできません」
あれ、ロリコン疑惑を解消するために姫さんに興味があるという話を含ませたいとは思ったが、断る理由がなんか間違ったような気がする。しかも、王様の目が明らかに嫌な意味で変わった。
「なるほど、君の意見はよく理解した。ならば、前払いということで別の物を用意するとしよう」
全然理解してないよ!――――はぁ、抗議するのもバカらしく思えてきた。
「結局同じことでは?」
「いいや、マイナス思考が終われば、喜んで貰い受けてくれるのであろう?」
証言をとられた!?いや、おそらく王様としてはそういう証言を言わせようとボケていた可能性が高い。普段はフランクな王様だが、節度を持ってこちらと話をしていた。今回は男同士の会話ということで、そういう話をしたのだと思っていたが、最後にやってくれたな。
「俺が姫さんを選ぶとは限りませんよ。その逆の断られる方が高いと思いますが」
「この前は随分といい雰囲気になっていたと思ったが?」
内容だけを見ればそうらしい。らしいというのは、俺がそのことをよく覚えていないからだ。俺の体調が悪くなった要因は私にあると言って責任を持って看病させてほしいということだったらしい。
「ただ責任感が強いから看病してくれただけだと思いますが?」
王様がため息をつく。何この乙女心をわかっていない若者はという眼は……どうせ俺は鈍感ですよ。期待を膨らませてバカを見るくらいなら鈍感の方がいいじゃないか!!
あえて言わせてもらおう、鈍感ではなくヘタレであると!!




