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第43話

第43話


ふむ、毎度のことながら殺気のノックダウンはやり過ぎだったと雀の涙くらい反省してしまう。失禁してないのが救いだが、毎回これをやっているとそのうち殺気に当てられて被害者がでてきそうだ。


「終わった―。あーしんど」


陽気な雰囲気を出すのは、リリー達は前回(魔人戦で)見ているので耐性ができていると思うが、姫さん達は初見なので殺気全開の俺ではなくいつもの俺に戻ったことをアピールするためだ。


「お疲れ様。人間やめた感想は?」


「ヨシアキ様、人外認定された感想をひとこと」


ふたりは俺の意図汲んでかそんなことを聞いてくる。


「……人外認定を否定できないのが悔しい」


考えたら炎属性の最強魔法をくらって平然としているのは人外だと言われても仕方がない。ギリアムの魔力が普通の人からすれば実力者の上位にランクinするが、俺のレジスト能力が異常に高いからダメージなんて蚊に刺されたレベルと言いたいが、実際は軽いやけど程度なので(それでも異常)人間業とは思えないな。


「ほんとにヨシアキ殿なのだな?」


姫さんが信じられないようなものを見る目で俺に聞いてくる。信じられない出来事のオンパレードで頭が追いついて来ないのだろう。


「おう、魔人でも幽霊でもない紛れもなく人間の四条吉晃だぜ」


「隊長……なぜこんなことに……」


イリアの方を確認すると若干放心状態になっている。まぁ、無理もないか。心酔レベルの隊長大好き娘が物の見事に裏切られてしまっては絶望したくもなるのは理解できる。


「……イリア、ギリアムの思いがどうであったのか本人にしか分からないが、彼は彼自身の信念を貫くために逝ったのだ。彼を失ったことは残念だが、現実を受け止めろとまでは言わない。今までの彼の行動全てを否定する必要はない」


「おい、ギリアムはまだ死んでないぞ……そろそろアルトランドに向かいたいんだが、こいつをどう運ぶべきか……」


しかし、普通に考えれば俺がこいつを背負って運ぶしか方法が思いつかない。女性陣にこいつを運ばすと言うのは酷だから除外するとしても背負うのは嫌だな。かといって、放置すると後処理が面倒なのでどうしても連れて行く必要がある。あ、そうか。別に背負う必要はない。足でも抱えて引こずって行けばいいんだ。その考えに到り提案しようかと思ったが、馬の蹄の音がする。音がする方を確認すると4頭の馬がこちらに近づいてくる。残党かと思ったが、「姫様~」という声を聞いて姫さんが警戒をといたので味方であると判断した。


「姫様!激しい戦闘が行われていた模様で、いてもたってもいられず条約違反でありますが緊急時故、駆けつけてまいりました。処罰は覚悟の上です」


最初にこういう騎士に出会っていたなら今頃城で訓練でもしていたんだろうな。


「心配をかけたな。私はこの通り無事だ。ただ、ギリアムが謀反を企てようとしたが、ここにいる彼らに助けられた。これより、彼らを城まで護衛を命ずる」


「「 はっ! 」」


驚きを隠せないようだが、姫さんの命令と言うことで早々にギリアムを縛り上げ馬に乗せる。しかし、彼女らではなく、彼ら……リリーが代表でないのはどうしてなんだろうか?


「皆様、足はこちらをお使いくださいませ」


「ヨシアキは馬に乗れないのよね」


「よくそんなこと覚えているな」


馬に乗れないのは前に話題になったが、他愛もない与太話の1つだった気がする。


「ヨシアキ様の事ですから当然の事です」


なぜ俺の事なら当然なんだ?リリーは俺の保護者的な感覚でいるのかね?


「では、私の後ろに乗るとよい」


「いえいえ、ディナ姉様がお手を煩わす必要はありません。私の後ろに乗せますわ」


ふたりがお荷物()の取りあいをしている。え!?なにこの状況?どちらも引く気はないようで、互いにそれらしい理由を付けて相手を納得させようとしている。兵士たちも姫さんの提案に驚いており、俺を見ながらこそこそと話し合っている。


「ちなみに、どっちにも乗らないという選択肢は?」


「「 ないわね 」」


当事者になって漸く物語の主人公の心労が理解できたよ。この状況を無難に解決するためにはどうすべきか……


「……なら、申し訳ないが姫さん頼むわ」


「なぜ、そのような結論に至ったのか解答をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


少々不機嫌なリリーを見てエリーゼが聞いてくる。いくら責任感が強いからといってあからさまに不満ですという顔をしなくてもいいと思うんだがな。


「本来なら姫さんの後ろには誰も乗る訳にはいかないんだが、馬の数と人数の都合上二人乗りしないと誰かが乗れなくなる。イリアがあの状態では手綱を持たせるのには不安があるから除外。乗るならリリーが乗るべきなんだろうが、ふたりして選択肢を消したから俺と姫さん、リリーとエリーゼという組み合わせしかないからで納得してくれるか」


うん、我ながらうまくまとめられたと思う。本音を言えば気軽に頼めるリリーにしたいところだが、ここは姫さんのお言葉に甘えるのが無難だろう。


「そういうことなら仕方がないわね」


「組み合わせが決まったところで城へ向かうとしよう」


それぞれが馬に乗りいざ出発。俺は正直に言うと馬に乗って移動するのは遠慮したかった。あれって乗り慣れていない人からすれば逆に疲れるし、迂闊に姫さんに触ると面倒事にしかならない。竜に乗れるから早く着いてくれと言うよりもこの状況が早く終わってほしいと思うのだった。


~~☆~~☆~~~


20分ほど進むと漸くテントが見えた。おそらくあれがアルトランド兵の迎えだろう。徒歩の兵士がいるため、歩く程度の速度で馬を進めていたのでそれほど疲れることはなかった。


「姫様!!ご無事で何よりです」


「心配をかけたな。早速だが、籠の準備はできているか?」


「はっ!すぐにでも飛び立つ用意がございます」


「強行軍ですまないが、ここで休むよりも城で休んだ方がいい」


「城まではどれ程で到着するのですか?」


エリーゼが質問すると、兵士は少し考える素振りを見せた。


「1時間程で到着すると思われます。天候や飛竜が寝ぼけていなければという前提ですがね」


そこは言う必要はないと思うのだが、バカ正直とでも言うべきなのか?しかし、飛竜は夜行性ではないため生き物故に真夜中に働かされるのは嫌になるよな。


「では、こちらへ」


待ちに待った飛竜とのご対面だ。飛竜自体はゲーム上で対面済みだが、空を飛ぶと言うのは人の夢。待ち望まない人間は高所恐怖症の人達ぐらいだろう。魔法で飛んでみようとやってみたが、イメージが弱いのかゆっくりと降りることできたが浮上することはできなかった。いろいろと試してみた結果、人が自力で飛ぶことは世界のルール上不可能であると思い諦めた。


「大空よ、待っていろ」


「いくらなんでも、はしゃぎ過ぎよ」


~~☆~~☆~~~


あれから予定通り城に着いた。道中はどうしたかって?聞いてくれるな……現代と違って夜の明かりは月ぐらいしかない。つまり何を言いたいかと言うと空からの眺めは暗くてほとんど見えませんでした。俺の歓喜を返せ!!もしくは、やり直しを要求する!!


「姫様、よくぞご無事で。国王様がお待ちしております。早く姫様より無事を国王様にお伝えください」


こんな真夜中まで王様が起きているとは何事だ?単なる親バカであればいいが、姫さんが任されたことが余程重要なことなのか……できれば前者であってほしいものだ。姫さんに連れられて城の奥へと進み玉座の間らしき場所に着いた。そこには、まさに王様と言うべき人が待っていた。


「ディアナよ、よくぞ無事帰って来た。襲撃を受けたという報告を受けた時は今すぐにでも駆けつけたかったが、立場ゆえに迎えに行けなかった父を許しておくれ」


エリーゼから善王と聞かされていたので、どんな人物だろうと気になっていたが、やさしい顔をした想像以上にいい人そうだ。


「父上、もったいなきお言葉です。リリシア殿達のおかげで無事生きて帰ることができたのです。彼女らには感謝しきれません」


先程は彼らと言っていたが、王様の前ではリリーを立てるのは互いの面目を保つためなのだろう。


「ユルカの第2王女リリシアとその従者よ、我が娘を救ってくれたことを感謝する」


「当然のことをしたまでです。アルトランド王」


「して、ディアナよ。例のものは」


そう言うと姫さんは懐から手紙を取り出し王様に渡す。しばらく難しそうな顔をして読んでいたが、安堵のため息をしてこちらに目を向けた。


「ふむ、無事承諾してくれたか。ならば書状の責務を果たすとしよう。よくぞ、我が娘を救ってくれた。異世界より来られしシジョウ・ヨシアキよ」


俺の正体がバレている!?



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