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第38話

第38話


途中休憩を入れながら歩き、日が傾き始めた頃に漸く街に到着した。あれから何度かモンスターと遭遇したが、今度は全員が戦ったので、1人2体ぐらいだから森の移動時よりもはるかに少ない。


戦闘後、リリーとエリーゼが不思議そうに自分達の手を見ていたが、気にしてもしかたがないので放置。


「やっと街に到着か……」


「予定よりも早く到着できたな。とにかく今夜の宿を探しに行こう」


俺の感想とは反対に、ギリアムは否定してきた。一瞬ムスッとなったが、他のメンバーの様子を見るとギリアムの方が正しいことがわかった。


「カルールなら大通りに大きな宿があります。あそこなら人目に付くので昨日の輩もむやみに手出しはできないはずです」


「そういうことなら、その宿にしよう。案内を頼む」


少し考える素振りを見せたギリアムだが、姫さんを見て異論がないと判断しそう答える。


「畏まりました。こちらです」


エリーゼに先導されながら宿へと向かう。


~~☆~~☆~~


宿に着くと部屋の準備が必要ということで先に食事を済ませる。リリーと姫さんは会食のように話をしながら食べているが、従者達は警戒をしながらの食事なので会話に混ざっていない。俺もこれといった話をすることがなかったので、大人しく食事を済ませる。食事が終わる頃には部屋の準備が終わったらしく、移動して部屋へと入ろうとする。


「さてと、そんじゃ休ましてもらうわ」


「待て!!」


「……なんだよ」


部屋に入ろうとした俺を呼び止めるギリアム。


「なぜ貴様がその部屋に入ろうとする」


何かおかしいことがあるか?――周りを見てふと気が付く。


「ああ、そう言うことか。いつものくせで、なにも考えずに入ろうとしたわ」


そう、俺は何も考えずにリリー達が入った部屋にそのままついて行こうとしていた。2部屋とったからグル―プごとに休むのだと思っていたが、男女で分ける予定だったみたいだ。


「「 い、いつも!? 」」


驚く、姫さんとイリア。うん、これが普通の反応だよな。あの時の俺は間違っていなかったのが2人の反応でよくわかる。


「なにか問題でもあるのか?」


ギリアムと同室になりたくないので、適当にごまかしてグループごとにしてもらおう。


「大アリだ!!年頃の男女が同室など、何を考えているのだ!!」


「安全面の考慮からです。女性だけで寝泊まりするのはよからぬ者が来る可能性があるので、虫除けの意味も含めてヨシアキ様と同室だったのです」


いきなりの正論を付かれ、どう返答しようか考えているとフォローを入れるエリーゼ。


「そういう事だ。依頼主からのお達しだから従っていただけで、俺の意思で同じ部屋にいたわけではない」


これなら、逆にグループに別れる理由にもなる。サンキュー、エリーゼ。


「3人で同じ部屋、同じベッドで過ごした仲ですから何も問題ありません」


前言撤回!!しれっと、問題発言してどうする!?こんなところで、エリーゼのドジっ娘属性を発生させるなよ!


「――ならば、見逃すわけにはいかない。貴様は私と一緒に寝るのだ!!」


……一瞬、時が止まったような気がする。ニュアンスは分かるが、さっきの話だと危ない話にしか思えない発言だ。


「ちょっと、お宅の騎士様はあっちの気があるみたいなんですが……」


「い、今のは言葉の綾だ!!私はそんなつもりは微塵もない!!」


「そんなつもりってどんなつもりなんでしょうかね」


エリーゼの問題発言をなかったことにするためにも、ここはとことん煽らせてもらう。


「ディナ姉さま、あの者は2つの意味で大丈夫なのですか?」


2つとは、ホ〇疑惑とそれを否定するために、自分達を襲わないかの意味だろう。リリーがそんなことを言うのが不思議だ。ん?周りから怪しまれないように眼で訴えている。つまり、俺の意図を読んで便乗したということか。


「私も正直分からない。ただ、そうであったとしてもそれを理由に見捨てるつもりはないぞ(……多少引くとは思うが)3人部屋と4人部屋なので国ごとに分けられるが、さすがに私も嫁入り前に男性と同室は問題になる。すまないがヨシアキ殿とギリアムが同室で頼む」


一部声が小さくて聞こえなかったが、姫さんからの頼みだし、エリーゼのことはなかったことにできたようだし……


「仕方がない。涙を飲んでお受けしよう」


「なぜ、そこで涙を飲む必要がある!!私はノーマルだ!」


「ギリアム大きな声を出すな。周りの人達に迷惑だ」


声を張って否定するギリアムだが、嘆きに聞こえたのは俺だけなのだろうか……


~~☆~~☆~~


部屋に入って荷物を置くとギリアムは早々に部屋を出ようとする。


「2時間ほど留守にする。おまえは大人しく部屋で休んでいろ」


「なんだ、男漁りでもするのか?」


「いい加減そのネタから離れろ!!――あの襲撃は、待ち伏せであったから、あの方達には悪いが信用しきれない。情報収集に行くだけだ」


つまり、襲ってきたのがユルカの人間と疑っているわけか。ありえなくはないが、解せないな。


「下手に部屋を出るな。いいな!!」


そう言い残して部屋を後にするギリアム。からかう相手もいなくなったので暇だな。武器の手入れもしないといけないが、それも軽く磨くだけでそんなに時間もかからない。先に寝るのもアリだが、そんな気分じゃないし、妙なテンションでしばらく眠れそうにない。リリー達と話をするのもいいが、姫さん達がいるから気軽に部屋を訪れるわけにもいかないか。誰か話し相手になりそうな奴は……


「そういや、あれがあったな」


ふと、リデルからもらった通信石のことを思い出して道具袋から取り出す。


「使い方は……どうやるんだ?」


いざ使おうとしたが、使い方を聞くのを忘れていた。たぶん魔力を込めれば使えると思うが、どれくらい込めれば反応してくれるのだろう?


「物は試しというからには、軽く込めて……あー、あー。リデル聞こえる?」


トランシーバーを使うように石に話しかけて耳に当ててみる。……しばらく待ってみたが、反応がない。ただの屍のよ『聞こえていますよ。後、それを言うなら人に直接話しかけないとおかしいですよね?』


声に出していないのにそこまで筒抜けとは、思ったことをそのまま伝わるという仕組みなのか?


『正解です。声に出さなくても会話できるようにした結果、副作用として筒抜けになってしまうというのが難点なのですが、部下に持たせるには逆に便利だったりするのですよ』


「何というふざけた仕様。使うのは、これっきりにしておこうかな……」


『お褒めのお言葉ありがとうございます。ちなみにヨシアキさんのそれは、そんな副作用はありませんよ。伝える意思がない限り私に伝わらないのでご安心を』


「つまり、最初は俺がネタを言いたいから伝わって、2つ目は問いかけということで伝わったということか」


その言葉を信じるなら多用してもいいが、嘘である可能性があるからあまり使わない方がいいか。


『で、ヨシアキさんは何か御用があって私に呼びかけたのではないのですか?』


「いや、暇だったから話し相手に呼んだだけ」


『そうですか。そうそう、先に報告しておきますが、元帥にあなたの伝言をしておきましたよ。しばらくは大人しくしているとは思いますが、何か動きがあれば報告します。ただ、別の問題点が出てしまって……』


「なんだよ」


嫌な予感がする。有能なこいつが問題点ということは、かなり厄介なことだ。


『ヘルガとシルヴァがあなたのことを気に入ってしまって……』


うわぁ~。最悪だ。戦闘狂(バトルジャンキー)と色魔に眼を付けられるとか俺の平穏が遠ざかるというか、消滅したんじゃないのか?


ヘルガはわかるが、シルヴァとかなんでだよ!色魔だから万歳とか思う奴がいるかもしれないが、能力のせいで正直よろこんでいいのかわからない。


『極力あなたに関わらないように手を回しますが、ヘルガが稀に予想外な行動をしますからその時はすぐに連絡します。それと、今ヨシアキさんは面倒なことに巻き込まれていませんか?』


「そうだな。異国の姫さんが襲われていて、助けたらそのまま国まで護衛することになった」


『やはりそうですか……ヨシアキさん、あなたは何か取り憑かれていませんか?もしくは、運を前の世界に置き去りに……』


なぜか目頭にハンカチを当てているリデルのイメージが湧いてきた。


「ありえそうだから、その話はやめろ。――どうせ、おまえのことだから黒幕とかわかっているんだろ?」


『ええ、もちろん。でも、あなたも確証はなくとも黒幕がどこの人間かわかっていらっしゃるのでしょ?』


「まあな。答えは聞くつもりはない」


本当は聞いた方が安全なのかもしれないが、嘘を吹き込まれて判断をミスしてしまうと取り返しがつかなくなる。


『だと思いましたよ』


ノックをする音が聞こえ、リデルとの会話も終わりにしないといけなくなった。


「誰か来たみたいだから、終わるぜ。また、暇があれば連絡する。対処頑張れよ」


『――本当にあの人達には悩まされますよ。石のことですが、袋に入れてあると私から連絡とれないので、よろしければ持ち歩いてください。では、私が言うのも何ですが、お気を付けて』


つまり、袋に入れておけば安全であるということか。リデルのゲーム上でのイメージは知将という位置づけから食えない奴としてキャラ設定されているが、さっきの会話でキャラ崩壊しそうだな。……それはそれとして、来客者を確認すべく、扉を開ける。すると、そこにはリリーとエリーゼがいた。


「あれ?ギリアムさんは、どこか出かけているの?」


「情報収集に2時間ほど留守にするそうだ。あいつに用でもあったのか?」


俺がそう言うとリリー達は首を振って否定する。


「それなら好都合です。ヨシアキ様にお聞きしたい事がございますが、人目に付かないように部屋に入ってもよろしいでしょうか?」


「ああ。気が利かなくて悪いな。入ってくれ」


部屋に招き入れる。部屋に入るとエリーゼは外の様子を確認してから窓や扉を鍵までかける。


「俺に聞きたい事は?」


俺が気軽に話しかけるが、リリー達は真剣なまなざしだ。どうやら、おふざけ無用の真面目な話になりそうなので、俺も気を引き締める。


「――単刀直入に聞くわ。ヨシアキ、私達に何をしたの」


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