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第35話

第35話


あれから2列に並んで歩いている。先頭にギリアムとイリア、真中にリリーと姫さん、後ろは俺とエリーゼの順だ。先頭の2人は周囲を警戒しながら歩いていて、前の姫さんズは一応警戒していると思いたいが、のんきにガールズトークをしている。


「あの姫さんなんだけど、いい意味で王族という感じがしないんだが……」


ただ歩いているだけは退屈だったので、隣にいるエリーゼに小声で話しかける。小声の理由は、前にいる連中に聞こえると面倒事になりそうだからだ。


「そうでございますね。御父上であるアルトランド王は誠実さで国を引っ張っている御方ですから、その影響でいい意味で王族らしさがないのですよ。後、長子制ですのでディアナ様は後の王様になられるお方、今のうちに交友関係を築かれてはいかがですか?」


「面倒事にしかなりそうにないから興味ない。それに、リリーも王族だろ」


王の友人とか、妬みの象徴だろ。特に、誠実さ(あの)タイプの王様は、王の友人だから便宜を図ってくれるなんて都合のいいことはない。それなのに、こっちが好条件になったら王の友人だから優遇されていると妬まれて最悪サヨウナラだ。


即答した俺の反応を見てどうとらえたか知らないが、エリーゼはどこかしら嬉しそうな顔をしている。


「ヨシアキ様ならそういうと思っていましたよ。それと、アルトランドでは剣術よりも槍術が主流になっておりますので、アルトランドの兵士は槍を使うのが一般的なのです」


俺が、槍を見ていたことを察知して説明してくれるとは――このメイド、やはりできるな。


「ぐぅ~」


そんなアホな事を考えていると誰かのおなかが鳴ったような音が聞こえてきた。誰もが隣の人と顔を見合わせて…………1人だけ俯いている人物がいる。先頭にいるイリアだ。耳まで真っ赤だと誤魔化しようがない。


「自然現象だから、恥ずかしいことではない。休憩にしよう」


やさしい姫さんのご厚意によりランチタイム。とはいっても、襲われて食料なんてものはないので、昼用に作っていたサンドウィッチを分けることになった。


「ヨシアキ殿の袋は見たことないマジックアイテムだな。ダンジョン攻略者でもあったのか」


ゆったりとした食後のティータイムを満喫しているところに姫さんから話しかけられる。


「ダンジョン攻略者?」


何やら聞きなれない称号を言われ、ついつい聞き返してしまった。


「ダンジョンの最深部にある宝物庫までたどり着いた者をここではそう呼ばれるのですよ。ヨシアキ様は数多くのダンジョンを攻略して、それから冒険者になられたので、実力と冒険者ランクが一致していないのです」


エリーゼのフォローに助けられたが、新たな設定が加わったな。忘れないように覚えておこう。姫さんはへぇーという感じで頷いているが、イリアさんは変わり者を見るような眼で俺を見ている。普通に考えたら冒険者からはじめて攻略者と呼ばれる実力を付けるのだから変人扱いされても仕方がないか。


「貴様、それはどこのダンジョンで手に入れたのだ?」


静かにしていたギリアムが口を開いたと思ったら、相変わらずの上から目線。


「忘れた。まあ、覚えていたとしても答える気はない」


初期道具なんてどこで手に入るかなんて知らん。俺の言い方が気に食わないのかギリアムが睨みつけてくるので、こちらも睨みかえす。


「貴族が嫌いなのは別にかまわないけど、むやみに溝を深くするのはやめて」


リリーから注意されるが、強く言ってこない。俺が嫌いな理由が思いついているからだろう。そして、それに当てはまる人物と一緒にいること自体我慢してくれているとわかってから体裁上言っているようなものか。


「なら、あっちに言ってくれ。俺はこのスタイルを変えるつもりはない。褒められた行為でないのはわかっているが、間違った事をしているつもりはない」


最後の一言を偉そうに言われる筋合いはないと言い換えられるように答える。


「そう言われるとこちらに非がないと言い切れないな」


姫さんがギリアムをなだめる。不貞腐れるようにギリアムは輪から外れると何かを見つけたようでこちらに振り返る。


「全員武器の用意を!魔物だ」


そう言われ、全員が武器を手に取る。しばらくするとオオカミの姿をしたモンスターが現れた。


「ウェアウルフが15、6匹程か……昼食の礼として、ここは私達が処理しよう」


「わざわざ、姫さんが戦闘していいのか?」


姫さんの宣言に疑問を思ったので聞いてみる。モンスターのランクとしてはEランクなのだが、獣ゆえに動きが速いからEランクでも上級といった強さだった気がする。ちなみに、俺がギルドで売ったワーウルフはウェアウルフの1段階上な。


「姫様も実践経験は豊富だ。これくらい手を借りなくても十分だ。むしろ、いらぬ気遣いのせいで連携が乱れてケガをしては意味がない」


オブラートに包まれているが、言葉にとげがあるな。つまり、おまえは邪魔だということか。


「そういうことであれば、お任せします」


リリー達が武器をしまったので俺もおとなしく鞘に納める。いちいち突っかかってはしんどいだけだ。


「私が前に出て奴らを分断させるので溢れたものを姫様とイリアが。姫様は攻撃を重点的に、イリアは後ろの方々に被害がいかないように注意して戦え」


的確に指示を出すギリアム。隊長を名乗るだけあってやり慣れている感じが伝わる。


「行くぞ!!」


勇ましくウェアウルフへ飛び込む。魔法で攻撃すればいいのにわざわざしないのは、先ほどの襲撃で魔力に余裕がないためか?

それでも、ギリアムの速攻で1匹仕留める。ウェアウルフはギリアムから距離を取るために作戦通り分断された。それをチャンスとみて姫さんとイリアが詠唱し始めた。


「我が魔力を集め、敵をなぎ払う、フレアストーム!!」

「我が魔力を集め、敵をなぎ払う、サンドストーム!!」


ふたりの前に魔法陣が展開し、そこから炎と砂の渦が飛び出す。魔法によって半数ほど仕留めたが、後7匹生き残っている。


姫さんは槍を構えて標的に特攻、きれいな突きで1匹仕留める。その後、もう1体に襲われるが、柄でガードして弾き飛ばす。そこから舞いを踊るかのように槍を振り回して2体目、3体目と倒す。


イリアも同様……ではないな。さすがに1撃で仕留めることはできないようで、何発か突き刺して倒している。それでも、危なげなくモンスターを倒しているので、それなりに実力があることはわかる。


さてと、啖呵を切ったギリアムはと……早々に生き残ったモンスターを倒して、最後の1匹と対峙している。


他のウルフと様子が違う……おそらくあれが群れのボスだろう。実力を見るのにはちょうどいい。この世界の実力者はマルサスしか見てない――アレを基準にするのは間違っている気がする。正也と撃ち合いは本気じゃないし、俺との対峙は……攻撃はたぶん全力だと思うが、防御に関しては察してあげてくれ。カンスト者の攻撃では、判断基準にならない。


しびれを切らしたのか、ウェアウルフの方からギリアムに飛びかかる。難なくかわすと、詠唱を始めた。


「我が魔力を集め、敵を貫く、フレアランス!!」


火が槍の形を成して、ウェアウルフに襲いかかる。リリー達の使っていたランス系の魔法よりもはるかに大きい上に速い。ウェアウルフは避けることもできず炎の槍に貫かれ、息絶えた。


「中級でもレベル3相当だと、あれほどの威力を出せるのね……」


あれがレベル3の中級魔法か……今までレベルの違いを感じることができなかったが、ここまで違いが出るのか。

込める魔力を変えると違いが出るのは体験済みだ。しかし、俺は逆に退化させてあるからわからないし、他人との比較なんてリリー達しか知らない。ステータスの影響もあるから俺にはギリアムの実力は判断できないが、ふたりの反応から見るに相当の実力者であることはなんとなくわかった。


「お疲れ様でした。皆様、実力者ぞろいで、あまりの手際の良さにこちらが手を出す隙がありませんでした」


そうエリーゼが褒めるけど、手を出そうと思えば出せたのは言ってはいけないお約束だ。まあ、さっきのでこの世界の実力基準がわかったから、万が一の時以外はあれくらいに抑えればいいんだな。


「魔物も大したことはなかったからな。魔物は片付いたことだし、先を急ぐとしよう」


「倒した魔物の血の匂いで他の魔物が来るかもしれませんから、そうしましょう」


リリーが姫さんの提案に乗る。特に留まる理由もないから、片付けて再び歩きはじめる。


更新を期待して待ってくれている方には申し訳ないですが、

しばらくはこの更新ペースになりそうです。

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