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第34話

第34話


「そもそも、なんで姫さんがこんなところにいるんだ?」


リリーは例外だが、王女と言えばお城にいるのが当たり前の様な存在だ。外交等で出ているとしてもこんな少人数なはずがない。


「それは……」


「貴様に言う必要はない!!」


ディアナが答える前にギリアムが遮ってきた。こいつがいると話が進まないな……


「へぇー、俺()のような通りすがりの不審者じゃ言えないと?」


「あたりま……」


返答をしようとしたが、途中で黙り込んだ。単なるバカかと思ったがそうでもないらしい。もし、そのまま言い切ってしまえばリリー達にもそうだと認めてしまう。そんなことをすれば、打首だろうな。


「どうした?続きを言うなら言えよ。言わないなら、話が進まないからしばらく黙ってろ」


ついついにやけてしまうが、隠す必要もない。ギリアムは俺を睨みつけてきたが、特に言い返すこともなく後ろに下がって騎士の連中に何やら指示を出している。


「話せることだけだが、全てを話そう。私はとある要件のためにロマリアに行っていたのだ。その帰りにさきほどの連中に襲われていた」


王女を使者に出すほどの重要な要件か……どこの連中かは知らないが、狙われるには十分だな。


「どういう要件かは聞きませんが、これからどうするおつもりですか?」


「むろん、このまま国へ向かうつもりだ」


襲われておきながら先を急ぐとは……早急に結果を報告しなければならないのか?


「ディアナ様の安全を確保するためにも、近くの村で騎士隊が来るのを待つのがよろしいかと?」


「それはできないのだ」


エリーゼの申し出をディアナは否定する。急ぐからという理由もあるだろうが、それだけではない。


「それは、この国が信用できないということでしょうか?」


「そうではないのだが……」


リリーが念のために確認をするが、ディアナの返答は歯切れが悪い。この態度で、理由がハッキリとしたが、ふたりとも理解したがゆえに聞きづらい雰囲気を醸し出している。また話しが進まなくなるから俺が言うしかないか……


「憶測だが、姫さんは国を通る際に王女としてではなく、旅人として入国したんじゃないのか?でなければ、一国の王女様がこんな事をする必要がないし、ユルカのお偉いさん達が護衛を付けずに入国を許すはずがないからな」


止めを刺すようで悪いが、言ってもらわなければ話が進まない。


「そのようなものだな。そう言う訳で国に頼るわけにはいかないのだ」


ディアナは観念したかのようにそう言った。まあ、それ以外に思いつくような理由なんてないしな。そんな話をしている最中に騎士達がギリアムに何やら報告をしている。話し終えるなり、騎士達を引き連れてこちらにきた。


「姫様、恐れながら提案があります」


「ギリアム、それはどんな提案だ?」


「はっ、安全のため周辺を散策させたところ、襲ってきた者達の馬が2頭生き残っておりました。1頭は国へ帰り、国境にて護衛を待機させるよう連絡役にします。もう1頭はケガ人であるニコルを近くの村へ運び、その後別ルートで同様に国へ走らせます。姫様と残ったものはこのまま国を目指します」


よくもまあ、あの戦闘で馬が生き残っていたな。主をなくして逃げ去ったものが運よく近くにいたのか?


「それが無難な案だな……人選はおまえに任せる」


ディアナは少し考えた末にギリアムの提案に乗る。少し疑問に残るが、現状ではそれがベストなんだろう。


「かしこまりました。フランクはまっすぐ国へ走れ。ダルストはニコルを近くの村に療養させた後、リムーダル経由で国へ。イリア、おまえは私と姫様の護衛だ」


「「「 はっ!! 」」」


ギリアムはそれぞれに指示を出して、さきほどまでの悪態を感じさせないほど隊長らしい行動をする。


「ヨシアキ、私達なんだけど……」


リリーが何と言いたいかは、誰でもわかる。この世界に来てからイベント発生率が高くないか?呪われているのかと疑うぞ?


「どうせ、姫さんについて行くとか言い出すんだろ?はぁ~~。リリーの立場上、このままスルーすると問題になるのであれば、依頼料にそれなりの色をつけてくれるなら構わんぞ。それに目的地は同じだしな」


他国の王女が、自国で殺害されたら関係がないと言い切れないよな……知らぬ、存じぬと言っても、相手側から貴国は何をしていたんだと訴えてくる。更に、今回は襲われた場面に遭遇してしまったので見捨てるなんて大問題になる。かといって、国に任せたらいざこざの原因になるので面倒極まりない。


「本来なら頑として断るべきなのだが、国に突き出されても文句を言えないのも事実だ。双方の事情ゆえに断るわけにもいかないか……。協力感謝する。それに彼の様な強い魔力持ちなら心強い」


そう言って俺に微笑みかける。美人の笑顔というのは、何事にも代えがたい価値であると一部では言われるのがなんとなくわかった気がする。


「行動開始の前に、彼を供養させてあげたい」


そう言って亡くなった男の方を見る。この世界は土、火、水、風のどれで葬儀を行うのだろうか?後者2つではないと思いたい……


「わかりました。周辺にある遺体を放置するのも問題となりますので、証拠になりそうなもの以外は埋めておきましょう」


そうして、ディアナとリリー以外で手分けして土葬が行われた。死体を見るのは気分が悪くなるが、慣れなければ前回の決心の意味がなくなってしまう。そう思って、なんとか作業を終えた。その際に気が付いたことだが、襲ってきた連中は相当手慣れているように思えた。致命傷が、明らかに槍で心臓一突きされた者も丁寧に顔だけが焼かれている。顔で身元がわからないようしたのか……最後の弾幕はこれをするためだったのかもしれないな。


~~☆~~☆~~


遺体を片付けた後、馬で移動するものはすでに行動を開始したため、残ったのは俺達だけだ。


「行動を共にするのだから、紹介をしておこう」


そう言われて、ギリアムが1歩前に出る。


「姫様護衛の隊長を務めている、ギリアム=フィッツァーだ。先に言っておくが、女性陣は信用しているが、そこの男は信用できない。何か問題が起こせば、我が槍の錆にしてくれる!!」


俺を睨みつけながら言い放つ。野郎からの信用なんてどうでもいい。ただ、濡れ衣を着せるようなことをしたら、城に無事に連れて行った報酬で社会的に消えてもらおう。消すことはできなくても、今回の一件で罰を与えることぐらいはできるはずだ。


「ギリアム様はもしかして、烈火の騎士様でしょうか?」


「なんだ?その烈火の騎士って?」


エリーゼが厨二くさい称号を言ってきた。


「実力者に付けられる二つ名よ。ちなみに、マルサスは鋼鉄の騎士と呼ばれているわ」


うわぁーないわー。こいつの烈火もそうだが、騎士隊長マルサスが鋼鉄って痛すぎる。実力者に付けられるということは、俺もでしゃばり過ぎると痛い二つ名が付けられるのかよ……


「おっしゃるとおり、私の属性である火からそう呼ばれるまでの実力者となりました。その話は後ほど、私の部下を紹介します」


そう言われて今度は女性(たしか、イリアさんだったか?)が前に出てきた。


「自分はイリア=トレイダーであります。今回の護衛任務では、姫様の世話役を任されているであります」


そう言われて、改めて観察する。年齢は20半ばぐらいで、身長はエリーゼや姫さんよりも若干高いから、170cmぐらいか?茶髪のショートヘアーで、女性の象徴は鎧でハッキリとはわからないが小さい方だ。しかし、モデルの様な顔立ちと引き締まった体型なので美人であることには変わりない。


そんな観察をしているとこちらと眼があった瞬間、睨みつけてきた。なんでこうもばれるかな?女性の感知能力が高いからなのか、俺の考えが顔に出てわかりやすいのか……どっちにしても気をつけないとダメだな。注意するためか、俺に近づいてきた。


「あなたは、身分が高い人達に対して軽率すぎる。姫様が言わない以上、ある程度は大目に見ますが、以後、隊長や姫様に迷惑をかけないでください」


あ、そっちの方か。1人称を自分と名乗るだけあって堅物キャラだったのね。小声で言ってきたので、返事をせずに軽く頷いておく。ただ、守るかどうかは別だけどな。


「彼女達のことは知っているし、ヨシアキ殿も先ほどしてもらったから、そちらの自己紹介は必要ないかな?」


「せいぜい呼び方ぐらいでしょうか?本名は何かと問題を呼び起こしますので、私のことはリリーで構いません」


「そうか、なら私のことはディナで構わないし、敬語も様付けも必要ない。私は相手に殿と付けるのが、口癖のようなものだから気にしないでくれ」


おいおい、フランクすぎるぞ姫さん。そんなことを言うから、後ろの騎士達がうろたえているぞ。そんなことは気にせず、うちの女性達と姫さんはにこやかに雑談を始める。


「では、行こうか。リリー殿」


「そうですね。ディナ姉さま」


そうして漸く歩きはじめる。なんだろうな……姫と騎士の間にある温度差のせいで、奇襲に神経使って疲れるよりも、こいつらの扱いの方で疲れそうだ……


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