2章 番外編
リアルが忙しかった為、なかなか書けませんでした。
そして、今更
祝お気に入り7000越え!
2章 番外編
ヨシアキへの用事が済んだので、魔王城に転移した。早急であったために、分体ではなく私自身が行ったが、ヨシアキにはバレなかった。人間であるため魔力を見ることができないのか、見分けがつかなかったようだ。これは貴重な情報だ。分体を本体として身代りに死ねば、暗躍するのは容易である可能性が高まった。
頼まれごとを済ませるためにアフラム様のいる部屋へ向かう途中、珍しい者達の声がする。素通りするのもどうかと思ったので、その者達がいる部屋に入る。
「戦争で忙しいはずの将軍であるおふたりが、珍しく魔王城に帰っているなんて、どうかしたのですか?」
「んー?なんだリデルか。元帥から、毎年恒例のアレで、人間達が落ち着いてきたのなら、部下達の育成のために帰させられたんだよ。だから、暇だなーってシルヴァと話してたんだよ」
後方から声をかけたとはいえ、振り返ればいいのに、イスに座っているためか、後ろに反りかえった状態でそう答えた。
「久しぶりね、リデル。ヘルガと互いに愚痴をこぼしていたのよ。それにしても、何でそんなもの持っているの?」
シルヴァが私の持っている頭を指差した。
「これですか?異世界人の頼まれもので、アフラム様にお届けするんですよ。手を出せば、次はおまえがこうなるだそうですよ」
そう言って、状態を維持させるために魔法でコーティングした頭をテーブルの上に置く。
「最近召喚されたって言う勇者か……強いのか?」
「お城にいる勇者はわかりませんが、これを渡した彼はすごいですよ。いやはや、とんでもない人間が現れたものです。魔力なんて魔王様を越えているから、1歩間違えれば、勇者ではなく化け物と呼ばれそうです」
ヨシアキは見ていて楽しいし、共感するところもある。個人的には魔王軍を抜けて一緒に旅をしたいくらいおもしろい人間だ。
「いつも言ってるだろ、魔力には興味ねーよ。そいつが、どれほど力を持っているかを聞いてるんだ」
「そうですね……このゾゾルの手足を切り裂くレベルの持ち主ではありますね。実際にどれほどなのか、これの死に際でも映し出して確認してみましょうか」
魔法でゾゾルの記憶を映像化する。
自分の能力で姿を消した後、でたらめな方法であぶりだされましたね。魔弾で気をそらせ、攻撃しようとしたがかわされて、最後は一撃で仕留められましたね。魔力以外も化け物じみた存在というよりも、これでは化け物、そのものですね。
魔人にキズをつけるものならそれなりの数がいるし、魔人を殺せる者なら数える程度はいる。しかし、一撃で殺す実力者は数える程度しかいない。
「なんだよ!すげえ実力者じゃねーか!!やべー闘ってみてーー!!陸路を開拓するまでなんて待てねーよ!!なぁなぁリデル、おまえの転移でそいつのところまで連れて行ってくれよ~」
戦闘狂で残念な彼女ですが、子どものように私の腕をゆすりながら訴えるのはかわいらしい。
「せっかく魔王様に美しく創られたんだから、普段からそういう風にしていたらかわいいのに……彼、顔は普通だけど闘う時の表情はいいわね。下僕にしたいから行くなら私も連れて行きなさいよ」
そう言って、反対の腕に抱きつく。普通の人ならふたりの誘惑に負けて頷くだろうが、毎回されている私には「またか」と思ってしまう。
「ダメですよ。そんなことをしたら私まで殺されてしまいます。彼が自分でこちらに来るか、有名になってからじゃないと手を出させませんよ」
「リデルのケチ!最近の冒険者や騎士達は骨がないからつまんねーンだよ」
「戦場は脳筋だらけで、私好みのいい男がいないから退屈なのよ。あなただけ楽しむなんてずるいわ」
はぁ~。ヨシアキに共感したのは、このふたりのせいかもしれない。
「そのかわり、あなた方以上に苦労することがありますよ。いつ攻めてくるか調べて、こちらが対応できるようにしたり、逆に、攻めやすい時期を調べるために世界中から情報を集めたりと大変なんですよ。それに、誰かさん達の我がままで、どこに行けばお目当てがいるか誰が調べて教えているのですか?」
そう言うとふたりは腕から手を離しイスに座りなおす。
「それはいつも感謝してるけど……それでも物足りないんだよ」
「たしかに、ありがたい情報だけど……最近は全体の質が悪過ぎて、お目当てでもマシっていうレベルなのよね」
「それに関しては、私がどうこうできる問題ではありませんよ」
「「 それはそうだけど…… 」」
男の質に関しては知りませんが、実力は最初の方にあらかた倒してしまったからいなくなったのだろう。それが原因で、勇者なんていう不確定な戦力に頼った訳ですし……
「さきほども言いましたが、彼に手を出してはいけません。時期が来るまで我慢して下さい」
「有名ね~」
ヘルガが珍しく考えはじめた。いつもなら「何か方法はないのか?」とこちらに聞いて来るが、今回ばかりは私が答えないとわかっているためか、自分で考えているようだ。難しい顔をして、諦めたらいいのに……そうしないのは、それだけヨシアキに興味を持ったのか――これは、ちょっと彼に申し訳ないですね。
「私はこれを届けに行きますから、また後ほど」
「また後でね。ヘルガ、あなたが考えてもろくな答えはでないわよ」
「う~ん……ん!?(これなら……)ああ、またな」
考えて悩んでいたのに、急にニコニコしだして……何やら嫌な予感がしますね。ヘルガに限っては妙案が思いつくのはあり得ないと思いたいですが――たまにこちらの想像をはるかに超える行動を起こすから、何か策を考えないとこちらが苦労するだけですからね……
そんなことを考えながら、アフラム様の部屋にたどり着く。
「失礼します」
部屋に入るといつものように実務をしているアフラム様がいた。元帥を任されているが、基本的に戦争は将軍たちが指揮を執っており、最終的な判断はアフラム様がしている。だから、普段は魔王様と同じように国の管理をアフラム様もしている。
「リデルか。何用じゃ」
「アフラム様にお届け物です。次にふざけた真似をしたらおまえを殺しに行く。という伝言もいただきました」
そう言って、机にゾゾルの頭を置く。
「ゾゾルめ、失敗しよったか……あやつの能力ならやれると思ったが見込み違いだったか」
多少残念そうな表情をみせたが、それだけで実務作業に戻った。
魔王様がヨシアキに手を出させないようにしておいたのに、私の部下を勝手に使って無駄死にさせる。本当にこの伝言の意味をわかっているのか?
「そう言う訳ですから、余計なことはしないでください」
「芽を摘むのが余計じゃと!?勇者は魔王様を倒す可能性のある存在だ。脅威となりえる者を殺そうとして何が悪い!!」
アフラムは机を叩いて立ち上がり怒りをあらわにした。これでは伝言の意味を理解していないのがよくわかる。暗に、私がヨシアキと交渉をしていると言っているのにわかっていない。ならば、ハッキリと言ってあげましょう。
「黙れ、この老いぼれが!芽を摘むではなく、生やすの間違いだろ!!あいつは魔王様に興味はない。私が交渉をしているのに、ぶち壊すようなことをするな!!」
戦争を何だと考えている。敵がいるから戦うのではない。勝てる相手がいるから戦うのだ。負け戦になるのであれば戦争なんてやらない。戦争は外交の一種だ。そんなことも考えずに戦っていては、異世界の勇者でなくとも、いずれこの世界の人間に滅ぼされる。
「リデル、誰に向かって言っておる!!」
権力で抑え込めようとするとは哀れだな。
「先代勇者に負けた老いぼれだろ?おまえが手を出したせいで、あいつが魔王軍に牙を剥くようなことになれば、私がおまえを殺し、首を差し出してでもあいつを止める。それで構わないのであればやればいい。老いぼれが、私と殺りあって勝てると思うのであればね……」
戦から離れている老いぼれと現役の将軍ということもあるが、古株ということで元帥になっている。どちらに軍配が上がるかと言えば、アフラムに秘策がない限り半数以上でこちらになる。にらみ合いをしていても仕方がないので部屋を出よう。しかし、このまま立ち去る訳にもいかないので弁解をしてから立ち去るとしよう。
「さきほどは言い過ぎてしまい申し訳ありません。魔王様が不在の中、魔族を率いた貴方を尊敬していますよ。だから、尊敬の意をなくすような行動は慎んでください」
放り出していた部下からの情報を整理するために自室へと戻る。早速取り掛かろうとしたが、先にヨシアキに報告をするとしよう。
「おかしいですね……」
念話がうまく作動しない。石が破壊されているのであれば発動しない。放置されているとしてもつながりはするし、ヨシアキが持たないという行動はとらないはずだ。考えられる可能性としては、念話が妨害されているか、通信石の魔法陣に異常が発生したぐらいか……おそらくは、ヨシアキの持つ不思議な袋に入っていて通じないのだろう。
「そのうち向こうからかけてくるでしょう」
考えても仕方ないので、作業に取り掛かる。この整理が終わったら、ヘルガとアフラムの監視をどうするか考えないといけない。ヨシアキと出会ってから余計な仕事が増えたが、楽しみもできた。
資料に目を通していると気になる情報を見つけた。この情報から判断するにヨシアキ達が巻き込まれる可能性がある。というよりも、勇者として召喚されたヨシアキのことだから間違いなく遭遇してしまうだろう。どう行動をするのか、楽しみだ。
今回はリデル視点で書いてみました。次回投稿は不明です。
Q&Aは質問が少なかったので書けませんでした。




