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第29話

第29話


囚われていた人達と別れ、エリーゼのところへと戻る。


「おかえりなさいませ。今のところ盗賊達に動きはないようです」


「侵入してからだいぶ時間がかかったのに、動きがないのが不思議ね」


俺もその点は疑問に思う。何かしらの侵入者対策をしていると思うが、それらしいものは今のところなかった。


「ここから先は俺が感知魔法を使いながら進んだ方が安全だな」


「ヨシアキ様の負担が大きくなりますが、よろしいのですか?」


「疲れか、安全かを聞かれたら安全をとる。じゃ、確認してみる」


俺式感知魔法で奥の様子を探る。


「どういうことだ?洞窟にいる全員が1か所に集まっている」


最初や分かれ道を調べた時はバラバラだったのに、向こうにも感知魔法が使えるやつがいるのか?いや、それなら侵入した時に動きが生じて2回目の時に気が付くはずだ。


「何かをしているから固まっているのか、気がつかれたから固まっているのか……どちらにしても行かないとわからないわね」


「道中、何かしらの罠がある可能性があるので、わたくしが先に進みます。ヨシアキ様は進む方向を指示して下さい」


~~☆~~☆~~


迷路のように、入り組んだ道のりなだけで罠は一切なかった。自分達の住みかだから罠を張るような事をしなかったのか、あるいは迷路だけでなんとかなると考えていたのか?


「この曲がり角の先に団体さんがお待ちかねだ。準備はいいか?」


すぐ戦闘になってもいいように、剣を抜いておく。ふたりはうなずき準備が整った。俺達は広間へと足を踏み入れた。


広間に入ると明りがあり、奥には大男が待ち構えていた。


「よくきたな、このコソ泥め。俺の名はランドルフ、この盗賊団の頭だ!」


「盗賊はあなた達の方でしょ!連れ攫った女の子はどこ!」


堂々と、名乗り上げた盗賊の頭に対して、リリーがそう答える。


「女っていうのはこいつらのことか?」


ランドルフは顎で方向を示すと明りがついて、盗賊に縄で縛られているメアリーちゃんともう一人、茶髪の20代の女性がいた。


「あの首輪は……どうやら、どこぞの貴族を襲って、奴隷まで奪ったようですね」


エリーゼに言われて女性をよく見るとたしかに首輪がされている。この世界にも当然のごとく奴隷制度があるが、はじめて奴隷の人を見たな。


「おとなしく武器を捨てな!さもなくば、人質の命はないぜ」


典型的なおどしをしてきたが、俺の前に人質を見せるのはまずかったな。


「あんがとよ。人質の居場所がわかればこっちのもんだ」


「何をほざきやがる?おかしな動きを見せた時点で、かわいい人質が血を流すことになるぞ」


俺はノ―モーションから人質の方へ全力で飛び跳ね、盗賊の背後にまわる。一応、危ないので持っていたナイフをはたき落してから、けり飛ばす。それは、時間で言えば一瞬の出来事。この国で最強と言われていた騎士隊長ですら反応できなかったのだ。ましてや、その時以上に力を使っているのだから、一介の盗賊が反応できるはずがない。縄を切り離して、ふたりの人質を解放する。


「さてと、人質は返してもらったが、何か言いたい事はあるか?」


「動くなら動くで、前もって言ってくれないと私達が対応できないんだけど」


駆け寄ってきたリリー達がそう言った。リリーさんや、言いたい事はわかるんですが、あなたに聞いてませんよ。


「人質を取り返されたぐらいで慌てるとでも思ったか?さっきの瞬間移動は、使いどころを間違えたな。そんな大技何度も使えるわけがない。野郎ども、あいつをぶち殺せ!」


ランドルフがそう言うと、明りが広間中に広がり、盗賊達が現れた。


「ふたりとも、人質は任せた。俺は練習ついでにあいつら沈めてくる」


ふたりから離れて盗賊の方へと移動する。複数に絡まれた時の対処法を勉強するためでもあるが、人を相手に殺さずを貫くのであれば、これほどいい練習相手はいない。悪人相手ならケガを負わせても罪悪感はない。さっきのけりは、正確には足で押し飛ばしたから死んではいないはずだ。間違って死にかけたとしても、後で治療すればいい。

みねうちをするため剣を持ちかえる。


「なめやがって!やっちまえ!!」


盗賊の誰かがそういうと3人突っ込んできた。魔法で集中砲火すればいいのにそれをしてこないとなると、ほとんどのやつらが使えないと考えていいな。


正面から来たやつの腕をねらって振り下ろし黙らせる。右から来たやつは、胴体をなぎ払う。左から来たやつは、脳天にかかとおとしをして沈黙させる。倒れた3人をそれぞれ見ると、腕を抱えて騒いでいる。腹を抱えてうずくまっている。痙攣をしている。最後の一人がちょっと心配だったが、痙攣しているなら生きているだろうから問題ない。


「次はどいつだ?」


剣を突き立てて挑発する。典型的ではあるが、こういうやり方の方が相手をより刺激させやすい。案の定、挑発に乗った10人がバカ正直にまっすぐ襲いかかる。


今度は魔法の練習だ。火系統の魔法は加減が難しいのでパス。土は地形変化で洞窟が崩れたらいけないのでこれもパス。水か風のどちらかだが、攻撃となると、風魔法がいいな。吹き飛ばすだけでいいし。


「なぎ払え!エアーストーム!!」


俺を中心に風の渦が現れ、襲いかかってきた盗賊達をのみ込む。のみ込まれた者達は風の渦によって回され、最後には四方八方に弾き飛ばされた。


余裕をかましていたランドルフだが、しびれを切らしたのか盗賊達に命令した。


「ッチ!ここまでやってくれるとは思いもしなかったぜ!お前達(・ ・ ・)、命令した通りやれ!」

 

はてさて、今度は何をしてくれるんだ?余裕から俺は傍観してみる。するとお決まりのごとく、2人の盗賊がリリー達に襲いかかる。この程度の相手ならふたりにまかしても問題ないだろう。


「随分と甘く見られたものね」


人質に危害が及ばないように、少し離れて盗賊達を沈黙させる。しかし、それが間違いだったのかもしれない。


「い、い、いやあああああああああああああ」


捕らえられていた奴隷の女性が悲鳴を上げた。何が起こったのかそちらの方を見ると、女性の手には血濡れたナイフを持っていた。メアリーちゃんは倒れており、黄緑色のワンピースが赤く染まっている。まさか!あの女が刺したのか!?


「ギャーーハッハッハァ!奴隷と思って安心しているからそうなったんだ!一生後悔しやがれ!まぁ、後悔する暇もなくあんた死ぬんだがな!」


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