第2話
第2話
俺達は謁見の間から出て客室に案内をされた。
「すげー、こんな貴族が使うような豪華な部屋を用意されるとは思わなかったな」
俺がこんな感想を言いつつ部屋を見まわした。
「僕もこんな部屋テレビでしか見たことないよ」
正也も同じく部屋をみまわしている。
「申し訳ありませんが、ここはマサヤ様のみのお部屋となっております。ヨシアキ様のお部屋は別にご用意しておりますので、ついて来てくださいませ」
「俺の部屋も似たようなもんなのか?」
俺がそう聞くと、なにやら困ったような顔をして、
「申し訳ありません。実は、勇者様が2人もいらっしゃるとは思わなかったので同じようなお部屋は用意できませんでした。また、近くのお部屋も現在使用しておりまして、ヨシアキ様のお部屋は離れた場所にあるのでお連れいたしたいのですが」
と本当に申し訳なさそうに言っている。
「まぁ、仕方ないよな。ここは年上の俺が我慢するのが普通か」
俺がメイドさんについて行こうとしたら、
「待ってください」
正也に呼び止められた。
「知らないところへ連れてかれて心細いのに、異世界で一人になるのは辛いのですが。それに、四条さんともまだ話をしたいし、寝る前になったら部屋に行ってもいいんじゃないですか」
たしかに正也の言うのも正しい。一人でのんびりするのも悪くはないが情報整理として正也と話をする必要はあるな。
「そうだな、すまないがメイドさんそうする。ついでに飯の時間になったら案内をしてくれ」
俺がそういうとメイドさんはどうしたもんかと考えているようだ。
「私にはどう判断すればいいのか分かりかねますので、大臣様に聞いて参ります。このお部屋にてお待ちください」
そう言い残してメイドさんは部屋から出て行った。
「とりあえず、座りませんか」
「そうだな。やれやれなんでこんなことになったのやら」
俺はため息をしつつ椅子に座った。
「それは僕も同じですよ。だいたいなんですか?いきなり王様に対してあんなセリフを言えましたね。僕、牢屋に閉じ込められるかとひやひやしましたよ。」
正也もあきれ顔をしながら椅子に座った。
「牢屋なら、まだマシだ。ヘタしたら処刑だ」
俺は手を首の前に出してデスを意味するジェスチャーをした。
「たしかに、命があってよかったですね。それにしても、四条さんはどうしてそんな格好をしているんですか」
「これか?これはゲームの衣装だ。エクスフィアクエストというゲームで俺が使用している服装だ。それと、俺のことは吉晃でいいぞ。俺も正也と呼んでいるし」
「では、吉晃さんで。しかし、エクスフィアクエストですか?僕もそれなりにゲームはしますけど聞いたことのないゲームですよ」
「なに!知らんだと!お前このゲームは超有名で現在でも流行中。今や知らない奴なんかいねーぞ」
D○のようなゲーム形式で、周回プレイができるという斬新なゲーム。知らないとは本当にゲームをやっている人間なのか?
「知りませんよ。だいたい今流行りのゲームといえばファイナルストーリーですよ」
「なんだ?そのF○のようなゲームは、そんなゲームねーだろ」
「F○のようなゲームがどんなものか知りませんよ、本当に知らないんですか?」
お互いの話が合わない。これはもしかしてあれか?あれだったら確かに話が合わないのも納得する。一応、確認するか――
「正也、今どこの携帯使ってるかいってみろ」
「aoですよ。なんなら携帯見ます?」
正也は携帯を取り出したが、どうみても丸型で俺の知っている携帯とは違う
「○uでなくでaoなんだな。d○comoとか、s○ftbankはないのか?」
「なんですかその会社名、d○comoとか、s○ftbankなんてなかったはずです。いまではaoが唯一の携帯会社じゃないですか」
正也はよくわかってないようだが、これではっきりとした。
「どうやら、俺たちは違う世界の日本からやってきたようだな」
「なるほど。それなら話が合わなくてもおかしくないです。吉晃さんこのエクスフィアについて知っているように思えたんですが。ゲームと同じなのですか」
「それについては、なんとも言えん。たしかに、地名や人物名が一緒だったがはたして同じなのかわからん」
「コンコン」とノックの音がした。
「失礼します」
さきほどとは別のメイドさんがやってきた。
「ヨシアキ様、先ほど聞いて参りましたがマサヤ様のおっしゃるようにこのお部屋をご利用してかまわないそうです。それとお食事はこちらにもって参りますので後30分ほどお待ちください。何かあればお部屋の前に待機しているのでおっしゃってください」
メイドさんが出ようとして、
「ああ、メイドさんすまないが、ちょっと待ってくれ」
俺はポーチを開いて、お!アイテムや装備は全部ありそうだなと思いつつ、1枚の紙をポーチから取り出した。
「こいつを見てくれ」
「これは、地図ですか?たしかに、エクスフィアの地図ですね。地名もあっておりますが、このように明確な地図は始めて見ます。それにそのような鞄も始めてでお二人がいた世界というのはずいぶんと進んでいらっしゃるようで」
メイドさんは地図よりもポーチを驚きながら見ている。どうやら地形に関して同じとみてもよさそうだな。
「これに関しては、説明のしようがないな。呼び止めてすまない」
「そうですか、ではごゆっくりと」
メイドさんはまた部屋を後にした。
「吉晃さん、なんですかその袋!そっちの日本ではそんな青タヌキが使うような袋まで作れるんですか!?」
正也が身を乗り出しながら聞いてくる。
「そんなもんないわ。これはゲームのアイテム袋でどうやら俺はゲームのプレイヤー状態でこっちに召喚されたみたいだ。ちなみにこれは俺以外は使えないからな」
俺がそういうと、正也はがっかりしたようだ。
「なんだ、でもそれは便利そうですね。」
「ああ、便利だぞ、でもこれは本人以外は取り出せん。それとさっきの話の続きだが、地名に関しては同じみたいだな。説明されるかもしれんが、一応聞くか?」
「ぜひ!」
こうして、この世界について講義がはじまった。
「簡単に説明すると、この世界はこっちの世界と同じでそのまま縮小したかんじであるが南アメリカと南極大陸と北極がなくて4つの大陸で成り立っている。
北アメリカ大陸と同じ所にあるエンドラド大陸、
今いる大陸だ。基本的に安全な国や町が多くまさにゲーム序盤の大陸な。
次に、ユーラシア大陸と同じ所にあるロスタリカ大陸
隣の大陸で、世界で1番大きな大陸。旅のルートにある大陸だ。
次、アフリカ大陸と同じ所にあるヘイムダル大陸
簡単にいうと前線基地や、魔族の被害が大きい大陸。
最後に、オーストラリア大陸と同じ所にあるランシール大陸
別名、魔大陸。魔王が支配する大陸で一番小さい大陸。
それぞれの大陸に国は3、2、2、1の8カ国だが、1つは魔王の国だから、実質は7カ国だ。このエンドラド大陸はユルカ、アルトランド、ロマリアの3カ国がある。他の大陸については、着いてからか、他の奴にでも聞くんだな」
「ここの大陸から魔王のいる大陸に海で直接行かないんですか?わざわざ遠回りしないといけないんですか?」
「おそらく同じだと思うが、この世界の神によって海からでは赤道と極地周辺は魔族からの侵攻を防ぐために一切通れないから陸路で赤道を通らなければならんのだ。ほら、こことここにラインが引かれているだろ。さっきのメイドさんも特に聞かなかったからそうだと思うぞ」
「メイドさんは地図よりも吉晃さんが持っていた袋に興味がいって気がつかなかっただけかもしれませんよ?」
「そうかもな、なら今度聞いてみるか。他に聞くことは?」
「はい、せんせー。魔法については教えてくれないんですか?」
「だれが、せんせーだ。魔法についてか?同じかわからんし、どうせこの国の奴が教えてくれるだろ。それまでお預けだ」
俺達のように地形や名所は同じでも中身が違う可能性がある以上、嘘となりえることはいわないほうがいいな。
「そうですか。にしても、吉晃さんは落ち着いてますね。僕と1つしか違わないのに」
「ん?1つといっても実際は2つだ。正也は高2だろ。俺は3月生まれだから遅いだけでこれでも大学生で一人暮らしをしている。一人で暮らしていると勧誘やら押し売りやら家事を自分で対応するからな、その辺の違いだろ」
「たしかに僕は高2ですよ。でも、一人暮らしでそんなに変わりませんよ」
一人暮らしでここまで違いがでるなら、ニートは一人暮らしで生活が一転するな。それ以外といっても性格の問題だろ。
そんな話とかをしていると再びノックの音が聞こえた。
「失礼します。お食事の用意ができましたのでお持ちいたしました」
さきほどの2人とは別のメイドさんがやってきたが気にすることはないか
「話はここまでにして、まずは飯だ」
「そうですね。話の続きは食後にしましょう」
こうして俺たちは食事をした。メニューはパンとスープと肉料理だ。味は薄味だが、日本とそう変わらないな。
「ふぅー食った食った。異世界料理は不安だったがうまかったな」
「ごちそうさまでした。おいしかったです」
「お口に合って幸いです。この後ですが、入浴と就寝時刻となりますのでヨシアキ様をお部屋へとお連れいたしたいのですが」
異世界の就寝時刻はずいぶんと早いんだな。郷に入りては郷に従えというし眠くはないがここは言うとおりにするか。
「そうかなら行こうか。正也ちと早いがおやすみな」
「吉晃さん、おやすみなさい。では、また明日」
俺は正也の部屋を出てメイドさんについていく。しかし、随分と遠くに部屋があるもんだな。
「ヨシアキ様こちらがお部屋になります。それではおやすみなさいませ」
「おう、ありがとな」
そういいメイドさんは立ち去って行った。
それでは部屋へと入りますか。扉を開けてびっくりした。部屋はどうみても宿屋のような造りでベッドがあるぐらいで浴室もなさそうだ。正也の部屋とは雲泥の差、メイドさんにどういうことなのか聞きたかったが、もうどこに行ったかわからない。
「仕方ない、おとなしくここで寝るか」
こうして最初の1日を終えた。