表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/53

第26話

第26話


女の子が落ち着きを取り戻し、リリーがやさしい声で事情を聞きだした。


「おねーちゃんはリリーっていうんだけど、お嬢ちゃんのお名前は?」


「わたし、メアリー」


「メアリーちゃんね。どうしてメアリーちゃんは、あのおじさん達に追われていたの?」


「探しものしていたら、人の声がしたの。そしたらあの怖いおじさん達で、何かを言い合っていて、見つからないうちに逃げようとしたけど見つかっちゃって、必死で逃げてたの」


「そう、怖かったでしょう。でも、もう大丈夫だからね。おねーさんがお家まで連れて行ってあげるから。この先の村にお家があるの?」


「うん」


「それじゃ、行きましょうか」


リリーはメアリーちゃんの手をつなぎこちらに来た。


「子どもの扱いが随分と手慣れているな」


「前にちょっとね」


箱入り王女かと思ったが、城を抜け出したりして、子ども達の相手でもしていたのか?


「おにーさん、たすけてくれてありがとう」


メアリーちゃんはそう言うと、きれいなおじぎをする。ちゃんとお礼が言えるのはいいことだ。


「どういたしまして」


そう言って、メアリーちゃんの頭をなでる。リリーにつられて口調が変わってしまったな。


~~☆~~☆~~


メアリーちゃんを引き連れているので歩くペースを落としたが、30分ほど歩くとようやく村が見えた。


「メアリー!探していたのよ。心配させて、いったいどこに行っていたのよ!」


村に着くとすぐに長い茶髪の女性が駆け寄りメアリーちゃんを抱き締めた。


「おかあさん。ごめんなさい」


メアリーちゃんの母親か、どこの世界でも母親というのは変わらないな……俺にはあこがれていた風景だが。


「メアリーがご迷惑をかけたようで申し訳ありません。私はメアリーの母でマーサと言います。みなさん、大したことはできませんが、お礼をしたいのでどうぞ家によってください」


「では、お言葉に甘えてさせていただきます」


ついて行くと村の中でひときわ大きい家に着いた。そのまま中に入って客間でお茶を飲みながらくつろいでいると白髪というよりも灰色に近い老人が来た。


「ようこそ旅のお方。わしはこの村の村長をしておるバーンズという。孫が世話になったようで」


「はじめまして、私はリリーと申します。隣にいる男女は、ヨシアキとエリーゼと申します。お孫さんについては、礼には及びません。ただ気になることで、この村に来る途中に盗賊に会いました。あの者達について何か知っていることはありませんか?」


リリーがそう聞くと、村長はしぶしぶ語りだした。


「その者たちなのですが、実はこの村にも被害が出ているのです。あやつらが現れたのは2週間ほど前で、盗賊の頭はランドルフという大男です。最初はバカな男と思っていたのですが、用心深く厄介な男です。あやつらが少しでも不利になると逃げ出し、足取りが全くつかめないのです。ご存じかもしれませんが、この村は王都に近い村で、治安が良く、盗賊が現れてもすぐに退治してくれる安全な村でした。しかし、王都に救援を呼ぼうとしたのですが、村の者や、たまたま通りがかった冒険者にも依頼をしたのですが誰一人、王都に着くことができませんでした。おそらく、あの盗賊達の仕業でしょう。もし、王都へ行こうとなさっているのであれば、森を通るのは危険ですので迂回して下さい」


「俺達は、そのユルカの街から来たんだが」


俺がそう言うと村長は驚いた。どうせ、盗賊じゃなくて魔人(リデル)が森に来た連中を亡き者にしていたんだろう。全く、面倒なことをしやがって……


「ヨシアキ……」


リリーが何か言いたそうだが、その後に続く内容はその表情で想像がつく。


「どうせ、俺達でその盗賊退治をしようと言うんだろ?知ってしまった以上、見過ごすなんてできないとは言えないが、俺達は冒険者だ。依頼として頼まれるのであれば俺はいいぞ」


俺がそう言うと村長は恐る恐る聞いてきた。


「あなた方も冒険者なのですか?しかし、今までにもDランクの人達にも依頼をしたのですが結果は……」


誰一人として帰って来なかったと……


「ご安心ください。これでもわたくし達はCランクです」


「そうなのですか!では、わしから盗賊退治の依頼をお願いします。報酬は銀貨50枚でよろしいでしょうか?」


相場が未だにわからんがおそらく妥当なのだろう。


「ダメだな」


「ちょっと!ヨシアキ!!」


言いたい事はわかるが、アホなことではないぞ。


「それプラス、依頼が終わるまでの宿の確保を頼む」


これって結構重要なことだぞ。おそらく村にも宿はあるだろうが、盗賊騒ぎで立ち止まる旅人はそういないだろうが、空き部屋があるかわからない。だからと言って盗賊が見つかるまで野宿なんてバカな行動だ。


「そんなことでよろしいのでしたら、どうぞ家にお泊り下さい」


もしかしたら断られると思ったのか、俺の要求が簡単なものでほっとしたような顔になりそう提案してきた。俺達は顔を見合わせてうなずいた。


「んじゃ、それでよろしく頼む。依頼の方も安心していいぞ」


依頼を了承して村長がよかった、よかったという感じでため息をする。俺達は名前を名乗り終えた時に、茶髪のガタイのいい男性が部屋に入ってきた。


「チクショウ!おやじ、今回もダメだった。あいつらの居場所さえわかれば、なんとかなるかもしれねーのに!」


「このバカ息子!客人のいる前で恥をさらすな」


村長の息子さんか、つまりこの人がメアリーちゃんの父親か。母親もそうだったが、父親も若いな。子持ちなのに、ふたりとも25歳と言われてもおかしくないほど若くに見える。こういう村では早期結婚とかは普通か。


「お恥ずかしいところを見せて申し訳ない。俺は村長の息子でエリックという。何にもない村だが、王都へ行く通り道としてよく利用される村だ。今は盗賊騒ぎで村の皆はげんなりしちまっているがな。まあ、運良ければ1週間くらいで騎士隊の方々が来るかもしれないから、他の連中と同じように、それまで待つか迂回してくれ」


エリックさんは謝りながら、俺達は先ほどと同じように名乗った。


「この方たちは王都からきた冒険者達だ。お若いのにCランクと、かなりの実力者なのだ」


村長が補足説明をするとエリックさんは驚いていたが、俺の手を取って、「そいつはありがてぇ、あいつらにぎゃふんといわせてやってくれ」と言ってぶんぶんと上下に振ってきた。疑うと言うことを知らないのか、ランクの虚言はギルドによって制裁をくらうのでほとんどいないのか?


「とりあえず、盗賊がどこにいるかわからない以上、捜索しなければなりません。しかし、探している間に村に被害がでないとは限らないので、盗賊が現れたら退治、来なければ騎士隊が来るまで警備ということにした方がよろしいかと思います」


エリーゼが提案するように、こういう依頼は盗賊退治だけをすればいいわけではない。退治かつ護衛をこなすのが一流の冒険者の仕事だ。


「そういうことなら俺がひとっ飛びして呼んでこようか?マスターに言えば2、3日で来れるんじゃないか?盗賊の人数は多いだろうから捕まえた後のことが面倒だし」


何十人とかいたら捕まえた時に監視が大変そうだ。ワープがあるから、ほんの数分でマスターに頼める。それから騎士隊が来るのは準備も含めて数日だろう。


「盗賊は息子らが見た限りでは15人以上いたそうだから、たしかに3人では人手が足りないでしょう。警備だけでも依頼料は出しますから、そうしてくれた方が村の皆も安心できるますのでそうしてくだされ」


村長もそう提案してきた。


「わかったわ。私が手紙を書くから、それも一緒に渡せば2日以内に来れるはずよ」


そういってリリーは手紙を書き俺に渡した。


「んじゃ、行ってくる」


俺は家から出て風景を覚える。……よし、目印になりそうなものは全部覚えた。ユルカの街まで飛び、

無事ユルカの街に到着。さっそく、マスターに会いに行くか。


~~☆~~☆~~


ギルドに入ると、森の異変が解決したためか前よりも冒険者達がいる。


「いらっしゃい……って、ヨシアキさん!?街を出たんじゃなかったんですか?」


相変わらず受付嬢のマリサさんがいる。7不思議の1つに認定してもいいんじゃないか?そんなことよりもマスターに依頼だな。


「ちょっとした用事でここに来たんだ。マスターはいつもの場所か?」


「そうですね。書類の整理で忙しそうですが、ヨシアキさんなら大丈夫だと思いますから部屋に行ってください」


申し訳ないように思うが急を要する内容でもあるからいいか。言われた通りマスターの部屋に行く。ノックをして入ると書類が山積みになっていて、忙しそうに仕事をしているマスターがいた。


「すまんが、今は手が離せん。用があるなら後1時間ほど待……なんじゃ、ヨシアキではないか!街を出たのではなかったのか?」


俺の顔を見るなり手を休めてこちらに来た。


「マスター、すまないが騎士の連中に森の向こうにあるシーバムの村に盗賊が出たと伝えてくれ。頭はランドルフという男で、人数は15人以上だそうだ。後、リリーからの手紙があるからすぐに動いてくれるはずだ」


そういってリリーの手紙を渡す。マスターは手紙を一通り読むとすぐに連絡すると言ってくれた。


「この街の近くで盗賊行為とは、バカな連中だのう。おまえさんはもしかしてその盗賊退治の依頼を受けたのか?」


「ちょっとした縁でな」


あの時は村長さんが頼みやすいようにああ言ったが、盗賊に会ってしまったし、俺も見て見ぬふりはできない。それに手下が世話になったとかで、親分が俺を呼び出すため村に被害が出るかもしれないからな。


「それなら依頼の申し込み用紙を出すから依頼人に渡しておいてくれ。そうすれば、おまえさんの依頼はギルドの依頼として扱える。手数料はいらないことを一筆書いてはおくが、伝えておいてくれ。しかし、ランドルフという名はどこかで聞いたことがあるような気がするな。まあ、おまえさんが相手なら、どんな盗賊であろうとも関係なさそうだがな」


マスターはそう言いつつ、山積みの書類の中から用紙を取り出して渡してきた。


「わかった。村の人達のためにもなるべく早く着くように頼む。そんじゃ、村に戻るわ」


そうして部屋から出ようとすると、「また何かあれば手紙でもよこしてくれ。おまえさんなら、よろこんで協力するぞ」と言ってくれた。ホント、マスターはいい人だな。

まさかのマスター再登場、といっても今後登場するかは不明です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ