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第21話

第21話


街を出た俺達は、森の中を歩いている。昼食でサンドイッチを食べたり休憩を入れたりしながら8時間くらいは経った。途中で戦闘もあったが魔法で一掃という簡単なお仕事でこれといって何もない。


「今で大体、どの辺なんだ?」


地図を広げて聞いてみる。ゲームみたいに自分の居場所が点滅することがないので自分ではわからない。


「そうですね。中間点を過ぎたくらいで、地図でいえばここら辺でしょうか」


そう言って、エリーゼが指さす。


「マジかよ……」


地図からすれば、進んだ距離は目的地の5分の3程度。正直嘗めてた……ステータスのおかげでそれほど疲れないが精神的に疲れる。それにゲームではリアル過ぎても意味がないから、実際に歩いた距離と進んだ距離は補正がかかっていたんだろう。ゲームでの感覚でいえば、とっくについていてもおかしくないのに……


「もうすぐ夕暮れだから暗くならないうちに、ここらで野営の準備をしましょうか」


「賛成。長時間歩いたから精神的に疲れた」


そうして近くに開けた場所があったので俺達はそこで一晩過ごすことにした。どうやらここは野営の場所としてよく使われているようで、石積みされた後があった。


「ふぅ。正直、私もこれほど長時間歩いたことはないわ。でもこの旅の人達にとっては、よくあることなのよね……あなたの世界ではどうなの?」


近くにあった石の上に座りながらリリーが聞いてきた。


「移動で数時間歩き続けるとかないな。自動車や電車っていう馬よりもずっと早い乗り物なんだが、普通はそれで移動するから、長距離を歩くなんて山登りか金欠ぐらいじゃないか?でも、こんな森だったら自転車の方が便利かもな」


馬よりもずっと早いというのは言い過ぎか?競走馬は時速70キロぐらいで、瞬間最高速度は時速90キロぐらいだったような記憶がある。車は高速でなければ100キロ出せないし、電車は新幹線以外なら7~90キロが普通だし……でも、平均速度からすれば嘘にはならないはず。


「そんな便利なものがあるのですね。ヨシアキ様、わたくし達はテントの準備をいたしますので、休憩する前に薪を探していただけませんか?」


「了解。俺は張り方知らないからよろしく頼む。テント以外に出しとく物あるか」


「今のところありません。では、よろしくお願いします」


言われた通り薪拾いに行く。森の中だから探すのに苦労はしないと思ったが、手頃な木が落ちていない。どうしたもんかと考え、倒れていた大木の一部を風魔法で薪サイズにした。練習ついでにもなったから我ながらいい案だ。そうしてリリー達のところへ戻るとテントがすでに張られてありテントの先には宝玉がついていた。


「なんだ、あれ?」


テントの飾り、と言われたら引くぞ。


「結界石です。発動させれば半径5mを結界で覆い、壊されない限り何度でも使えます。しかし、強度は量にもよりますが、矢や初級魔法なら10秒程度。中級なら2、3発、上級では1発で壊れる代物で、ちょっとした奇襲対策の物です」


ゲームにはなかった物か。いくらゲームが基盤になっているとはいえ、ゲームで語られていない物や出来事はたくさんあるだろうから、その辺の知識をつけないとダメだな。


「魔物相手ならそれくらいで充分だろ。旅には必須のアイテムだな」


「そうでもないわ。これは上物。大抵の物は結界なんていう立派な物じゃなくて魔物除けの程度なの。原理は知らないけど魔物に見つかりにくくするもので、おまじないに近いわ。研究者の間では上級魔法でも防げるものを作ろうとしているらしいけど、未だに成功例がないのよ」


んー、原理は光属性の結界魔法を展開させるのはわかるが、石が消費する魔力を維持できる仕組みが思いつかん――そういう魔石が存在するとかなら物だけど――それに魔力を込める方法とか絶対秘匿扱いで知られていないだろうし、作って売るとか無理だな。


「ヨシアキ様、夕食を作るので材料と道具を出していただけないでしょうか」


「あいよ。材料は何?というよりも何を作ろうとしているのか言ってくれ。それで大体、必要な物はわかるから」


この世界の料理といっても元の世界と変わらないからそれでわかる。


「そうですか。ではシチューを作るのでよろしくお願いします」


シチューか、デミグラスは調味料としてないし、材料も買ってないから普通にクリームシチューだろう。材料は――


「こんなもんか。出し忘れあるか?」


「いえ、材料も道具も全部あります。あ、隠し味のナツメグがないのでそれだけお願いします」


へー、隠し味としてナツメグを使うのか。というよりも、そんな調味料まで買ってたのね……ナツメグがどれかわからないので、とりあえず調味料らしきものを適当に取り出す。


「材料を的確に出してたけど、ヨシアキって料理できるの?」


のんびりしていたリリーが聞いてくる。


「昔から、たびたび料理していたし、1人暮らしをしていたから大抵の料理はできるぞ」


「そうだったわね……」


俺の昔のことを思い出したのか小さな声で言った。


「ヨシアキ様の料理は次回にご期待するとして、今回はわたくしが腕によりをかけてお作りしますのでしばらくお待ちください」


沈黙になりそうだった空気をエリーゼが換える。前にも同じようなことがあったが、これは狙ってやっているのか天然なの未だにかわからん。


~~☆~~☆~~


しばらく待って、料理が出来上がった。


「ウメー!!マジこれ何!?今までのシチューが別物に思えるくらいうまいんですけど」


やべ、ちょっと無駄にテンション上がってしまった。実力あり、知性あり、おまけに料理もできるとか完璧メイドじゃないか。


「いつもながらエリーゼの料理はおいしいわね」


リリーもそう言っているが、いつもながらとかこんなおいしい料理をたびたび味わっていたとかうらやましい。あ、でも、これから俺も毎日ではないが食べられるのか。ありがたや、ありがたや。


「お褒めいただきありがとうございます。しかし、これはヨシアキ様の袋があればこそできることなのです。旅でここまで材料をそろえることはできませんのでヨシアキ様がいらっしゃってホントに助かっております」


そうだよな。こういう世界で旅っていったら干し肉と焼いて食べたり、簡単なスープを作ったりするくらいしか想像できない。


「ありがと、ヨシアキ」


「これだけおいしい料理を食べさせてくれるなら、荷物持ちくらいどうってことない」


「では、冷めないうちにお召し上がりください」


~~☆~~☆~~


食事も終わり、食後の紅茶を飲んでいる。


「森といっても馬車が通れるようにしてあるから馬を使う方法もあるけど、私達だけじゃ世話ができないのが難点よね」


いくら馬が便利といっても世話ができなければ使えないんだよな。世話係として新たに人を連れていくのは無理だし、さすがのエリーゼも馬の管理方法までは知らないみたいだ。


「お前らは馬に乗れるからいいけど、俺は乗ったことないから無理だぞ。それに馬車の利点は荷物を運べるってのがあるが、それは俺のポーチがあるから無意味だしな」


他にも人を乗せられる利点もあるが3人だったらそれぞれが馬に乗った方が動きやすい。


「おふたりとも、これから重要なことをお話しますので聞いてください」


突然エリーゼが話題を変えてきた。俺とリリーは何かあった?とお互いの顔を見たがこれといって思い当たることがない。


「なんだ?」


とりあえず、聞く態勢を整えてエリーゼに聞いてみる。


「では、見張りの注意事項と火の番についてご説明します」

馬の速さについては、速さの比較wikiから引用させていただきました

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