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1章 番外編

番外編というよりも閑話です

番外編パート1


僕こと東正也は、この世界に来てから10日ほど経ちましたが、剣の練習、魔法や一般常識などの勉強を繰り返す日々でこれといって大きな変化がありません。

魔法は、まじめに勉強しているのだが、魔力はあるが不器用であると言われるほど苦手だ。生活魔法は大丈夫だけど、その他の魔法はほとんど不発になってしまう。教わった魔法理論は科学知識がある僕には起こり得ない、という考えが頭の中にできてしまったみたいで一部の魔法以外どうもうまくできない。

特に錬金。物理法則を無視している。土が金属になったり、水から油を作ったりして、めちゃくちゃだ。質量保存の法則も無視で元の大きさよりも大きくなったりして全く理解できない。

オージェさん(いは)く、それなら、魔力はレジスト用と魔法剣に使った方がいいといわれた。魔法剣は魔力で剣を覆うことで大きさや切れ味、属性付加といった効果が得られ、それなら剣に魔力を送るだけだからやりやすいといわれた。実際にやってみると見事にハマった。

だから、いっそのこと魔法の勉強は終了と思いたかったが、練習すればできるようになるかもしれない。それに相手が使ってくるので、知らなければ対処できないと言われて勉強中。


旅の仲間である3人とは、お茶会で話し合うのが日常となったので、どういう人達なのかなんとなくわかってきた。


リスティーは1つ年下の16歳。ちょっとわがままで強引なところもあるけど、そのおかげでレンやセシリーを呼び捨てにすることに慣れた。最初は、ふたりともに『さん』付けしていたけど、それではよそよそしいと言われ呼び捨てを強要された。当然、残りふたりにも自分を様付けすることはもちろん、敬語はできる限り使うなとも言われていた。


レンは僕と同い年で17歳。しゃべり方同様、おっとりした人だ。でも、怒らない人を怒らせると怖いといわれるように怒ると口調も変わってものすごく怖かった。この世界にもカエルがいたことに気がついて捕まえたら、何を捕まえたのとレンに聞かれ見せたら運悪くカエルがレンに飛びかかり、驚いて転んでしまった。それで笑ってまい、僕の悪ふざけととらえてしまい怒られてしまった…もうレンを怒らせないように誓うよ。


セシリーは吉晃さんと同い年で19歳。真面目で曲がったことが大嫌いな騎士を絵に書いたような人だ。堅苦しいと思われがちであるが、意外とかわいいものに目がないようで、この間のお茶会の時、城に迷い込んだ小猫を見つけるとすぐに抱きかかえて「持ち帰って育てます」と目を輝かせながらいっていた。


セシリーで思い出したが、鍛錬の先生が、騎士隊長のマルサスさんからセシリーに変わった。どうして変わったのか気になって聞いてみたら、旅をしている最中も鍛錬がしやすいように講師が変わらない方が伸びやすくなると言われ納得した。マルサスさんは最初に魔法理論を教えてくれて錬金とか見せてくれたいい人だったのに――


「マサヤ、休憩は終わりです。鍛錬を始めますよ」


「わかりました」


セシリーに呼ばれ訓練所へ向かう。僕はこんな日常を送っていますが吉晃さんは大丈夫でしょうか?両親のことはリスティーと話し合ったことで落ち着いたが、今は吉晃さんのことが心配です。必ず会えると信じて今日も特訓に励む。


~~☆~~☆~~


「王様、オージェでございます」


「オージェか、入れ。すまんが他の者は部屋の外で待機してくれ」


護衛をしていた兵士達を部屋の外で行かせる。


「王様、ご命令通りいろいろと調べてまいりました」


「ここには誰もおらん。いつも通りのしゃべり方でいいぞ、じぃ」


「では、ルー坊。お前さんに頼まれたもう一人の勇者ヨシアキの様子だが、リリシア王女とメイド一人を連れて北へ向かったそうだ」


我をそのように親しく呼ぶのはオージェくらいだ。


「そうか、無事リリシアと共に行動をしているのか。公表した内容通りに動いてくれているのなら問題ない。一芝居した甲斐があったというものだ」


「それにしても、ルー坊らしくないことをしたもんじゃな。ヨシアキがおれば魔王を倒すこともできたはずであろう」


オージェの言うとおり普通の者からみれば我は愚かな王だ。


「おそらく、あやつならできたであろう。しかし、我にはあやつを扱いきれん。普通の異世界人なら、マサヤのように生活手段を教えることで恩を売り、それを理由として魔王の討伐を頼む。しかし、ヨシアキは生活手段である戦闘や魔法などの技能を持ち、金も持っている。あやつの性格から地位や名誉などで動くはずがない。それに強過ぎる力はいらぬものまで引き寄せてしまう。だから、あやつを手放したのだ。まあ、あやつの実力を知る前は厄介者と思っていたのもあるがな」


金や地位、名誉で兵士たちは動くが、ヨシアキには何をあたえれば動かせるのか全くわからない。そのような人物を手元に留めておくことなどできない。王が情に訴えるなど底が知れる。


「たしかにあの男の報酬は難しいのう。じゃが、それだけではないじゃろ」


「――あの時、我がああ言ったとはいえ、まさかマルサスがあそこまでおおっぴらに行動をするとは思わなかった……それは我のミスだ。マルサスめ、逆恨みにも程がある」


この国では、認められれば誰しもが王になりえる。あの事件から、いくら王といえども次代の王を他の重鎮達の意見なしに決めることはできない。もし、勇者が現れなければ実力も地位もあるマルサスが次代の王になっていたかもしれない。しかし、勇者を召喚しなければならなくなり王女は1人の勇者にぞっこん。まずは正也を標的にすると思い見張りをさせていたが、マルサスは、マサヤよりもヨシアキを危険と判断し、排除しようと行動を起こしたようだ。


「王という立場は大変じゃのう。あの時にヨシアキに対して何らかのことをせねば、王は勇者になめられていると貴族連中からいわれるからのう」


王だけで国が成り立つわけではない。大勢の貴族が家臣として働くことで国は維持できる。しかし、王族派と複数の貴族派が存在し、全てを王族派に取り込むことはできない。我のように、この国の王は直系ではない。それを理由に貴族派の中でどこが次の王族派になるか争っている輩がいるのも悩ましい。


「それにバッカスがマルサスの配下に入ったと知っていれば、まだ余地があったのだ」


王族派だったバッカスがヨシアキを怒らせのは、マルサスの指示によって金を横領したと考えるのが妥当だ。


「ワシもバッカスの行動には驚いたぞ。マルサスの指示を聞くとは思わなんだ。何か弱みでも掴まれたんじゃろう。でなければ、本当に鞍替えされたか……」


「済んだことを言っても仕方ない。マサヤは絶対に手放すようなことになってはならん。マルサス達の動向に注意して尻尾を出せば今度ばかりは取り押さえる」


「騎士隊長といえど、さすがに勇者をふたりも失踪させれば貴族連中も文句は言うまい」


マルサスには功績があるゆえ、多少のことであれば恩情でもみ消される。完璧な証拠でなければマルサスを止めることができないとは――


「話は変わるが、アルトランドとロマリアが妙な動きをしているそうだな」


「おそらくヨシアキが城から出たことを知られたんじゃろうが、そのためにリリシア王女をヨシアキに付けさせておるんじゃろ」


いくら城から出たとはいえ、王女を連れて旅をしていればヨシアキはユルカ王国に所属していると他国には見えるだろう。


「そうだ。しかし、それだけではない」


「――あの子のためか」


やはり、オージェは見抜いていたか。


「国の使命により姉のクリスティーナは次代の巫女として箱入り娘として育てられたが、リリシアは幼いころから狭苦しい日々を過ごしていた。我は王といえど、どうすることもできなんだ。せめて婚約者だけはいい男をと、ナスカ王国の王子と婚姻を結ぶことができた。それでも王族として窮屈な日々を過ごさなければならないのが我としては心残りだった。しかし、ヨシアキが現れ、このような状況におかげであの子を自由にさせる機会ができた」


王という顔と父親という顔、2つを使い分けることは我にできなんだ。クリスティーナは、王と父、どちらを使っても巫女として大切にされていると言われるので変わらない。しかし、リリシアは父として接すれば、巫女をおろそかにしていると言われ国に不要な揺らぎをあたえてしまう。


「あの子が帰って来ないとは思わんのか」


「それはない。あの子の本質は人一倍やさしい子だ。姉は不甲斐ないし、次期王となるかもしれんマサヤは(まつりごと)ができるとは思っとらんだろう。そうなれば貴族連中のいい傀儡になるだけだ。その可能性があるから、あの子は絶対に帰って来る」


勇者を召喚しなければ、リリシアがそんな気苦労をする必要はなかった。しかし、そのおかげで一時とはいえ自由を手に入れることができたのは皮肉なものだ。


「たしかに、あの子はやさしい子じゃったな……しかし、それではナスカ王国に示しがつかんのではないか」


「その点は、リリシアとヨシアキがくっつけば向こうも何も文句は言えんだろう。あのふたりが、どのような関係になっているかわからんから婚約を解消できんがな」


「それもそうじゃな。さすがに勇者相手に文句を言えば世界中から非難されるじゃろう。森で起きた異変もヨシアキが解決したという情報も入っておる。他国でも異変があれば、あの子がヨシアキを引っ張ってでも解決してくれるように祈っておくかの」


そうして、ふたりして窓を眺める。

1章Q&Aは活動報告に移行させました。


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